住まいとSDGsの関係性を探る【住まいから変えるSDGs①】

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人にも、社会にも、地球にも優しい家づくりを進め、持続可能なまちづくりに取り組んでいる吉田登志幸さんのコラムがスタートします。自らも実践的に薪(まき)ストーブ1台で全室暖房できる住まいで暮らす吉田さん。日々の暮らしをほんの少し見直せば、豊かで健康的な未来が広がる――。誰にでも役立つヒントを紹介します。

健康第一、その前に大切なことは?

なぜ、「住まい」と「SDGs」が関係するのか? 不思議に思うかも知れませんが、メチャメチャ関係があるんです!
SDGsの究極の目標は「誰一人取り残さない」です。わたしもこの目標には心底共感し、「世界憲法」と位置づけて色んな場面で発信をしています。これを実現するために、さらに大事なことは、まず「自分自身が取り残されない=幸福」でなければならないと思っています。
自分が幸福でないのに、他人に影響力を与えようとすると、どこかで無理がたたり、結局持続可能でなくなってしまいます。語弊があるかも知れませんが、「おこがましい」とすら思います。まず自分がしっかりと立ち、ようやく家族や大切な人たちへ広め、さらにまわりの人々へと輪が大きくなっていくのではないでしょうか。これはもちろん自己中心というわけではなく、「自分や家族が不幸=犠牲」の状態で、他人に施すのは正しいSDGsの取り組みとは言えないということです。
では、自分の幸せってなんだっけなんだっけ♪ということですが、幸福の定義は人それぞれ、国それぞれ。簡単に決めることは出来ないはず。でも、多くの人々にとっては、恐らく“健康”であり続けることでしょう。健康でなければ仕事や趣味など様々な活動をするのに制約が出ます。具合が悪くなったり、病気になったら薬を飲んだり、病院に行ったりしますが、その前に病気になりにくい住まいがあるってことを知っている人が意外にも少ないんです。国民性なのかもしれませんが、病気にならないように事前に対策することが大事だと考える人が少ないような気がします。

SDGs目標達成に高断熱高気密な住まい

“冷えは万病の元”と言います。これがまさに病気を予防する大前提。体を冷やすと病気になりやすい。だからと言って暖房をガンガンたいて、CO2を出しまくっていたら本末転倒! そこで重要なのが住まいのスペックなのです。家をしっかり断熱し、高い気密性を保てば、小さいエネルギーでも体は冷えず、寒い家より病気の予防が確実にできるんです。
これもまた国民性かもしれませんが、高性能なエアコンで全館空調すればいいじゃないか!?という考えになりがちです。もちろん、わずかなエネルギーで高効率な機器を使うにこしたことはありませんが、そもそもどんなに高性能でもエネルギーは必ず必要になります。
思い出してみて下さい。東日本大震災の発生後は計画停電で電気が止まって暖房がつけられませんでした。2019年の台風15号の際の大停電では暑くても冷房が使えませんでした。高性能な断熱材や窓を採用すれば、エネルギーは不要です。電気がなくても着るもので調整でき、冷房がなくても熱中症のリスクは極めて少なくなります。
太陽光パネル(PV)があるにこしたことはありませんが、1kw発電するのも1kw省エネするのも同じ1kwです。しかし、この1kwの重みは全く違います。太陽は一日中、一年中出てくれません。いつも発電できるとは限らないのです。これに対し、断熱材や高性能窓は必ず省エネしてくれます。この差はデカイですよね。
これは優先順位の話で、高性能機器や太陽光パネル(特に新築)も必要不可欠です。つまり、住まいとSDGsの関係性は、「SDGs」→「誰一人取り残さない」→「自分の幸福が基本」→「幸福」=「健康」→「高断熱高気密な住まい」と、つながるということがおわかりいただけたでしょうか。
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いくつもの目標に結びつく健康的な家

そしてこれがすでに17目標の③「すべての人に健康と福祉を」を目指しているのです。このスタートから実は④、⑦、⑧、⑨、⑪、⑫、⑬、⑭、⑮というさまざまな目標へもアプローチが可能になるのです。
そんなうまい話が……あるんです!
目標④の「質の高い教育をみんなに」に関しては、住まいが整っていると学習環境にも当然影響します。例えば、日本建築学会に報告された分析によると、夏場の室内での作業効率を比較した場合、室温25℃では83.2%、27.5℃では79.2%です。
(出典|オフィスの温熱環境が作業効率及び電力消費量に与える総合的な影響
たかが数%と思われますが、これはほんの一例で、更に分かりやすい例では換気量があります。少ない部屋と多い部屋とを比較した場合に換気量が多いほど学習効率が高くなっているのです。
(出典|現地実測による温熱・空気環境の質が学習効率に及ぼす影響の検討
つまり、窓を開けたり、換気扇をガンガン回したりすればいいじゃないか?と想像しがちですが、窓を開けっ放しに出来ない冬に換気扇を回し過ぎれば暖めた熱を外に捨ててしまうことになります。結局、暖房エネルギーが必要になり、エネルギーの無駄遣い、CO2排出増大につながります。
だからこそ「高断熱高気密」。家中の隙間を可能な限り少なくしているので余計な漏気や排気が無く、計画的な換気を行え、必要最小限の排気で換気をするように計算ができるので、質の高い学習環境が整えやすいのです。
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ちなみに、我が家の場合も子ども達は冬でも寒くないため、朝早く起きて勉強をしていました。ご存知の通り、朝は脳の効率が良く、勉強や仕事の生産性が高くなります。寒い家では、まずふとんから出られません。ギリギリまで行動しないので朝の家族団らんはまるっきり出来ず、みんな大慌てで家から飛び出すことになりかねません。そんな点も良くないと思います。
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まだまだ続きます。目標⑦の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は、何となく想像が付きやすいと思います。国も推奨しているネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)では、外皮(住宅の外気に直接触れる部分)の断熱性能を大幅に向上させ、高効率な設備システムを導入し、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現しています。再生可能エネルギーを導入し、年間の1次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅がまさにそれです。
(出典|経済産業省資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」)
くどいようですが、もちろん、大前提は外側の断熱性能を大幅に向上させることです。そして、再生可能エネルギーはズバリ太陽光パネル(PV)。他のエネルギーも対象ですが、建築物(特に住宅)にとって、より現実的、効果的な装置はPVなのです。なぜ、ZEHで、特に新築でPVが必要なのかといえば、クリーンなエネルギーであるのはもちろんのこと、“発電距離ゼロ”が可能だということに他なりません。大規模な発電施設で多くの化石燃料を投入し、遠くへ電気を運ぶのではなく、まさに屋根で発電し、そこで消費するわけですから、化石燃料も使わないし送電ロスもない。こんな理想的な発電方法はどこにも見当たりません。家を建てるのにPVを乗っけないというのは、SDGsを真剣に考えている人とは到底思えません。
新築にZEHが必須ということには、もっと根本的な重要性があります。それは空き家問題です。
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総務省によると、日本は空き家大国で2018年の調査で総住宅数の13.6%、数にして846万戸もの空き家があり、仮に1年間に新築が100万戸つくられるとした場合、この空き家を活用すれば向こう8年間は新築は不要なのです。もちろん、住めないような状態の家もありますが、空き家がたーくさんあるのに新築がジャンジャンつくられているのが現状です。さらに憂慮すべきことは、新築には欧州並みの厳しい断熱基準がなく、多くの住宅でエネルギーをジャブジャブ垂れ流してしまっているのです。
家が余っているのに“わざわざ”新築をつくるのならば、外皮の性能を徹底的に高めてPVのZEHにすることが必要というか、新築(戸建て)はZEH以外不可!!くらいに法規制しないといけないと思っているくらいです。既存の住宅にPVを乗っけることは否定しませんが、屋根の耐久性などの問題もあるため、優先順位は断熱の強化が絶対先です。それをせずにPVを設置するのは、SDGsについて真剣に考えていないと言わざるを得ません。
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つまり、SDGsをしっかり考えて、もし“わざわざ”新築をするなら、ZEHが当たり前。それが家族の健康、さらにSDGsのほかの目標にも大いに貢献するのだから、やはり「ZEHを建てない理由はないやろ~」となるはずです。
■次回は目標⑧以降についての解説をします。
◎文/吉田 登志幸(よしだ としゆき)
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有限会社オストコーポレーション北関東代表取締役
1970年、大阪生まれ。2001年の会社設立時から環境問題に取り組んでいたが、東日本大震災と福島第一原発事故が大きなきっかけとなり、日本のエネルギー問題解決に少しでも寄与しようと決意。省エネ・創エネに携わる団体などを通じて啓発活動や具体的実践を行っている。SDGsにも大いに共感し、講演ではSDGsの解説と人々が取るべき具体的な行動指針を広く伝えている。
NPO法人「ソーラーシティー・ジャパン」代表理事、一般社団法人「日本エネルギーパス協会」理事、同「Forward to 1985 energy life」理事、自立循環型住宅研究会関東支部代表世話人。
◎イラスト/川島 雅恵(かわしま まさえ)
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Atelier(アトリエ)「BON BON」デザイナー
武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、現在はイラストや写真、編集を中心にデザイン業務に携わっている。

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