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健康と働きがい実現 理想的な家づくり【住まいから変えるSDGs②】

更新日 2022.02.02
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標8:働きがいも 経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標11:住み続けられるまちづくりを

持続可能なまちづくりに取り組んでいる吉田登志幸さんのコラム。第2弾は、国連が掲げるSDGsの17目標のうち、「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」に注目しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務(テレワーク)が広がる中、人も社会も、そして地球も健康になるような家づくりをすれば、働きがいが生まれ、経済成長や街づくりにまで結びつくのだとか。では、どんな家が理想なのでしょうか?

省エネ、快適環境で心身ともに健康

太陽光など再生可能なエネルギーを導入しながら、室内環境の質を維持できる省エネルギーを実現させた住宅については前回紹介しました。目標⑧「働きがいも経済成長も」の実現には、まさにこの住宅性能があります。心身ともに健康であれば、何事も前向きな状態が起きやすく、それがすなわち働きがいに直結するんだと思います。

元気な経営者や社員が前向きになって働いていけば、経済成長も実現します。もちろん、成長のために無理を強いるようなケースもあるかも知れません。それでも、健全な我が家に住むことで、回復することも多々あると思います。

わたしは仕事が楽しくてしょうがないので、世間的に言われるストレスが本当にありません。しかし、年齢とともに体力の消耗を感じるようになり、特に出張が続いたりすると「早く家に帰りたいな〜」と思います。なぜ、家が恋しくなるのか? 我が家は高断熱高気密性能になっており、薪(まき)ストーブ1台ですべての部屋を暖房することができます。

またこれも前回述べましたが、気密をしっかり高め、計画的に換気ができていれば、部屋の空気質も当然良い状態を保ちます。さらに、これは性能から少し外れますが、無垢(むく)の床材や珪藻土(けいそうど)の壁で仕上げているため、化学物質が極力揮発されず、空気質とともに見た目にも非常に優しいのです。ただ座っているだけで癒され、しっかり心身を回復させることができます。次へのスタートも非常にスムーズになり、本当に家の力はすごいなあ〜と思うばかりです。

ストレスの話で言えば、感染拡大が問題となっている新型コロナウイルスの予防には個人の免疫力が非常に重要となっています。免疫細胞の約70%は腸でつくられているといわれ、快適な生活が送れないと腸のダメージにつながってしまいます。今の時代、ストレスフリーは無理かもしれません。しかし、それを癒してくれる家と、そうではない家って、とても大きな差があると思いませんか?

あ、ちなみに拙ブログで免疫力についての考察があるので、ぜひ参考にしてください。

技術革新で住宅も進化

再生可能エネルギーを導入し、年間の1次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅「ZEH(ゼッチ)=Net Zero Energy House ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略=」(出典|経済産業省経済エネルギー庁)は、とにかく無駄なエネルギーを垂れ流さず、自然エネルギーで最短発電できるように未来に向かって進歩していっています。日夜、様々な技術レベルの向上を行い、企業や技術者による不断の努力は、まさに目標⑨「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。

太陽光パネル以外に、さらに環境負荷の少ない理想的な技術革新が生まれれば、それはそれで産業としても人類としても非常にありがたいことです。そして、せっかくのエネルギーを無駄にしないために、その大前提としてしっかりした高断熱高気密の箱が必要不可欠なのだと思います。

マイホーム選びで人生が変わる

心身ともに健康でいられるような我が家が実現できれば、愛着が生まれ、引っ越しするなんていう発想は起きません。マイホームが重要になれば、どうなるか? 

もうおわかりでしょう。目標⑪「住み続けられるまちづくりを」への近道となります。理想的な我が家があれば、積極的にその場所に住み続けたいと思うはずです。

その思いが強ければ強いほど、地域のコミュニティーへの関心度や愛着度も増すので、地域の活動へ積極的に参加したり、何か問題点があれば、より良いコミュニティーのために自身も何かしようとしたりするモチベーションになりやすいです。

ゆえに土地選びも同様に重要です! 街中によくあるような、ギューギューに詰まった分譲地は、土地代にお金が先にとられて、住宅そのものにお金がまわりません。大事な大事な断熱材のほか、玄関や窓などの開口部に性能の悪い製品を採用するため、結局、寒い家ができあがってしまいます。室内が寒ければ、病気になりやすく、心身ともに健康にはなりにくいです。

ストレスが解消されなければ、我が家に何も期待をしなくなり、愛着も湧きません。その結果、地域のコミュニティーへの関心も薄くなってしまいます。何だったらこの家から早く逃れたいとまで思ってしまうほど、我が家に失望してしまうこともあります。

便利で、安い――。ただ、それだけの理由で安易にマイホームを手にしてしまうのはいかがなものでしょうか。

毎日毎日、ギューギューの通勤電車に乗り続けたとしても、会社勤めはいつか終わる時が来るでしょう。しかし、マイホームは基本的に一生、住み続けるのです。そういうこともよく考えて決めなくてはなりません。

焦る必要はありません! なんせこの国には846万戸もの空家があるのですから、何度も言うように無理に新築する必要はないのです。

安易な土地選びで実はこの先の人生で様々な損をしていることがあるんだけどなあ……と、思ってしまいます。


■次回は目標⑫以降についての解説をします。


◎文/吉田 登志幸(よしだ としゆき)

有限会社オストコーポレーション北関東代表取締役
1970年、大阪生まれ。2001年の会社設立時から環境問題に取り組んでいたが、東日本大震災と福島第一原発事故が大きなきっかけとなり、日本のエネルギー問題解決に少しでも寄与しようと決意。省エネ・創エネに携わる団体などを通じて啓発活動や具体的実践を行っている。SDGsにも大いに共感し、講演ではSDGsの解説と人々が取るべき具体的な行動指針を広く伝えている。
NPO法人「ソーラーシティー・ジャパン」代表理事、一般社団法人「日本エネルギーパス協会」理事、同「Forward to 1985 energy life」理事、自立循環型住宅研究会関東支部代表世話人。

◎イラスト/川島 雅恵(かわしま まさえ)

Atelier(アトリエ)「BON BON」デザイナー
武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、現在はイラストや写真、編集を中心にデザイン業務に携わっている。

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