ノーモア “No Dancing” Zeebra、弁護士が語る風営法改正へのそれぞれの戦い方【未来メディアカフェVol.8】(2/2)

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後編—–

かくして風営法改正…、でもこれで解決?

なぜ風営法を変えることができたのだろうか。それは、司法・行政・立法からのアプローチが効果的になされたからだと神庭記者は分析する。

「司法の側面から見れば、風俗営業法違反に問われた大阪のNOONという老舗クラブの元経営者、金光正年さんの裁判で無罪判決が出たことは大きなインパクトを持ちました。行政面から見ると、内閣府の規制改革会議で『風営法の規制を撤廃すれば、経済的な面でのメリットが大きい』と認められ、改革が進められた。さらに立法という点で見れば、ダンス文化推進議員連盟により、法改正に向けたアプローチが行われたのがポイントです」

 
活動を振り返って、神庭記者は「この改正運動は、多段式ロケットのようだった」とも語る。
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「まず初めに、Let’s DANCE署名運動がありました。これはなぜクラブで踊ってはいけないのか、それはおかしいじゃないか、と“Why”を問う活動です。そして次にあったのが“How”の運動。法律を変えるために、どのように地ならしをしていくか、その策が練られた。そういったフェーズを経て、業界団体が設立された。そして全てのフェーズにおいて、法曹関係者がエンジンとなって活動を推進していったのです」

しかし、今回の法改正でもまだ法律によりクラブの営業が制限される部分は残っており、これで改正運動は終わりではないという。

 
「社会を変えていく際に、いきなり100点満点の結果を得ることは難しい。厳しい言い方をすれば、現状はまだ50〜60点くらいの状態かもしれません。OSのバージョンが少しずつアップデートされるように、風営法2.0から風営法2.1へ、小刻みに変えていく姿勢が大事なのではないでしょうか」

法改正はゴールではなく、よりよい未来を作っていくためのスタート地点なのだ。

風営法改正によって、日本の夜はこう変わる!

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地道な活動が評価され、Zeebra氏は渋谷区観光協会が新設した渋谷区観光大使ナイトアンバサダーに就任した。そして、都市のナイトカルチャーの規制・ルールについて市長にアドバイスを行うナイトメイヤー(夜の市長)らの会合、「ナイトメイヤー・サミット2016」に参加した際、他の参加者の発表に心を動かされたそうだ。

「参加者の中には、都市開発という視点から、夜の街をどうやってアートに染めるかという話をしている人もいましたし、ある区画をエンターテインメントのエリアにして、その周辺にアーティストの人たちを安く住まわせてしまったらどうかという話をしている人もいました。参加者みんなが、クラブという文化が、都市計画のための重要な要素だと捉えていたんです」

 
同じくナイトメイヤー・サミットに参加していた斎藤弁護士も、こう言葉を続ける。

「海外だと、クラブを街の重要なコンテンツだと位置づけています。美術館やギャラリーのように観光的な価値のある資源と考えているんです。私たちも、目的は法改正ではなく『その後にどう魅力的な街づくりをしていくか』というところを見据えて行動してきましたし、それを実現するための準備をしています。クラブ関係者との連携を進めるのはもちろんですが、それ以外にも、ダンス教室やレストラン、ホテルなどの商業施設も巻きこんで、子供からお年寄りまでがダンスに触れることのできる文化づくりをしていきたいんです」

 
若き頃、自身もクラブで遊び、クラブとともに育ってきたZeebra氏は、感慨深そうにこうまとめた。

「クラブが合法化されれば、何かあったときにすぐ通報できるので、警察に守ってもらえるようになる。これからは、学校でダンスパーティーなども開催できたらいいなと思っています。欧米では、学校の体育館などでフルーツポンチを飲みながら音楽に合わせて踊るということが日常的です。そういったことからクラブカルチャーが一般的になっていったらいいですね」

みんなが思う風営法の「なぜ?」

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風営法改正、そしてクラブカルチャーの一般化というトピックスを、来場者はどのように捉えたのだろうか。イベントでは参加者と登壇者たちとのトークセッションの時間が設けられた。そこで発せられた、参加者の疑問とは。

 
・深夜の交通手段を整備する必要性

参加者「ベルリンとかロンドンのようにナイトカルチャーが盛んな地域では、深夜の交通がすごく便利です。気楽に遊ぶためには、交通手段を整備していく必要があると思いますが、どのような展望を持っていますか」

Zeebra「私は渋谷区観光大使ナイトアンバサダーを務めています。例えば今後、渋谷区というコミュニティー全体がファッションやエンターテインメントを前面に押し出せるようになっていけば、『渋谷を通る電車だけは、週末は深夜まで運行する』ということも実現できるようになるかもしれません」

斎藤弁護士「市場を拡大していくためには、交通アクセスの整備は絶対に必要だと思っています。実は最近、ダンス文化推進議員連盟の人たちとミーティングしましたが、『深夜運航の電車を実現していきたい』という話をしていました。深夜3時くらいまでであれば、動かすことは現実的に可能かもしれません」

Zeebra「今は、クラブが一番盛り上がる時間帯は深夜の、ものすごく遅い時間帯になっていますが、交通に合わせてもっと早めの時間帯にピークを持ってきてもいいのでは。これまでの慣習にとらわれずに、昼から夜へと地続きに盛り上がっていったほうが、より楽しめる可能性もあるんかもしれません」

 
・クラブカルチャー未経験者へのアプローチ

参加者「クラブカルチャーのファンを増やしていくには、今までクラブカルチャーを体験していない人に対するアプローチが重要だと感じます。そうした人たちに対して、どのような働きかけをしていくのでしょうか」

Zeebra「直近では、8月10日に渋谷のクラブ事業者が集まって、全ての店をクラブ・サーキットでどこでも見て回れるイベントを計画しています。さらに次の日には、クラブとクラブカルチャーを守る会の面々で、『PLAYCOOLアカデミー』という、クラブの歴史やラップを教えるようなレッスンもやるつもりです。今までクラブに行ったことのない人でも、『とりあえず体験してみたら面白いかも』と感じてもらえるようなイベントを開催していけたらと思っています」

 
さらに、イベント終了後、取材班独自に何人かの参加者にお話を聞いてみた。参加者はどんなことを考え、本イベントへ臨んだのだろうか

 
松川渉平さん(21歳)は、自身もダンスをやっていたという大学生だ。風営法が変わることによって、ダンスという文化がどのように変わるのか興味があり、イベントに参加したという。
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「クラブにはたまに行くけれど、そもそも『踊ってはいけない場所』だという雰囲気は感じません。確かに、クラブに対してあまり良くないイメージを持っている人たちがいるのも分かるけれど、クラブの中で法を犯す行動をしている人たちを実際に目にしたことはありません。風営法が改正されない理由は特にないんじゃないでしょうか」

 
細田幸子さん(30歳)は、企業の中で街づくりを推進する仕事をしている。この法改正が、街を盛り上げる1つのきっかけになるのではと思い、参加したのだという。
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「勤務している会社では、地元の商店街で音楽のイベントを主催することがあります。現在は、日中帯に親子向けのものを開催することが多いのですが、これからはもっと夜に特化したものも開催できるのではないかと期待しています」

 
ダンスや音楽への愛情。話を聞いた限りでは、こうした”感情”こそがイベント参加へのモチベーションである場合が多い。カルチャーへの傾倒、そして傾倒する存在を取り囲む旧風営法という不条理への関心。あくまで参加者の原動力となっているのは、もっと自分が愛するカルチャーを楽しみたい、という思いだ。

そしてダンスが始まる

こうして風営法は改正され、ナイトカルチャーは安全性が付与されるようになった。一方、グレーだったものが明文化されることで、法の基準を満たせずクラブとして認定されない“不遇の黒”も出てくるだろう。今年新生したナイトカルチャーは、神庭記者の言葉通り、制度のアップデートを経ることでよりリアルにフィットしたものになっていく。

 
そう。まだまだダンスは始まったばかりなのだ

  • speakerZeebra

    ヒップホップ・アクティビスト

    東京を代表するヒップホップ・アクティビスト、Zeebra(ジブラ)。97年にソロデビュー。その音楽性の高さから、安室奈美恵、Dreams Come True、EXILE、小室哲哉への客演を始め、TOKUや日野”JINO”賢二など JAZZミュージシャンとの共演もこなす。さらにTOKUとは「ホテルオークラ東京」や「椿山荘」でのディナーショーや、フランク・シナトラ生誕100周年トリビュート・アルバムでは、名曲「MAY WAY」にZeebraがラップで客演するなどし話題も呼んだ。そして、現在、Zeebraが仕掛ける番組『フリーススタイル ダンジョン」(テレビ朝日)が、若い世代を中心に新たなムーブメントを起こしている。

  • speaker斎藤 貴弘

    弁護士

    2006年に弁護士登録。勤務弁護士を経て、2012年に斉藤法律事務所を設立。(http://saitolaw.com)。近年は、ダンスやナイトエンターテインメントを広範に規制する風営法改正をリードするとともに、ナイトカルチャーやナイトエコノミーが持つポテンシャルを魅力ある都市づくりに生かすべく、新しい業界作りをサポートしている。規制緩和やルールメイキングに向けた取り組みは風営法以外にもおよび、東京都の創造的発展を目指す民間有識者からなる「NeXTOKYO」プロジェクトのメンバーでもある。またオランダ・デンハーグの先端アートフェス「TodaysArt」、L.Aのインターネットラジオ「dublab」、それぞれの日本ブランチメンバーとして創造的な文化を生み出すプラットフォーム作りにもコミットしている。

  • coordinator神庭 亮介

    朝日新聞デジタル編集部記者・編集者

    1983年、埼玉県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、2005年に朝日新聞社入社。福島総局や大分総局などでの勤務を経て、2011年から文化くらし報道部の記者として音楽や放送、演劇を担当。風俗営業法によるダンス営業規制問題についての取材を重ね、著書『ルポ風営法改正~踊れる国のつくり方~』(河出書房新社)にまとめた。2015年春より現職。若者向けニュースサイト「withnews」でも、サブカルチャーやアートなどの記事を執筆。

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