SDGsイベント 食と服の大量廃棄 今、何ができるのか

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(食と服の大量廃棄について語り合ったSDGsイベント)

 
便利で豊かで、モノや食べ物があふれている社会。その裏側では環境を壊し、誰かを犠牲にしていないだろうか。さらには子どもたちの世代にツケが回ることはないのか。SDGs(持続可能な開発目標)イベント「食と服 大量廃棄このままでいいの?――650万トンと10億着が毎年捨てられる日本 未来のために私たちができることとは」が7月2日、朝日新聞東京本社で開かれた。

 
パネリストは、アパレルやコンビニなど「大量生産・大量廃棄」の現場を取材し、多くの無駄の裏に潜む労働や環境への負荷など様々な問題点を浮き彫りにしてきた朝日新聞の藤田さつき記者と仲村和代記者のほか、雑誌「VERY」のモデルでコラムニストのクリス-ウェブ佳子さん、規格外の食品もおいしく調理して提供するフレンチ料理人の荻野伸也さん。SDGsでは生産者と消費者に対し、「つくる責任 つかう責任」(目標12)を掲げている。4人はこれまでの経験などを通じ、それぞれの立場から持続可能な社会の実現に向けた思いを語り合った。

着られない新品10億枚 「無理の上に成り立つ無駄」 仲村和代記者

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「いいものを安く」。消費者にとってこんなに魅力的な言葉はない。しかし、アパレル業界ではこれを実現するため、売れ残り覚悟で人件費の安い国で過酷な労働を強いて大量生産し、原価を抑えてきた。一方、そうやって作られた新品の服が誰にも着られないまま、年間10億枚も捨てられているとも言われている。こうした実態は、海外の労働問題ということや、服はリサイクルできるという意識などもあり、なかなか問題視されてこなかったという。

 
仲村さんはこんな実態を説明したうえで、「無駄というのは誰かの無理の上に成り立っているなと思う。働き方や資源など何かを苦しめながら自分が得をするのは居心地が悪い」と述べた。

 
では、どうすればいいのか。働く人は消費者でもあり、問題は根底でつながっている。仲村さんは「社会運動など特別な活動はできなくても、消費者としてお金をどこに使うのか意識し、変えていくことはできる」と指摘。「最近はエシカルやフェアトレードなどという言葉を耳にする機会が増え、ブランドとして評価されるという動きも出てきた。『いいものを安く』ではなく、『適正な価格で買うこと』が広がっていけばいいと思う」と会場に語りかけた。

「恵方巻き」問題の裏に商習慣 「消費者心理も影響」 藤田さつき記者

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食品廃棄の問題を長年にわたってテーマにしてきたという藤田さん。デパートの地下食品売り場などで売れ残りを捨てている実態を紹介してきた。食べられるのに捨てられてしまう食べ物。日本では年間650万トンにも上る食品ロスの問題をもっと身近に感じて欲しいという思いから取り上げたのが「恵方巻き」の大量廃棄だったという。

 
背景には過剰なノルマがあるとされ、取材ではコンビニの社員やオーナーから「自腹で買い取った」という証言も得た。

 
なぜこのように食品ロスが大量に出る事態に陥っているのか。日本特有の商慣習が影響しているとの指摘もある。

 
製造から賞味期限までの期間を3等分し、残り日数が3分の1を切ると商品を廃棄する慣例「3分の1ルール」のほか、品切れ状態を「販売機会ロス」ととらえ、それを避けるために多めに作っておく傾向、廃棄分はコンビニ企業ではなく店側が負担する「コンビニ会計」だ。

 
藤田さんはこうした現状について「常に品物が並んでいる状態を求める消費者の心理が影響している」と分析し、「消費者の意識が変われば商習慣そのものも変えられるんじゃないか」と話す。さらに食品ロス問題を研究する井出留美さんが食品ロスを減らすために提唱している「空腹時は買い物しない」などの10ポイントを紹介し、「消費者一人ひとりの動きが食品ロスを減らすことに大きくつながる」と訴えた。

「必要なもの好きな物だけ」 トレンドは持たない クリス-ウェブ佳子さん

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「断捨離」。もったいないという固定観念にとらわれた心を、ヨガの行法にならい、入ってくるいらない物を断つ(断行<だんぎょう>)、家にある不要な物を捨てる(捨行)、物への執着から離れる(離行)という教えの通りにものを減らし、生活に調和をもたらそうとする考え方だ。モデルとして活動し始めた約10年前、クリス-ウェブさんはこの言葉を聞いて「アパレルファッションは絶対に良くない方向に行くと思いました」と振り返った。

 
捨てることに罪悪感がなくなり、安いから捨ててもいい、安いから買うといった消費行動につながるからだ。消費者はSNSを通じ、流行に敏感だ。はやりでないものは捨てるのが当たり前になってきている。

 
クリス-ウェブさんは大阪生まれ。父親はよく「安物買いの銭失い」と言っていたといい、いいものを長く使うように教えられて育った。17歳のころに買ったカシミヤのセーターを今も娘が着ている。2人の娘には「安いから買うんじゃない。なんでそれが必要なのかよく考えて」と話しているという。

 
消費者は食べ物を口にする時、生産者などいろいろ気にしている。クリス-ウェブさんは「服も同じように考え、購入すべきではないか。トレンドに惑わされず、本当に必要なもの、好きなものだけを買う。持たないというのが一つのトレンドになる」。

規格外の食材加工で付加価値 売り切れごめんスタイル貫く 荻野伸也さん

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クリス-ウェブさんはインスタグラムで公開した食用の羊の皮革を使ったコートを披露した。英国の女性が食品産業から無駄をなくすために作ったといい、「リアルファーはバッシングされますが、これはされなかったんです」と打ち明けた。

 
続いてマイクを握った荻野さんは「僕も今、作っている最中。頂いたイノシシの皮を家で乾かしています。バッシングを受ける革と受けない革はどう違うのか知ることが大事。食品工場から出てくる皮は相当な量がある。牛や豚の皮を有効活用する取り組みにもう少し光が当てられるべき」と語った。

 
荻野さんは食材を仕入れていた農家で、規格外で出荷されず、山のように捨てられているニンジンやネギを見た。「土に戻すしかない」と聞き、疑問を抱いたという。「生産者から野菜を買い、現金を渡すだけでいいのか。料理人として出来ることは何か。そもそも料理人の仕事とは何なのか」。突き詰めて考えると、食材を加工して付加価値を付け、収入を得て農家に返してようやく経済が回っていく。料理人としての仕事や価値観はここにあると気付いたという。

 
現在、大手百貨店などで添加物を入れず、廃棄をなくすため当日売り切り、後は売り切れごめんという総菜店を営む。売れ残りは廃棄するのが常態化している中、商習慣にとらわれない型破りの店舗だ。しかし、荻野さんは感じている。「自分たちのスタイルを理解してくれるところが増えてきた。実際の行動で示していけば、少しずつ消費者心理に反映されていくのではないでしょうか」

 
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(持続可能な社会の実現に向かって様々な意見を披露するパネリスト)

 
4人はそれぞれ意見を述べ合ったあと、パネル討論した。例えば、飲食店で客が残したバターに関し、荻野さんは「優等生的には『お客さんが触っているので捨てます』ですが、僕は肉や魚を焼く時に使っている。みなさんも気になったら店や料理人の考え方をどんどん聞いた方がいい」とアドバイス。さらに最近、客に「虫が食った野菜を食わせるのか」と言われたエピソードを披露し、「虫が食った野菜もおいしい。そもそも虫が食わないような野菜なんて出さない。お客さんに嫌われても、自分のスタンスなので考えははっきりさせる」と話した。

 
<編集・WRITER>小幡淳一 <写真>曺喜郁

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