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地域貢献×パートナーシップにどう中小企業が挑むか。太陽住建に学ぶ、持続可能な社会づくりとは?

更新日 2022.02.02
目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

日本国内でのSDGs認知度はまだ高いとはいえない中、「SDGs」と言われても、では企業活動として何をすればよいのか、どのように取り組めばよいのか、具体的な活動のイメージがわかない、という団体や会社は少なくありません。特に中小企業では、限られた経営基盤の中でSDGsの要素をどう取り入れるかはそう簡単ではありません。
 
そうした中で、「本業と一体化した社会貢献」をモットーに、企業活動と持続可能な社会づくりの融合に積極的に取り組んでいる会社があります。神奈川県横浜市を拠点に、「リフォーム・リノベーション」、「ルートハウスプロジェクト」(空き家対策)、「太陽光発電」の3つの事業を主に展開する、株式会社太陽住建です。ちょうど10年前に会社を設立した、代表取締役の河原勇輝さんは、一貫して“地域貢献”にこだわり、着実に会社を成長させながら、持続可能な社会の仕組みを模索してきました。そのユニークな取り組みをご紹介します。

“家を根付かせる”ルートハウスプロジェクトとは?

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(横浜市磯子区にある空き家を地域の人が集まるコミュニティスペース「Yワイ広場」としてリフォームした。地域に根ざした家として再生させた、という)
 
――まずはじめに、現在の太陽住建の事業について教えてください。
 
河原勇輝さん(以下、河原) 太陽住建は、住宅および産業用の太陽光発電の設備を導入する工事から防音、外構工事まで、住まいに関するリフォーム全般を請け負う施工会社になります。その中で私たちが事業のひとつの柱として考えているのが、“本業と一体化した社会貢献”です。例えば、「ルートハウスプロジェクト」と私たちが呼んでいる、空き家の再生プロジェクトがその一例になります。
 
ご存知のとおり、少子高齢化を抱える日本では、空き家問題が深刻化しています。横浜も例外ではなく、私たちの会社がある南区は、市内でも空き家が多いエリアでした。純粋な全戸建のうち、放置空き家が5.3%もあったのです。2033年には3軒に1軒が空き家になる、との予測もあり、行政としても大きな課題となっていました。
 
空き家の最も大きな問題は防犯、と言われています。管理が行き届かないことから知らない人が侵入する可能性があり、空き家の周辺住民は日々の生活に不安を抱えることになります。そこで私たちが提案したのが、空き家を活用して地域の人々に必要とされる場所をつくるという「ルートハウスプロジェクト」です。ルートハウス(Root House)とは“家を根付かせる”という意味を持ちます。その第一弾として、磯子区の空き家を太陽住建で借りてリフォームして、「Yワイ広場」と名付けて、1階を地域のコミュニティスペースに、2階をシェアオフィスにして、2018年9月に運用を開始しました。
 
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(太陽住建の取り組みを地域住民に説明する河原さん)
 
河原:空き家問題に取り組んでいく中で、私自身、空き家をコワーキングスペースやコミュニティスペースとして活用している例をたくさん見てきました。一級建築士が設計し、古民家をリノベーションしてかっこよく仕上げたシェアハウスなどを見ては、「かっこいいな」と思いましたが、調べていくと、1年くらいで事業形態が変わったり、事業そのものがなくなってしまったというケースが多かったんですね。つまり、建物そのものはとてもきれいで魅力的だけど、持続可能な事業形態が少ない、ということです。
 
その理由を考えた時、行き着いたのが“地域に必要とされていないのではないか”ということです。空き家は特に住宅街に多いので、地域の方々にまず受け入れてもらわないといけません。大事なのは、地域の方の居場所として使ってもらうことなのではないか、と。
 
そこで、「Yワイひろば」1階のコミュニティスペースにメリットを感じている人に、2階の個室をワーキングスペースとして貸し出し、家を一緒に管理するスタイルで維持・運営する仕組みを考えました。
 
――2階の借主は、どんな方が入っているのですか?
 
河原:介護のIT企業WELMOさんや、おもしろ科学探検工房さん、フリーランスエンジニアの方、地元の美容室トリプルエフなどに今、入ってもらっています(2019年2月時)。介護のIT企業などは、1階にケアプラザの方に集まってもらって新商品を見てもらったり、各入居者は1階で教室を開いたりして活用してもらっています。そして管理は、入居されている方々と協力し合って行っています。何よりもやってみてわかったのは、それぞれの活動はいつもにぎわっていること。それだけニーズがある、ということです。
 
――特に子どもたちにとっては、家にいるようにリラックスして学べるので、いいかもしれないですね。
 
河原:一軒家のダイニングとリビングが「教室」になるので、ほどよい人数で授業を受けられることも受講者にとっては魅力のひとつだと思っています。たとえば、最近は中学校でプログラミングの教室などもありますが、クラスの大人数での授業だと、できることは限られてしまいます。しかし、「Yワイひろば」で行う授業では、先生と一緒に実際にサイトをつくります。先日は、私が活動しているゴミ拾いボランティアのNPO法人「グリーンバード」という活動に協賛しているお店のマップをつくってもらい、実際にマッピングしてもらったものをサイト内で使用しています。子どもたちは家に帰って親に自慢して、結構、喜ばれたりしましたね。
 
――そうして地域に根ざしたコミュニティを生んでいくことが、持続可能な空き家対策につながっていくというわけですね。
 
河原:はい。細かいことかもしれませんが、この部屋で使用されている家具や食器類、冷蔵庫などの家電製品は、ありがたいことにほとんどが地域の方々からいただいたものです。そうして地域の方々と一緒に、この場をつくっていく。持続可能な仕組みをつくるには、地域に愛されて、ともに歩んでいくことが大切なのではないかと思っています。

本業が社会貢献につながる、というスキーム構築

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(独立して2年目くらいに、いきなり会社が倒産の危機を迎え、そのときの経験が今につながっている、という河原さん。)
 
――自然エネルギーを活用する太陽光発電の工事も、御社の重要な事業のひとつになりますが、この10年の間に、自然エネルギーに対する認識もだいぶ変わってきたのではないでしょうか。
 
河原:そうですね。10年前は、大きな企業の工事だけでしたが、ここ数年は個々の施設や一般家庭からの需要も一気に増えてきました。自分たちの電気は自分たちでつくろうということを当たり前に考える人が多くなってきた気がします。その変化の背景には、10年前に比べてコストが半額くらいになってきたということもあるでしょう。初期投資は少しかかりますが、今後さらにコストも安くなることが予想されるので、一般家庭にも導入するメリットは十分にあると思います。
 
この「Yワイひろば」にも蓄電できる太陽光発電を設置する予定です。ルートハウスのコンセプトに、地域に必要とされる家にすることがテーマとしてありますが、そのひとつの答えとして、私たちの事業のひとつである太陽光発電の技術を活用し、災害時でも電気の供給が途絶えない、地域の小さな避難場所としての蓄電機能を持たせます。
 
――地域のコミュニティスペースであると同時に、災害時には地域住民の助けとなる場所にもなる。空き家問題を解決することが、災害にも強いまちづくりという課題にも取り組んでいるわけですね。
 
河原:はい。私たちはSDGsの中でも、17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」ということを特に意識しています。実際にこの「Yワイひろば」のコンセプトも、空き家問題などを企業や大学、NPOなどと行政が一緒になって議論する、横浜市の「共創ラボ・リビングラボ」がきっかけとなり、そこでいろいろ出たアイデアから生まれました。これまではどちらかというと行政案件のトップダウンの課題が多かったのですが、僕らが関わっているリビングラボは、どちらかというとボトムアップ型で、地域の課題をしっかりと出し合って、それをいろいろな形でアプローチしたり、事業化していくことを目指しています。
 
――太陽住建のホームページには、「本業を通した地域貢献、他団体との連携を図っています」といった理念が書かれています。まさに今、お話いただいたルートハウスプロジェクトがそのひとつになると思いますが、そもそも河原さんはなぜ会社の事業と地域を結びつけることを事業の軸にしたのでしょうか?
 
河原:実は10年前に独立して会社を立ち上げてから1、2年くらいで倒産の危機がありました。小さい会社ということもありましたが、技術も需要もあるのに、仕事をもらえない。なぜこんな状況になってしまったのかを考えたときに、逆に小さな会社なのに地域の役に立っていない、地域住民の方々に必要とされていない、ということに気づきました。
 
事業を継続していくためには、社会の役に立つ、ということが前提にないといけない。必要とされることを続けていれば、自ずと声をかけてもらえるようになるのではないか。
 
そのように発想を切り替えてから、小さな一歩として、会社のまわりを掃除することから始めました。すると、町内会や地域の祭りに呼ばれるようになり、そのつながりから、少しずつ仕事をもらえるようになり、今につながっています。
 
――大手企業にはできない、地域に密着したサービスや取り組みは、家族経営も含めた小さなお店や会社、ひいては中小企業の強みでもあるとよく言われます。地域に根付かせる、ルートハウスプロジェクトのコンセプトは、太陽住建の歩みそのものでもあるわけですね。
 
河原:はい。私たちは、つながりの中でコトが生まれる、ということを一番大切にしています。つながりが増えていく中でいろいろなパートナーシップが生まれて、たくさんのアイデアもいただいて、それが事業の発展にもつながっています。さらに、リビングラボが私にとってまさに “知恵の場”で、そこでつながったパートナーシップが増えていくほど、事業を拡大していくことができました。
 
10年前は、自分たちがどうやって稼いでいくか、ということしか考えていませんでした。しかし、それではダメだということを社会に学ばさせてもらったと思っています。本業が社会貢献につながるスキームを構築することが持続可能な社会づくりにもつながる。その模索が、私のこの10年間であり、これからも続く私の仕事でもある、と思っています。
 
<編集・WRITER>サムライト

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