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【高校生が取材】地域とともに持続可能な成長を 横浜ベイシェラトン

更新日 2023.03.28
目標12:つくる責任 つかう責任
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
横浜ベイシェラトン

横浜駅前にある大型ホテル、横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(横浜市西区)。ホテルのレストランで出た食べ残しを堆肥(たいひ)化し、その肥料で生産した野菜を料理に使う仕組みで食品ロスを減らしたり、客室にプラスチック配合率の低いアメニティーを置いたりするなど、様々なSDGsの取り組みを行っています。
YOKOHAMA未来デザイン部員の横浜市立桜丘高校の栗原美憂さん(3年)と同横浜サイエンスフロンティア高校の中島はるかさん(1年)がレストランの裏側や客室を訪れ、現状と課題を取材しました。

興味を持ったきっかけ

企業と地域のつながりや町おこしに興味を持っている。そのため、身近にあり、地域と積極的に関わる横浜ベイシェラトンは、取材対象としてぴったりだと思った。また、横浜ベイシェラトンは横浜を象徴するホテルのため、純粋に普段どのような仕事をしているのか気になった。(中島はるか)

企業の取材をするにあたり、横浜市の「Y-SDGs」のホームページを見た。第2回認証事業者の横浜ベイシェラトンの取り組み紹介シートに「食」に関わる取り組みが記載されていたため、食とホテルの結びつきが意外であると感じ、ぜひ詳しく話を聞きしたいと思った。(栗原美憂)

同ホテル常務取締役の比留間英二さんによると、以前から社員一人一人のSDGsに対する意識が高く、多岐にわたって取り組んでいました。しかし、新型コロナウイルスがきっかけで、改めてSDGsを意識するようになったといいいます。

インタビュー
横浜ベイシェラトンの比留間常務取締役(左)に話を聞く栗原さん(中央)と中島さん(右)=ヨコハマSDGsデザインセンター提供

新型コロナウイルスによるホテルへの打撃は大きかった。もともと利用者の約60%が外国人客で、大盛況が期待された2020年の東京五輪・パラリンピックの延期もあって利用客が激減し、一度休業をするなどの対策をとった。このことが改めてホテルの経営や方針、SDGsの活動についてゆっくりと見直す機会になったという。
その結果、再び利用客を増やしてホテルを盛り上げるため、「地元」への思いを前面に出した取り組みを実施した。新型コロナウイルス流行前は、インバウンド需要に力を入れ、主なターゲット層は外国人旅行客だった。しかし、「横浜が鎌倉や東京、みなとみらいなどの様々な観光地の拠点になれるように」という願いのもと、営業再開後は国内のレジャー客に焦点を当てた施策を講じるようになったという。
それはなぜか?
SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会の実現と、同ホテルの経営理念「Best Smiles for You=最高の笑顔をあなたに」を軸に、「全ての人を笑顔にする」ことが、このホテルの目指す姿だからだという。
「10年後も人の役に立ち、愛してもらえるホテルにしたい。世界の人々が集う場所として、横浜駅を盛り上げ、横浜を拠点にハッピーにしたい」という熱い思いを比留間さんは語った。(文責:栗原)

では、具体的なSDGsの取り組みをご紹介します。

同ホテルは、2018年から食品ロス削減のために「ヤサイクル」という仕組みを導入しています。ヤサイクルは、神奈川県横須賀市の「ヤサイクル」が運営する、食品廃棄物を堆肥化し、その肥料で生産した野菜を料理に使う自立循環型食品のシステム。同ホテルではヤサイクル導入後、生ごみのリサイクル率は約75%まで向上。県内のヤサイクル契約農家から仕入れた野菜をレストランで使用することで、地産地消にも貢献しているといいます。

野菜の食べ残しを堆肥化する機会
野菜の食べ残しなどを堆肥化する機会「マジックバイオくん」=中島はるか撮影

野菜の食べ残しなどを堆肥化する機械は「マジックバイオくん」という名称で呼ばれ、市内には横浜ベイシェラトンにしか設置されていないという。マジックバイオくんには1日で約50キロの野菜のゴミが投入され、高温でかくはんし堆肥の一次発酵を行っている。
今回、マジックバイオくんが実際に野菜をかくはんしているところを見せてもらうことができた。堆肥化すると聞くと、食べ物が腐ったような不快なにおいを想像するかもしれない。しかし、マジックバイオくんの中身は決して臭くなく、香ばしいような独特なにおいがするだけだ。甲殻類や魚の骨などは「マジックバイオくん」に投入できないため、入れる食品廃棄物は調理場で分別している。
ヤサイクルでは地域の農家とコミュニケーションをとることで、地域全体の活性化を促したり、生産者の顔が見える安心安全の食材を料理に使用したりできるメリットがある。(文責:中島)

マジックバイオ
マジックバイオくんに分別した食べ残りの野菜を入れ、堆肥かのために高温でかくはんさせる=中島はるか撮影

ホテルでおなじみのビュッフェ形式の食事にも、同ホテルでは、食品ロス削減のため「オーダービュッフェ」を取り入れています。

一般のバイキング形式の食事では、食べたい料理が目の前にあるため軽い気持ちでつい大量に盛ってしまいがちだ。しかし、横浜ベイシェラトンのオーダーブッフェシステムは、客が自身のスマートフォンを使用して食べたい料理を食べたい分だけ注文して食べる仕組みになっている。
通常のブッフェと大きく違う点は、オーダーブッフェで運ばれてくる料理が一皿に二口程度しか盛り付けられていないことだ。そのため、一度にたくさん盛り付けるバイキングよりも計画的に食事ができる。オーダーブッフェによる残飯はほとんどないという。オーダーブッフェは一定の金額でどの料理も好きなだけ注文できるため、和食や洋食、魚料理か肉料理か、というように縛られることなく様々な料理を同じ食事で楽しめる。また、気に入った料理は何度も注文してたくさん食べることができる。また、客が自分の席を離れず料理を食べられるため、子どもから目を離せない家族連れや移動が難しいはお年寄りまで様々な客層から好評のようだ。(文責:中島)

オーダービュッフェ
オーダービュッフェの小さい一皿の例=中島はるか撮影

使い捨てプラスチック製品の削減を企業などに求める「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月1日に施行されたことを受け、同ホテルでは、客室に備え付けているアメニティーをプラスチック配合量が少ないヘアブラシやカミソリ、歯ブラシに替えました。

アメニティー
客室に備え付けているヘアブラシ、カミソリ、歯ブラシ=中島はるか撮影

新しいアメニティーは、非食用米や非食用のとうもろこしなどが配合されているが、特に壊れやすいということもなくプラスチック製のものと同じように使用できる。また、シャワー室にあるシャンプー、コンディショナー、ボディーソープもボトルからディスペンサーに変更されはじめ、さらにプラスチックごみを削減する工夫がなされている。一方で、ディスペンサーを導入したことで従来のボトル式に比べ、衛生管理が困難になり人件費がかさんでいるという。グレードの高い客室では今も30ミリリットルの小さいボトルで提供されていて、少しでも開封されていたり、客が使用したりしていたものは全て廃棄している。(文責:中島)

ディスペンサー
客室に設置されているディスペンサーとグレードの高い部屋に備え付けられている容器入りのボディーソープ=中島はるか撮影

取材後記

取材を通して、横浜ベイシェラトンが食事や客室で行うSDGsの取り組みや、地域との関わりなど、多くのことを知ることができ、興味深かった。
取材前は、ここまで深く取材する予定ではなかったが、比留間さんが色々な話を聞かせてくださり、とても興味深く、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと思い、一つの記事にした。「横浜をもっと盛り上げて、ハッピーにしたい」という比留間さんの横浜への思いを聞き、その思いの強さに感動した。(栗原)

横浜ベイシェラトンでは、目先の利益ばかりを追うのではなく、今は少しコストがかかったり、手間が増えて面倒になったりしていることでも、いつか何らかの形でプラスに返ってくると考え、取り組みを確実に実行していることが分かった。
企業も個人も、SDGs達成に向けた取り組みをすべきだと頭では分かっていても、なかなか行動に移せないことが多い。しかし、「神奈川県や横浜市という地域と共に、これからも持続的に成長していきたい」という強い思いで、従業員が主体となって、取り組みを続けていることは大変素晴らしいと思った。
また、ホテルを利用しているだけでは気づかないところにも、SDGsに関わる配慮が隠れており、エコやリサイクルとサービスを極限まで両立させようとする姿勢に、企業としてのプロ意識が感じられた。
企業に取材することはもちろん、これほど充実した話を聞く機会が今までになく、SDGsへの取り組みだけでなく、一つの企業としても、取材前より興味がわいた。プライベートで伺う際は、取材したことを思い出しながら食事やホテルステイを楽しんでみたい。(中島)

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