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誰もが活躍できる社会へ 世界のビジネスリーダーが集結「The Valuable 500」とは

更新日 2022.02.02
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標8:働きがいも 経済成長も
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

インクルーシブ(包摂的)なビジネスはインクルーシブな社会をつくる――。ビジネス分野における障害者の社会進出を、ビジネスリーダーが軸となって推進する世界的な運動「The Valuable 500(ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド、V500)」が広がっています。障害者が自らの潜在的な価値を発揮できるだけでなく、障害の有無に関係なく、誰もが活躍できるインクルーシブな社会の実現を目指すものです。

世界には10億人以上の障害者がいると言われています。障害者やその家族、友人を合わせた購買力の総額は13兆ドルに達する巨大な市場。しかし、障害者に配慮した製品を提供している企業は約4%と非常に少ないのが現状で、ビジネスチャンスを十分に生かし切れていないと言えます。

V500は、2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、アイルランド出身の社会起業家キャロライン・ケーシーさんの呼びかけで発足しました。社会やビジネス、経済において、障害者が持つ潜在的な影響力を発揮できるよう、ビジネスリーダーが自社のビジネスをインクルーシブにする改革を起こすことを目的にした国際的なネットワーク組織です。世界で500社のCEO(最高経営責任者)の賛同を得ることを目指しています。これまで、世界35カ国から445社が参加。日本では、ソニー、ソフトバンク、全日本空輸など47社が署名しています(2021年3月31日現在)。

「The Valuable 500」創始者のキャロライン・ケーシーさん。生まれつき視覚障害を持つ Photo: Jack Caffrey

マジョリティーが変わらなければ、ソーシャル・イノベーションは起きない

これまで、障害者支援を中心的に担ってきたのは、行政などの公的機関や当事者でした。グローバル・インパクト・パートナーとして、V500と連携する日本財団(東京都港区)も、数十年にわたって、障害者の生活支援や人材育成など直接的な支援をしてきましたが、課題も抱えていました。「V500は、福祉の観点ではなく、障害者雇用の経済性を強調している点が画期的。障害者雇用という社会課題の解決に向け、世界の大企業500社が同じプラットフォームで活動することは、これまでにない取り組みです」と同財団の樺沢一朗常務理事は話します。「マジョリティーが変わらなければ、ソーシャル・イノベーションは起きない。V500の取り組みは、世界のビジネスリーダーたちが参加することで、マジョリティーが変わり、社会の仕組みが変革するゲームチェンジャーになり得ます」と指摘します。

V500に参加する企業は、インクルーシブな社会を目指すためにコミットするアクションに関する文書の提出が求められます。この文書は、自社の取り組みに対する誓約として、CEOが署名します。また、加盟するにあたり、取締役会での議題に、障害に関する内容を盛り込むといった条件があります。こうした枠組みで、影響力の大きなビジネスリーダーの賛同や理解を得ることで、より多くの企業が障害者インクルーシブな社会に向けた取り組みを推進していくことを狙っているのです。

「CSR部門など組織ではなく、リーダーに直接働きかけることでリーダー自身が社会課題に関心を持つようになり、より課題解決が進みます。本質的な変革を求めているからこその枠組みです」(樺沢さん)。リーダーの「お墨付き」をもらって活動できるため、現場でもより活発な取り組みが期待できるといいます。

日本財団の樺沢一朗常務理事
日本財団の樺沢一朗常務理事

日本では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇うことを法律で義務付けています。2021年3月には、法定雇用率が2.3%へ引き上げられましたが、2020年に法定雇用率(2.2%)を達成した民間企業の割合は、全体の半数以下に過ぎません

企業は、法定雇用率を満たすために障害者を雇用する傾向がありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大がそうした現状に一石を投じたと樺沢さんは考えています。「経済的な余裕がなくなったことで、ただ単純作業をさせるのではなく、戦力として活用するために、個々の状況に応じてどんな仕事ができるのか、どんなタスクを切り出せるのかといったことを考え、仕事内容を見直す企業が増えました。工夫をすれば、健常者以上の能力を発揮することもあります。障害者が経済性を持って仕事をすることは、幸福度を高めたり、存在意義を満たしたりすることにもつながります」

インクルーシブな社会、鍵は多様性

近年、ビジネスにおいても、多様性がますます重要視されています。「障害者就労を通して、多様性を企業内に取り入れていくことができます。インクルーシブな社会を目指すV500は、障害者をメインにしていますが、その心は、インクルーシブな職場づくり、多様性のある職場づくりです」と樺沢さんは話します。

インクルーシブな社会の実現に何が必要か。樺沢さんは「心のバリアフリー」を挙げます。「違いを理解するのではなく、『違いが分からない』ということを認識することが、第一歩だと感じます。身近な職場で障害者雇用が進むと、そのきっかけになります。大多数の意識が変わらないと、新しい社会は生まれません」

日本財団では今後も、V500に参加する企業の先進的な取り組みや知識、ノウハウを社会と共有することで、誰もが活躍できる社会を目指していく予定です。

     ◇

【V500に署名した日本の企業 (署名日順)】(2021年3月31日現在)

丸井グループ/三井化学株式会社/ソフトバンク株式会社/NTT(日本電信電話株式会社)/全日本空輸株式会社/TOTO株式会社/株式会社京王プラザホテル/あいおいニッセイ同和損害保険株式会社/日本航空株式会社/ソニー株式会社/NEC(日本電気株式会社)/KNT-CTホールディングス/花王株式会社/大和ハウス工業株式会社/シオノギ製薬株式会社/三菱ケミカル株式会社/西武グループ/大日本印刷株式会社(DNP)/株式会社電通/昭和電工株式会社/読売新聞東京本社/住友生命保険相互会社/株式会社アーバンリサーチ/セガサミーホールディングス株式会社/積水ハウス株式会社/株式会社朝日新聞社/ENEOSホールディングス株式会社/株式会社ファーストリテイリング/ソニー生命保険株式会社/オムロン株式会社/参天製薬株式会社/合同会社DMM.com/三井住友フィナンシャルグループ/サントリーグループ/マネックスグループ/セイコーホールディングス株式会社/清水建設株式会社/マツダ株式会社/SOMPOホールディングス/日立グループ/株式会社静岡銀行/株式会社ノーリツ/新生銀行グループ/株式会社ブリヂストン/株式会社ベネッセホールディングス/川田テクノロジーズ株式会社/株式会社山陰合同銀行

     ◇

朝日新聞社は2020年12月、V500の趣旨に賛同し、活動に参加しました。

The Valuable 500 朝日新聞社コミットメント(骨子)

障がいの有無に限らず、誰もがお互いの人格を認めて支え合い、すべての人の個性や多様性を尊重できる暮らしやすい社会になるように努め、インクルーシブな社会の実現に向けて報道やイベントを発展させていきます。

1.インクルーシブを広げるメディア

様々な人々が分け隔てなく生活し、ともに歩んでいける社会を目指した報道やイベントを継続、発展させることで、心のバリアフリーを広げることに貢献します。

2.インクルーシブな使い勝手のメディア

すべての人が朝日新聞社の情報を利用できるよう、ユニバーサルデザインや情報保障の考え方を取り入れた取り組みを加速させます。

3.インクルーシブな働き方のメディア

社内のいろいろな部署で、さまざまな障がいのある従業員が活躍しています。障がいのある従業員がさらに働きやすい職場環境を作っていくことで、すべての従業員がより働きやすい会社になるようにします。

なお、全文は朝日新聞社のコーポレートサイトにてご覧いただけます。

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