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登山家、モデル、知事とみんなで盛り上げる!国民の祝日「山の日」制定記念、「信州山岳サミット」【未来メディアカフェVol.9関連イベント】(1/2)

更新日 2022.02.03
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標15:陸の豊かさも守ろう

7月3日、長野県松本市のキッセイ文化ホールで「信州山岳サミット」(長野県主催)が開催された。今年から8月11日が国民の祝日「山の日」に制定されたことを記念して開かれたもので、朝日新聞のメディアカフェvol.9「『山の日』を語ろう」の関連イベントとして同じ日の午後に開かれた。会場には地元の高校・大学の山岳部の学生をはじめ、多くの県民が集まった。
 
登山家・野口健さんの講演や、山の専門家や山を愛するモデルに阿部守一長野県知事などを交えたパネルディスカッションを通し、信州の山々の魅力や登山を安全に楽しむ方法などについて話し合ったほか、午前の未来メディアカフェで学生たちが考えた山に関する課題解決アイデアも提言として発表された。
 
サミットはまず阿部守一長野県知事の挨拶からスタート。
「長野県といえば、なんといっても『山』だと思います。信州人の心にしっかりと宿っている山々の魅力をどのように発信し、地域活性化につなげていくのか。今日は皆さん一緒に考えましょう」と呼びかけた。
続く第一部は「世界の山が僕に教えてくれたこと」をテーマにした登山家・野口健さんの基調講演。山との出会いや、登山の魅力、ライフワークとなっている山の清掃活動についてユーモアを交えながら語った。
 

野口健「山で九死に一生を得て、私の人生は変わった」

25歳で七大陸最高峰世界最年少登頂記録を達成した野口健さん。19歳で単独マッキンリー(アメリカ、アラスカ州に所在する標高6194mの山)への登頂を試みた際には、クレパスへ落ちかけて九死に一生を得たこともあるという。
「あの時は、もしここで死んでも誰にも気づかれることのないちっぽけな自分を痛感した。同時にそれまで抱えていたコンプレックスや悩みが体からスーッと抜け落ち、世界が広がった気がして楽になった。あの頃、山に出会っていなければ、今の私はないと思う」
 
次に語ったのは、エベレストや富士山での清掃活動を始めたきっかけ。海外の登山家から日本の登山隊の残したゴミの多さを指摘されたことだったという。
「これではいけないという思いから、清掃活動を始めました。一番難しかったのは、活動の輪を広げることでした」
 
野口さんが利用したのは、テレビのバラエティ番組をはじめとするメディアの力。
「芸能人やスポーツ選手がゴミ拾いをしている番組の影響で、最初は年間100人前後だった参加者が4年目には600人を超え、今では年間7000人もの人々が協力してくれるようになった。環境問題は自然が相手だと思っていたが、実は人間社会を相手にした活動だと気づかされましたね」と語った。
 

モデル、教授、経営者……様々な世代が謳う、信州の山の魅力

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休憩を挟み、「信州の山を安全に楽しむために〜世界水準の山岳高原観光地へ〜」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。パネラーとして登山家の野口健さんに加え、信州の山々を熟知する株式会社涸沢ヒュッテ代表取締役・山口孝さん、登山歴6年のモデル・仲川希良さん、そして阿部守一長野県知事が登壇。コーディネーターの信州大学理学部教授・鈴木啓助さんの進行でスタートした。
 
鈴木教授:まずは四方を山々に囲まれた信州の山は、皆さんにはどのように映っていますか?
 
野口健:信州には男性的な北アルプスもあれば女性的な南アルプスもあり、気軽に登れる裏山や里山も多い。いろんなタイプの山がそろっているのが魅力だと思います。
 
仲川希良:一番の魅力は、初心者から上級者まで幅広い人を受け入れてくれるところではないでしょうか?私自身は山に登るだけでなく、麓に広がる土地の暮らしも含めて楽しんでいます。例えば霧ヶ峰へスノーシュー(雪上歩行具の一つ)でハイキングに行く時も温泉につかったり、蔵元で日本酒を味わったりして山の恵みを味わわせていただいています。
 
ヒュッテ山口:信州の山々は全国的に見てもバラエティに富んでいるのが特徴ですね。私が営むヒュッテのある涸沢から登る穂高には、全国から多くの登山者が来ています。一方で、県民の皆さんが気軽に楽しめる裏山や里山もありますから、本当に多種多用というか。
 
阿部知事:長野県では「山岳高原観光課」を立ち上げ、山と高原を観光のメインに据えて、他の県にはない取り組みをしていこうと考えています。信州の山や高原を地元の観光や教育にどう活かし、次世代にどう引き継いでいくのか。我々世代がしっかり考えなければいけない時がきているのではないでしょうか。
 

難易度の高い山より、ラフに登れる山での遭難事故が多いという事実

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鈴木教授:常に危険と隣り合わせである山を楽しむためには、安全登山が大前提。北アルプスの遭難救助の現場で長く活躍していらっしゃる山口さん、そして国内外の山々を登ってこられた野口さん、現状を教えてもらえないでしょうか?
 
ヒュッテ山口:最近多いのは、持病のある方が普段飲んでいる薬を持たずに山に登って体調を崩されるケースですね。体調が心配な時や悪天候の時には思い切って山には登らず、先ほど仲川さんがおっしゃっていたように麓の温泉など、別の方法で山を楽しみましょう!
 
野口健:高い山ほど危険だと思われている方が多いようですが、意外と遭難するのは高くない山、難しくないルートです。一番の危険は気の緩み。皆さんの装備を見て思うのはアウターにはお金をかけるのに、インナーはいい加減なもの を着ている人が多いということ。
 
たとえば汗をかきやすい夏山では通気性や発汗性に優れたインナーを着た方が急な寒さなどを防げます。あと、地図を見ない人が多いのも気になります。登山前には万一の避難ルートの確認と合わせて地図とにらめっこして欲しいです。
 
そして、登山時も必ず地図を持参し、今コース全体のどのあたりを登っているのかを確認しながら登った方がいい。そして、山の天気は変わりやすいので、山のプロである山小屋の人の意見をちゃんと聞いてください。
 
山は自己責任だと言われますが、遭難したら捜索する人やその家族まで巻き込むことになる。その辺を十分考えて行動すべきだと思います。
 
仲川希良:野口さんがおっしゃるように、登山前に天候やルートをチェックしたり、ガイドさんなど自分より山の経験のある人と一緒に登るようにしたり、という安全対策は山登りには欠かせないものだと思っています。
 
阿部知事:県では昨年12月に全国で初めて総合的な安全登山に関する条例を制定しました。一昨年の御嶽山噴火時の経験を活かし、救助活動をより迅速に的確に行えるようにするため、2016年7月1日からは指定登山道での登山計画書の提出が義務付けしています。
 
他にも体力や登山技術のレベルに合わせた登山を楽しんでもらえるように、県内の山々のグレーディングも始めています。今後は新潟や山梨、静岡、岐阜など周りの県にも呼びかけて、日本の山のスタンダードにしていきたいと考えています。
 
後編に続く

speaker:野口 健

登山家

1973年、アメリカ・ボストン生まれ。99年3度目の挑戦でエベレストの登頂に成功し、7大陸最高峰世界最年少記録を25歳で樹立。その後、以前から気にかけていたエベレストのゴミ問題を解決するため、4年連続で世界各国の登山家たちと清掃活動に尽力。2000年からは「富士山が変われば日本が変わる」をスローガンに富士山清掃活動を開始するなど様々な活動を展開する。

speaker:山口 孝

㈱涸沢ヒュッテ代表取締役、北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊長

1947年、東京都生まれ。中学生の頃から北アルプス・穂高連峰などへ通い続け、2001年から涸沢ヒュッテ代表取締役。07年からは北アルプス南部地区山岳遭難救助隊長を務める。

speaker:仲川 希良

モデル、フィールドナビゲーター

登山歴は6年。里山から雪山まで幅広く山を親しむ。モデルとして雑誌、広告などで活躍しているほか、テレビやラジオなど幅広いメディアで自らが感じた自然の魅力を伝えている。

speaker:阿部 守一

長野県知事

1960年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。長野県副知事、横浜市副市長などを経て、2010年長野県知事選で初当選。現在、2期目の長野県政を担う。

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