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【猛暑で夏の電気代が心配】コスパ最強の節電方法「窓の対策」を解説

更新日 2023.05.22
高橋真樹
目標13:気候変動に具体的な対策を

5月には全国で30度を超えるなど、異常な暑さが目立っています。そして、2023年の夏本番はさらに暑くなると予想されています。また、6月からは大手電力会社が家庭向けの電気代を値上げすることも決まりそうです。猛暑と光熱費の上昇のダブルパンチをどう乗り切ればいいのでしょうか?本格的な夏が来る前のいま、やっておきたいことがあります。ポイントとなるのは、熱の出入り口となる窓の対策です。断熱ジャーナリスト高橋真樹が、コスパ最強の夏の窓対策を紹介します。

  1. 窓は熱の出入り口
  2. 遮熱は窓の外から
  3. コスパ最強の対策は内窓
  4. 賃貸でもできるDIYの内窓
  5. 内窓を付けたらもう戻れない
  6. 手軽にできる窓の断熱対策まとめ
  7. 断熱を通して社会課題の解決を

1.窓は熱の出入り口

住まいは、天井や床、壁や換気口など、あらゆるところから熱が出入りしています。中でも、年間を通してもっとも熱が出入りしている部分が窓やドアなどの開口部です。窓メーカー「YKK AP」の調査によると、一般的な住まいでは、夏は74%、冬は50%の熱が、開口部から出入りしています。そのため窓対策をしなければ、いくら高効率なエアコンを入れてもエネルギーは抜け出るばかりです。

「うちの窓はペアガラスだから大丈夫」と思うかもしれません。でも、サッシがアルミの場合は要注意。アルミは、樹脂よりも熱伝導率が1000倍も高く、窓の性能を下げてしまっているからです。

夏にやるべき窓対策は2つあります。遮熱(直射日光を遮ること)と、断熱(暖かい空気を入れないこと)です。以下に具体的な方法を紹介します。

アルミサッシは断熱性能が低い

2.遮熱は窓の外から

まずは遮熱です。窓から差し込む直射日光には、強烈なパワーがあります。単に外気温が暑いだけであれば、断熱をきちんとすれば室内が暑くなることを防げます。しかし、直射日光が入り続ければ、樹脂サッシにトリプルガラスという日本最強レベルの窓であっても、室温の上昇は防げません。

多くの家では、室内のカーテンやブラインドなどで日射を遮っていることでしょう。しかし室内側の対策だけでは、外から入る熱の50%程度が室内に入ってきてしまいます。

アウターシェード

窓の外で日射を遮ることで、外から入る熱の割合を20%程度に下げることができます。おすすめしたいのは、外付けスクリーン(アウターシェード)です。透過率が低いスクリーンを、直射日光が差し込む窓の外に設置すれば、暑さが大きく和らぎます。

スクリーンを設置できない賃貸住宅では、すだれが効果を発揮します。金額も安く、手軽に設置できるので、ぜひやってみてください。「遮熱は窓の外」と覚えておきましょう。

事情により、どうしても窓の外に設置できない場合は、次善の策として室内側にカーテンやブラインドを取り付けることになります。その場合は、厚手のカーテンや、中に空気層のあるハニカムブラインドなど、断熱性能の高いものを選ぶと効果的です。

伝統的なすだれも効果的

3.コスパ最強の対策は内窓

次は断熱です。断熱というと冬を暖かくするイメージがありますが、「熱を断つ」という言葉が示す通り、夏を涼しくする効果もあります。窓の断熱では、なんといっても内窓がおすすめです。内窓を設置することで、外気の影響は抑えられ、空調の効果も高まります。さらに設備機器とは異なり、一度設置するとランニングコストがかからず、ずっと効果を維持してくれます。

内窓の設置は、床や天井をはがして断熱材を入れるといった他の断熱工事とは異なり、簡単に終わります。コストパフォーマンスに優れているので、やらない手はありません。

内窓には、大きく分けて二種類あります。ひとつは窓メーカーなどがつくる製品です。ここでは「メーカーの内窓」と呼びます。インターネットで「内窓」と検索すればメーカーの内窓を販売、設置している施工業者のサイトが出るので、簡単に注文できます。

価格は小さめの窓ひとつで、3〜4万円程度(工賃込み)から。内窓の仕様にはいろいろなものがありますが、樹脂サッシで、ガラス2枚(断熱仕様のLow-Eガラス)のものが標準的です。複数の窓に設置すれば初期投資はかかりますが、性能が高く長期的にメリットがあるため、持ち家の方にはおすすめです。

浴室に設置された樹脂製の内窓

戸建て住宅は窓が多く、一度に全部付けると金額がかさんでしまいます。そこで優先したいのは、リビングや寝室など、長い時間を過ごす部屋です。また冬に寒くなりがちな、脱衣所や浴室などに付ければ、効果を実感しやすくなります。マンションの場合は、窓の数が限られているので、可能な限り全ての窓に設置することをおすすめします。

4.賃貸でもできるDIYの内窓

内窓のもうひとつのタイプは、「DIYの内窓」です。DIYといっても完全にオリジナルで作るわけではありません。インターネットやホームセンターなどで販売されている、簡易的な内窓キットがあります。コストは1万円台からと安く、両面テープなどを使って貼り付けるので、メーカーの窓を設置できない賃貸住宅にも向いています。

性能は、メーカーの窓に比べると劣りますが、それでも窓際からの熱気や冷気を弱める効果があり、あるとないとでは大違いです。なお、DIYの内窓はプラスチックレールや中空ポリカーボネートといったプラスチック素材が使われているため、耐久性の面で、大きな掃き出し窓などへの設置は向いていません。

DIYで組み立てるタイプの内窓

5.内窓を付けたらもう戻れない

内窓をつけたら、生活はどのように変わるのでしょうか?まず、窓際だけ温度が高い(または低い)という状態が緩和されます。また、空調の効き目が改善されます。エアコンを付けた際、適温になる時間が早まり、少ない出力でその温度を維持できます。また、エアコンを切っても急激な温度変化が起きにくくなります。

このような理由から、僕は周囲の友人たちに「内窓を付けた方がいいよ」と言い続けてきました。すると最近になって、付けてくれる友人・知人が増えました。内窓を付けた人たちはその効果に驚き、口々に「なぜもっと早くやらなかったんだろう」「もう元には戻りたくない」と言っています。

以下に紹介する僕のブログで、内窓を付けた友人の感想をまとめているので、参考にしてください。

内窓つけたらこんなに変わる!体験談特集パート1(メーカーの窓編)
内窓つけたらこんなに変わる!体験談特集パート2(DIY編)

DIYの内窓の場合は、ふだんDIYをやり慣れているかどうかで作業効率はだいぶ変わります。でもブログにもあるように、未経験者でも設置可能です。

6.手軽にできる窓の断熱対策まとめ

夏にやるべき窓対策をまとめました。

・窓の外側に外付けスクリーン(アウターシェード)やすだれを設置
・窓の室内側にカーテンやブラインドを取り付け
・内窓の設置(リビングや寝室など長時間を過ごす部屋を優先)

内窓を下げると、開けた側だけ温度が低くなる

7.断熱を通して社会課題の解決を

今回紹介した窓対策は、手軽にできて断熱効果を実感しやすい住まいに整える第一歩になります。そして、窓の断熱(遮熱)を通して効果を実感すれば、家の他の部分の断熱も気になってくる人が多いのです。実際、内窓をつけた僕の友人の中には「次は他の場所をやりたい」と、床や玄関、天井などを断熱した人もいます。窓は熱の出入り口というだけではなく、断熱への意識を高める入り口にもなっているようです。

今回で断熱をテーマにした5回の連載が終了となります。断熱と聞くと難しく感じる方もいるかもしれませんが、本日紹介したように、簡単なことから、誰にでもできることがあります。そして、断熱はやればやるだけ効果があります。みなさんも、自分の暮らしをより快適にするために、断熱への意識を持っていただけたらうれしく思います。

そして、断熱は自分の住まいを良くするというだけではありません。これまでの連載記事では、賃貸住宅の課題学校の環境についても取り上げてきました。多くの人が断熱の効果を実感し意識することで、こうした建築物の性能や快適性を底上げすることにもつながるのではないでしょうか。

筆者自宅の樹脂サッシの窓

なお僕は、取材を通して出会ったエコハウスに暮らし、その暮らしぶりをブログ「高橋さんちのKOEDO低燃費生活」で発信しています。参考にしていただけると幸いです。ありがとうございました!

writer:高橋真樹

ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。国内外をめぐり、環境、エネルギー、まちづくり、持続可能性などをテーマに取材・執筆を続ける。エコハウスに暮らし断熱ムーブメントを広める、日本で唯一の「断熱ジャーナリスト」でもある。著書に『日本のSDGs -それってほんとにサステナブル?』(大月書店)、『こども気候変動アクション30』(かもがわ出版)ほか多数。エコハウスブログ「高橋さんちのKOEDO低燃費生活」(http://koedo-home.com/)。高橋真樹公式サイト(https://t-masaki.com/) 

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