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人生の困難にどう向き合うか 村木厚子さん講演会 慶大の学生記者が取材

更新日 2022.08.15
慶應スポーツ新聞会・田中瑠莉佳
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標10:人や国の不平等をなくそう

伊藤忠商事と朝日新聞社が共催でお送りするオンライン企画「SDGsミライテラス」。7月21日に行われた第4回は、元厚生労働事務次官で伊藤忠商事社外取締役村木厚子さんを招き、「私らしい生き方とは」というテーマで話を伺いました。会場には高校生・大学生ら約30人が集まり、自分の将来やキャリアについて深く考える機会になりました。

(SDGsミライテラスのサイトはこちら

波瀾万丈の人生 退官後は大学の教壇にも

村木さんは2009年に郵便不正事件に巻き込まれ、逮捕・起訴されました。一貫して無罪を訴え、翌年無罪が確定し復職。2013年には厚生労働事務次官に就任します。退官後の現在は津田塾大学の客員教授を務めるなど幅広い活動に取り組んでいます。

講演会当日の様子。大学生、高校生ら30人が集まった=東京都港区
生きづらさを抱える女性を支援する「若草プロジェクト」に参加者と話す村木さん=京都市の寂庵

誰しも一瞬にして、「支えられる存在になる」

村木さんが事件を通して学んだことは、人間は誰しも一瞬にして“支えられる存在”になるということです。当時の村木さんは厚生労働省の局長を務めていたこともあり、「無意識のうちに自分は人を支える側にいると思っていた」と話します。しかし、逮捕されて初めてこの考えが誤りであったことに気付きました。支える側と支えられる側の人間がいるのではなく、一人の人間の中に、時に人を支え、ある時は支えられるというように両面があると身に染みて実感したと言います。

MC根本美緒さんのやりとりに破顔一笑の村木さん。明るい雰囲気に包まれた

日本の刑事裁判の有罪率は約99.9%と、誰もが諦めてもおかしくはない状況です。村木さんは、なぜ諦めずに戦い続けることができたのでしょうか。その背景には娘たちの存在がありました。

「誰かのために何かできる」 娘の存在が支えに

「娘たちに何かつらいことがあった時、『お母さんもあの時最後まで頑張っていたから、私も頑張れるはず』。 そう思えるか思えないかがすごく大事」

拘置所の中でも、“誰かのために何かできる”ということが、村木さんを支えていたようです。

た、困難に遭遇した時に自分の心が折れないようにするヒントについても言及しました。そのひとつは好奇心を常に持つこと。村木さんはつらい状況下でも、「拘置所ってどういうところだろう」「刑務官に『手錠が痛いんですけど』って言ったらどうなるのかな」と様々なことに思考を巡らせていたようです。村木さんの精神力の強さはこの飽くなき好奇心のおかげでもあります。

村木さんは、これまで仕事をしてきた中で女性が差別される現場を目の当たりにしてきました。女性の管理職の少なさなど日本社会はまだまだ女性活躍に大きな課題があります。村木さんは2016年に伊藤忠商事の社外取締役に就いてから、朝型勤務を推奨。夫婦が共働きできる環境を整えることで、女性が育児や家事をしながら仕事をできるようにはたらきかけています。

村木さんの講演に聴き入る大学生

やるだけやってみること 小さな勇気が成長の糧

村木さんは、働く全ての人にこう伝えます。「新しいことをするチャンスをもらったら引き受けなさい」と。何か一つのことを極めるだけでは足し算。自分の苦手分野であっても足を踏み入れ、挑戦することは掛け算になります。“やるだけやってみる”の小さな勇気が、自分自身を成長させる手助けとなるというのです。

事前に寄せられた質問に答える村木さん。教師の参加者も目立った

若者へ「諦めないこと 飛び込んでみること」

講演会の最後には、未来を背負う若者へのメッセージもありました。

「自分の強みも、職業の神髄も簡単には分からなくて当たり前。職業を選ぶ最初の段階で全ては決められないのだから、まずは飛び込んでみることが大切です。本当にやりたいことを諦めず頑張ってくださいね」

村木さんに質問する高校生。質問は途切れることなく、終演後も多くの学生が村木さんを囲んだ

イベントの後半では、質疑応答の時間がありました。「様々な情報が簡単に目や耳に入る時代において、ネガティブな情報が先行し、若者が結婚や育児に前向きになれないことについてどう思いますか」という高校生からの質問に、村木さんは、「家族を持ちながら仕事をするという環境は年々良くなっています。女性だけではなく男性のためにも、夫婦で働いて二人で子育てをすることが当たり前の社会にならなくてはいけませんよね」と共感を示しました。

同時に、そういった社会に変えていくために必要なことは、まず声に出してつぶやいてみることだと言います。「こういう制度があればいいのに」と声に出し、次に仲間を募る。そして、最後は「できると信じること」。誰も不満や要望を口にしなければ、現行の制度はそのままで社会は変わりません。簡単そうに聞こえるかもしれませんが、声に出すという最初の過程を軽視している人が多いということに改めて気づかされました。

高校生の質問に答える村木さん。学生と語り合い、交流することが何よりの楽しみという

村木さんの話で一貫していたのは、チャレンジ精神が大切だということです。「やるだけやってみる」「まずは飛び込んでみる」「声に出してつぶやいてみる」その勇気が明日を、そして未来を変える一歩になるのです。私たちの社会を悪くするも良くするも私たち自身に懸かっています。より良い社会になるよう積極的に何事にも挑む姿勢が重要です。

  ◇

次回9/21「途上国から考える貧困」海外中継も

「SDGsミライテラス」は今後も月に1度、ゲストを招きSDGsの展開について多角的に考察します。次回は9月21日(水)18時から。テーマは「途上国から考える貧困」で、世界で7億人が貧困に苦しんでいる現状に向き合ってきた人の思いを伝えつつ、南アジアのソーシャルビジネス、西アフリカの産地貢献に資する商社ビジネスも紹介します。

さだまさしさん応援メッセージも 見逃し視聴可

ケニアで障害児療育にあたってきた公文和子医師が現地から出演。グラミンユーグレナの佐竹右行社長はバングラデシュから参加し、緑豆で農家の所得向上と難民への食料提供に取り組むビジネスを報告します。伊藤忠商事はシエラレオネでのビジネスと地域貢献を説明します。ケニアの事業を支援してきた、シンガー・ソングライターのさだまさしさんの応援メッセージも流します。参加無料です。ミライテラスの特設サイトからの申し込みが必要です。お申し込み頂いた方は1週間程度、見逃し視聴できます。

writer:田中瑠莉佳

慶應スポーツ新聞会

慶應義塾大学法学部法律学科3年。ゼミでは民法を専攻。スポーツ観戦が趣味で、現在は野球・バレーボールの取材を中心に活動している。21歳。

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