そもそも、エシカル(ethical)とは、直訳では「倫理的な」という意味。一般的に理解されている「倫理的な」こととは、法的な縛りはなくとも、多くの人が正しいと思っていることをいいます。
その「エシカル」と「消費」を合わせた「エシカル消費」というのは、環境や人権に対して十分に配慮された商品やサービスを選択して買い求めることをいいます。
これまで多くの消費者は、自分たちが使う商品やサービスの裏側にどんな背景があるのか、どんな人がどのような場所でつくっているのか、あまり関心を示してこなかったと思います。ところが、近年は、商品をつくるために、劣悪な労働環境が常態化していたり、絶滅しそうな動植物が犠牲になっていたりしていることがわかると、その商品を買わないという選択をする消費者が増えてきました。
特に欧州では環境や人権に対する意識の高まりもあり、FSC®︎認証(※1)やMSC認証(※2)のラベルをつけた商品が目立つようになってきています。

※1 FSC認証:環境や動植物を守り、森林に依存する人々や林業従事者の人権を尊重し、適切に管理された森林の樹木や適切だと認められたリサイクル資源で作られた木材製品や紙の認証。
※2 MSC認証:水産資源や環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業に対する認証。MSC「海のエコラベル」は、この認証を取得した漁業でとられた水産物を示す。
エシカル消費は、消費者が実践しやすい行動のひとつです。具体的には、以下のような行動がエシカル消費につながります。
・フェアトレードの商品を選ぶ
適正な価格で継続的に取引された途上国の原料や製品を使った商品を選ぶ
・エコ商品を選ぶ
リサイクル素材を使ったものや資源保護などに関する認証がある商品を買う
・寄付つき商品を選ぶ
売上金の一部が寄付につながる商品を積極的に買う
・被災地の産品を買う
被災地の特産品を消費することで経済の復興を応援する
消費を通じて、SDGs、特に12番目の「つくる責任、つかう責任」という目標達成に向けた貢献をすることができるのです。
日本はエシカル消費の「後進国」?
ところで、日本の「エシカル消費」の現状はどのようなものなのでしょうか。
Fairtrade Internationalが発表したレポートによると(※3)、2017年の日本のフェアトレード小売販売額は9369万ユーロ(約112億円)であるのに対し、特にフェアトレードに対する意識が高いと言われるスイスは6億3058万ユーロ(約756億円)。人口1人あたりの販売額にすると、日本はわずか0.74ユーロ(約89円)、スイスは74.90ユーロ(約8988円)と約100倍の差があるのです。世界的な潮流を鑑みると、やはりエシカル消費という観点は無視できない状況にあります。
世界と比べると、まだまだエシカル消費が浸透していない日本。
ただ、「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書(※4)によると、「エシカル消費」という言葉の認知度は、2016年度は6.0%だったのに対し、19年度では12.2%と2倍以上になっています。
そして、「エシカル消費につながる商品・サービスを購入したことがありますか。また、今後も購入したいと思いますか」という問いでは、「これまで購入したことがあり、今後も購入したい」と答えた人は16年度は28.4%でしたが、19年度は35.5%と増加しています。
これらのデータから分かることは、少しずつではありますが、国内でも認知が上がってきているということです。
一度にすべてをエシカルなものに切り替えることは難しいでしょう。例えば、5枚買うTシャツのうち1枚をオーガニックコットンで作られたものにしてみる、いつも食べるチョコレートをフェアトレード商品に替えてみるなど、できることから始めてみてください。
※3 https://files.fairtrade.net/publications/2017-18_FI_AnnualReport.pdf
【参考文献】