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2030年の社会の担い手を育てよう 日常の「まなび」の中のSDGs

更新日 2022.09.30
目標4:質の高い教育をみんなに
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
シンポジウム

▲シンポジウムでのパネルディスカッション=写真はいずれも2022年8月、横浜市、社会応援ネットワーク撮影

SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されて7年、持続可能な社会作りが時代の要請となる中、朝日新聞社マーケティング戦略本部、寺子屋朝日は神奈川県教育会館(横浜市)などと8月27日、シンポジウム「日常の“まなび”の中の“SDGs”~持続可能な社会をめざすための学びとかかわり~」を開きました。
ESD(持続可能な開発のための教育)推進に努めてきた及川幸彦・奈良教育大学准教授が基調講演し、同県内の教員によるESD授業の事例報告や、その題材の記事を取材執筆した朝日新聞記者らを交えたパネルディスカッションも行われました。

イベントの内容を一部ご紹介します。詳細とイベントの動画は、寺子屋朝日の記事でご覧いただけます。

教育はSDGsに貢献する

及川さんは「誰一人取り残さない社会をめざした教育を今考えよう!―持続可能な社会を創る教育をめざして―」と題して講演した。17目標と169ターゲットで構成されるSDGsのうち、第4の目標に「質の高い教育」が掲げられているが、及川さんは「教育は単に17目標の一つではない。持続可能な社会の担い手づくりという点で、教育は全てのSDGsの目標に貢献する」として、「それほど教育は重要な役割を果たすものです。教育に携わっている方は非常に誇りをもって捉えていただきたい」と述べた。

話題は学習指導要領とSDGs、ESDの関連にも及んだ。新しい学習指導要領に前文が付き、その中に「持続可能な社会の創り手」という文言が入ったことを、及川さんは「今回の学習指導要領は、SDGs達成に向けたESDの方向性と軌を一にしている」と表現した。

また、及川さんは、山間部の豪雪地帯ながら、森・川・海をつなぐESDのカリキュラムを編成している福島県只見町で、中学生が海の環境を守るために新聞紙でエコバッグを作り、普及活動に取り組んでいることを紹介した。「子どもたちのおかげで地域の人もSDGsや循環型社会に興味を持つようになった。学びの場が学校外へ広がっているのです」。学校教員は定期的に異動があり、どんな取り組みも継続するのは簡単ではないが、地域は変わらないため、地域と協働することで持続可能な取り組みとして成立するのだという。

学校にはいま、気候変動、エネルギー、防災・減災、生態系といった多様な問題を子どもたちが日常的な学びの中で意識し、考えられるようにする環境づくりやカリキュラムの工夫が求められる。及川さんは「ESDによって持続可能な社会に貢献できる人材を育て、その人たちが各分野で活躍することでさまざまな課題が解決し、最終的に誰ひとり取り残さない社会が実現できるのだと思います」と話した。

新聞記事をESDの教材に

次にESDの実践例や授業案を神奈川県の2人の教員が報告した。いずれもSDGsに関する朝日新聞記事を集めた冊子「2030 SDGsで変える」に載った記事を基にしたものだ。大磯町立大磯中学校教諭の吉村大志さんは「海へ、マスクごみ『15億枚』 1年間に流れ出た数、環境団体が試算」(2021年6月11日付朝日新聞夕刊)という記事を基にした、中学3年生の社会科の授業の事例を紹介した。

コロナ禍以降、マスクごみは子どもたちにとって身近な話題であり、不織布マスクの原材料が実はプラスチックだという意外性があったことなどから、この記事に注目したという。授業の最後には、「自分たちで取り組めること」「行政が取り組むべきこと」という二つの側面から生徒に解決策を考えてもらい、ワークシートに記入してもらった。

寄せられた解決策について吉村さんは「『ごみ拾い』『マスクホルダーに入れて管理』を挙げた生徒が多かったのですが、『不織布マスクの上に布マスクを着けて、1回で捨てる回数を減らす』という方法や『現状を写真に撮ってSNSで拡散する』という今どきの子どもらしい意見もありました。こうした授業案は、新聞記事をどう教材化するのかという点で手間がかかりますが、その分、授業づくりの面白さや醍醐味を感じました」と話した。

二宮町立山西小学校教諭の高橋実富さんは、「1頭の保護と40万頭の駆除 東京・荒川のシカ、捕獲騒動から1年」(2021年6月17日付朝日新聞夕刊)という記事を使った小学校低学年の道徳の授業案について報告しました。
詳細は寺子屋朝日の記事にてご紹介しています。

いかに自分ごととして考えさせるか

パネルディスカッションは、県教育会館の島崎直人理事長をファシリテーターに、及川さん、吉村さん、高橋さんと、マスクごみの記事を執筆した朝日新聞科学みらい部の矢田文記者、県教育委員会子ども教育支援課の二戸基明・専任主幹を加えた6人で行われた。

はじめに矢田さんは、コロナの感染が始まって1年余り経ち、マスクごみが増えていると環境保護団体などから耳にするようになったことが取材に端緒になったと紹介した。ただ、ごみ問題はずっと未解決の課題であり、ボランティア団体などに聞けば、マスクごみが増えたとはいえ、最多ははやはりペットボトルだったという。「でも今、ごみ問題を自分ごととして考えてもらうには、マスクごみは有効だと思いました。この状況の中で自分に何ができるか考えてもらうきっかけとして紹介しました」と説明した。

神奈川県教委の二戸基明さんは、「正解のない学び」について発言した。「子どもたち一人ひとりがどう考え、どう人に伝えていくか。社会に出たときに、その学びを生かしてどのような人生を作り上げていくかが問われています」としたうえで、新聞記事を使った授業について、「正解がないオープンエンドという考え方は、これからの教育には必要ではないでしょうか」と指摘した。

これらの意見を踏まえ、吉村さんは今回の授業実践を改めて振り返り、生徒たちの議論を深めるには基礎知識も不可欠だとの見方を示した。「楽しく議論して終わりではなく、知識、理解を深めた上で、この答えのない問いをどう考えるかというところまでステップアップしたい」。さらに教科横断的な学習の必要性に触れ、「学校全体として、多様な考え方を持つ子どもを育てていけたらいいと思います」と語った。

教員も共に学べば楽しい

教員は今や、子どもを自ら指導するだけでなく、地域や大学などとつなげて学ぶ環境をつくるコーディネーターやファシリテーターの役割を求められている。シンポジウム全体のまとめを任された及川さんは「とかく教員は子どもたちを上から目線で見てしまうけれど、ともに学び、ともに変わっていく視点が大事です」と前置きした。その上で、「感動できる機会、深く勉強できる機会をいかにつくるかだと思います。先生方だけで無理な場合、地域のNPOの皆さんなどが支援してくれます。環境さえ創出してあげれば、子どもたちは自分たちで学び始めると思います」と締めくくった。

      ◇

本イベントの詳しい内容と動画は、寺子屋朝日の記事で紹介しています。

SDGsを授業に取り入れるヒントを紹介した「2030 SDGsで変える 活用ガイドブック」も無料で差し上げます。吉村さん、高橋さんの授業案も掲載されています。詳細はこちらをご覧ください。

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