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悩み多き女性の更年期 周囲の支え、知ることが前向きに生きる力に 

更新日 2023.01.25
橋田正城
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標5:ジェンダー平等を実現しよう

40代後半~50代後半は、人生に息苦しさを感じる女性が少なくありません。介護に疲れ、自分の将来像が心配になることもあります。仕事は忙しく、家庭では子育ての悩みが尽きません。夫とも……。今回は、「誰ひとり取り残さない」というSDGSの理念に鑑みて「更年期」を考えます。

(SDGsミライテラスのサイトはこちら

更年期を「幸年期」へ 渡辺満里奈さん

タレントの渡辺満里奈さん(52)は1980年代半ば、フジテレビ「夕やけニャンニャン」に出演し、おニャン子クラブでデビューしました。清潔感あるキャラクターで人気を維持し、「台湾」「グルメ」「ピラティス」にも詳しいことで知られています。2児の母でもあります。

『大人の女子会』 50代からの人生を楽しむ

そんな満里奈さんは、「50代からの人生を楽しもう」を合言葉にした『大人の女史会』というプロジェクトを同じ事務所の先輩でもある歌手の野宮真貴さん、モデルの松本孝美さんと立ち上げました。満里奈さんは、更年期におとずれる様々な不調に対しては、正しい知識を得ることや経験者の話を聞くことが大切だと感じています。週刊文春WOMANでは、更年期のあれこれを3人が語り合う「『大人の女史会』にようこそ。」も好評連載中です。

イライラ、ほてり、異常発汗 症状は様々

ここで、更年期について簡単に説明しましょう。更年期は閉経を挟んだ前後5年、計10年間を指します。卵巣機能は一般的に45歳ころから低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減って月経不順が起きやすくなります。月経が1年くらい止まった頃が閉経になります。更年期の症状は人それぞれで、無症状の人もいます。症状としては、精神的にはイライラしたり、落ち込んだり、身体的には汗が噴き出る「ホットフラッシュ」という症状が起きたり、のぼせたりします。血圧が徐々に上昇したり、関節などが痛んだりすることもあります。動悸(どう・き)や不眠、頭痛、めまいも起こることもあります。日常生活に支障を来すようになると「更年期障害」と診断されます。

美容家・起業家の山本未奈子さん(V Holdings提供)

起業家の山本未奈子さん(47)=V Holdings代表取締役Co-CEO=が体調の異変を感じたのは、数年前のことでした。「42歳、43歳の頃ですね。生理のサイクルが狂い、倦怠感(けんたいかん)や、ホットフラッシュと呼ばれる発汗がありました。落ち込みやすくなりました」。ただ、開発に2年半かけた超吸収型サニタリーショーツ「Bé-A〈ベア〉」がその後ヒットし、分刻みのスケジュールをこなす生活が続きました。米ニューヨーク州認定のビューティセラピスト、英ITEC認定の国際ビューティセラピストの山本さんは、友人から「ラテン」と呼ばれる快活な性格もあって、仕事も楽しかったといいます。

しかし、昨年末ごろ、症状が悪化し、今年の6月には一時的に起き上がることができなくなりました。病院に行き、しばらく仕事量も抑えることで、数カ月後には「ラテンが戻ってきた」と思える日も出てくるほど、徐々に復調してきました。

「振り返ると、忙しい生活が好きでした。余裕を持って無理をしないこと、自分を大切にすることを学びました。私の経験した症状が更年期の女性に起きやすいことを理解し、3人の子どもに伝えました。娘は将来の心構えができたと思います。多くのことを学んだ経験でした」。会社は「(まずは)日本で一番女性を幸せにする」ことを使命に掲げています。自らの経験もあって、来年は更年期向けの新しいブランド(サプリなど)を展開する予定です。

更年期女性にオンライン診療 会社負担のポーラ

化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスは10月、女性従業員の健康をより改善するために「ルナルナオフィス更年期プログラム」を実証導入しました。従業員が婦人科をオンラインで受診する仕組みをつくり、医師が必要に応じて漢方薬などを処方します。診療費などは会社が全額負担します。先進的な取り組みとして注目されています。

アンケート結果を説明するポーラ・オルビスグループの産業医、飯田美穂医師

更年期の女性 不調で年約2億円損失 花王も支援

なぜ、こうした施策を打ち出したのでしょうか。同社はプログラムの導入に先立ち、40~50代の女性従業員を対象にしたアンケートを実施しました。すると、約6割が更年期の症状を抱えていることが分かりました。婦人科を受診する人は17.1%に過ぎず、「我慢する(何もしない)」が48.3%に達しました。働き盛りである更年期の従業員が不調だと、会社にとって年間約2億円の損失になる、との試算も調査会社から示されました。ポーラ・オルビスグループの産業医で慶応義塾大学医学部の飯田美穂医師(産婦人科)は「更年期は特に精神面のサポートが必要です。苦しい時や困っている時に本人が助けを求められるように、周囲が日頃から双方向のコミュニケーションを図る必要があります」。当事者への傾聴や共感は、多様性を重んじる職場づくりにつながる――。飯田さんは、そう語ります。

花王は国内グループの女性従業員が51.9%に達し、そのうち40代以降が49.6%を占めます。従業員の生産性を阻む理由と更年期症状の関連性を調べたところ、労働機能障害の程度が高い人ほど更年期症状を自覚し、両者に相関があることが分かりました。そこで、2017年から「女性の健康相談窓口」をつくり、女性の健康を意識した社内報「Women’s News」を発行。婦人科検診、2次検査の受診率向上のための啓発活動や「女性の健康セミナー」も実施しています。担当者は「女性が働きやすい職場づくりと従業員のヘルスリテラシーの向上をめざす体制を整えました」としています。10月には更年期の症状や対策などを学べる動画を社内で公開しました。

「受診していない」が8割 厚労省調査

厚生労働省が今春、調査したところ、更年期障害と診断された人は40代女性で3.6%、50代女性で9.1%でした。ただ、更年期障害の可能性があると考えている人は40代女性で28.3%、50代女性で38.3%いました。更年期症状を自覚してから病院を受診するまでの期間を尋ねると、「受診していない」と答えた女性が40代、50代でいずれも約8割いました。

フェムテック製品続々 骨盤底筋の運動器具も

更年期の悩みをどうやって解決するのか、フェムテック市場も注目しています。具体例を挙げましょう。出産や加齢などで骨盤底筋(こつ・ばん・てい・きん)がゆるみ、尿漏れにつながることがあります。花王の調査では20代でも2割強の人が尿漏れを発症しており、世代を問わず悩みを抱えている人がいます。

フェルマータの扱う「ケーゲルベル」。尿漏れ改善が期待される(同社提供)

伊藤忠商事の出資するフェルマータは2019年の創業で、骨盤底筋を鍛える「ケーゲルベル」という米国の医師が監修したトレーニング器具を扱っています。膣(ちつ)の中に最小限のパーツをいれ、体の外に「おもり」を出して負荷をかける製品です。骨盤底筋を鍛え、尿漏れの改善が期待できるそうです。骨盤底筋の訓練器具については厚労省が今春、一般医療機器の新たな名称として追加しました。フェルマータの担当者は「今後は一般医療機器に該当する商品を販売する可能性も模索していきたい」と語ります。

運動を心がけ、バランスの良い食生活と睡眠を

昭和大学医学部の白土なほ子准教授(思春期、更年期)は「潜在的に更年期症状を抱えている人は6割近くいる気がします」と語ります。もちろん、他の疾患に起因しない症状であることが前提です。

「ライフケアにつながるので運動を心がけてほしいです。ホットフラッシュのある方は脱ぎ着しやすい服装で温度調節すること。そして、バランス良い食生活と睡眠も意識してほしいです」

昭和大学の白土なほ子准教授(本人提供)

「知は力なり」 自然体で更年期を受け止めよう

白土さんは、思春期に対して「思秋期」という言葉があることを示唆的と受け止めています。「この年代には、『空の巣症候群』という言葉もあります。ですので、患者さんの声に耳を傾け、気持ちを持ち上げるようにしています。思春期が10年あるように思秋期も10年あります。みんなが『美魔女』になってもおかしいですよね。自然体で更年期を受け止め、必要に応じて適切な治療を受けることではないでしょうか」。白土さんは「知は力なり」とも考えています。更年期がどういうものかを知ることから始めてみませんか。

writer:橋田正城

朝日新聞マーケティング戦略本部

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