【SDGs全国フォーラム2019】日本各地から世界へ発信する「SDGs日本モデル」とは?(後編)

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2019年1月30日に神奈川県横浜市で開催された「SDGs全国フォーラム2019」。全4部構成、計9つのプログラムで構成された同フォーラムには、1200名を越える参加者が集まり、SDGsへの関心の高さを示すイベントとなりました。

 
ここからは、【第1部「SDGs日本モデル」宣言を採択】、【第2部「SDGs日本モデル」における自治体の役割】に続いて行われた、プログラムの模様を紹介します。

第3部 「SDGs日本モデル」に向けた金融モデルとビジネスの力

パネルディスカッション:21世紀型金融ビジネスモデルの構築

第3部は、『21世紀型金融ビジネスモデルの構築』と題したパネルディスカッション。金融の視点から、SDGsに向けて日本が取り組むべき方向性が提言されました。モデレータは、河口真理子・大和総研研究主幹がつとめました。

 
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(河口・大和総研研究主幹)

 
「46億年前にできた地球から、人間が生まれて、今の経済の形になったのはまだ300〜200年前くらいのこと。今の“地球より経済優先”という私たちの間違った考えを逆転させなければいけません。SDGsとは、『経済ファースト社会』を『地球ファースト社会』にシフトさせることではないでしょうか。そのためには、意識を変えるだけでなく、具体的な変化が必要です。金融は、そのエコシステムをつくる土台だと考えます」(河口氏)。

 
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(金井・三井住友信託銀行フェロー役員チーフ・サスティナビリティ・オフィサー)

 
金井司・三井住友信託銀行フェロー役員チーフ・サスティナビリティ・オフィサーが、「サステナブル金融を通じて目指すインパクトの創出」と題し、金融業界の現状と、金融の役割、銀行業界の動きを説明。とくにインパクト金融(社会・環境課題の解決に主体的・直接的な影響を及ぼすこと)について、サステナブルな金融を目指す流れを解説しました。

 
「世界の金融業界において、『国内外のESG投資市場規模』は230兆円以上と一大市場です(ESG投資=環境・社会・ガバナンスに力を入れる企業への投資)。日本でもやっと最近注目されてきました。SDGsの解決のためには、お金が必要です。言い換えれば、いかにお金を集めるかという仕組みづくりが重要。欲のためでなく、SDGsのために金融資本主義をうまく機能させるために、継続的に達成状況が見えるような透明性が大事です。銀行業界も遅ればせながらですが、ようやく取り組み始めたところです」(金井氏)。

 
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(松原・りそな銀行アセットマネジメント部責任投資グループグループリーダー)

 
続いて、松原稔・りそな銀行アセットマネジメント部責任投資グループグループリーダーが、「投資家から見た『SDGs/ESG投資』」をテーマに、長期投資家がSDGsやESGをどう捉えていくかという今後について発表しました。

 
「年金を使って投資運用をしているので、お返しするときに良い未来になっていればと願っています。具体的には、人口減少・高齢化・過疎化をふまえ、企業の持続的な価値を高めていくためのお手伝いをしています。たくさんの企業が、『社会に貢献したい』『市民になんとか幸せを届けたい』という理念を掲げています。そのためには、持続可能な社会へ最善の取り組みが必要です。ネイティブアメリカンの言葉に、こんなものがあります。『私たちは、地球を先祖から受け継いだのではなく子どもたちから借りているのです』。このメッセージを私は大切にしているのですが、長期的にはトレードオンになるようにすることが、SDGsを推進していくうえでのエンジンになると考えています」(松原氏)。

 
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(水野・TREE代表取締役)

 
続いて、水野雅弘・TREE代表取締役。TREEは、2016年に、世界で起きている地球環境問題を映像で発信するために『SDGs.TV』を立ち上げました。中小企業のSDGsに対する認識が低いと考え、まずは対話をするために、映像によって多様な意見を引き出そうとしています。

 
「SDGs目標達成には97兆ドルが必要です。新たな市場や経済を優先するのではなく、ポイントは社会・環境・経済につなげること。つまりお金の流れを変えるのです。これを実現するために、慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボの蟹江憲史教授と『xSDGコンソーシアム 金融プラットフォーム分科会』を立ち上げました。80%の中小企業がSDGsを理解していないながらも、知らない間に取り組んでいることを可視化しようと、中小企業のプロジェクトをSDGsの169のターゲットと紐付けし、貢献度をアセスメントできる仕組み作りを進めています。世界を支えてきた中小企業に、世界のためのSDGsを理解してもらうことを目的として、対話をしているのです。それによって、ビジネスや地域経済の可能性が見えてきます」(水野氏)。

 
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モデレータの河口氏が、「自治体や公共機関へ期待すること」を問うと、「自治体と金融と市民が一緒になることで、自治体が大きくオーガナイズし、パートナーシップをつくっていく」といった意見がパネリストから述べられました。また、「金融としてやっていきたいこと」について、「アセスメントのプラットフォームを立ち上げて、事業を可視化する」(水野氏)、「子どもたちが生まれて来てよかったなと思える社会づくり」(松原氏)、「ポジティブインパクトのための新しい仕組みを作りたい」(金井氏)、といった案が示されました。

 

企業からの事例紹介

第3部ではさらに、企業からの具体的なアプローチとして、特別協力の株式会社ファンケル、また、第2回ジャパンSDGsアワードを受賞した企業から具体的な事例が紹介されました。

 

株式会社ファンケル
臼杵ひろみ・ファンケルCSR推進室長

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無添加化粧品や健康食品を扱うこともあり、女性の活躍が目覚ましいのが特徴です。従業員の約70%が女性。育休・産休後の復帰率は100%です。また、障害者雇用や障害者向けセミナーにも力を入れ、2018年6月にはサステナブル宣言も発表しました。最近は、社員へのSDGsの勉強会などもおこなっています。

 

株式会社日本フードエコロジーセンター
高橋巧一・代表取締役

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食品ロスがテーマ。余った食品への年間廃棄物処理費は2兆円で、8000億円以上もの税金が使われています。この廃棄食品を飼料にすることで、食品会社と畜産会社の両方から費用を得て、かつ税金も軽減できるというビジネスモデルを実施。継続性の高い取り組みとして、ジャパンSDGsアワードを受賞しました。

 

株式会社大川印刷
大川哲郎・代表取締役

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印刷会社に勤務し胆管がんを発症したというニュースを受け、印刷物の環境配慮をしてきました。社内でSDGsにも関連するワークショップをおこなうことで、7つのプロジェクトが発起。日本唯一のゼロカーボンや、太陽光パネルの実装、石油をつかわないインキの使用、社員の家族への勉強会などが評価され、ジャパンSDGsアワードを受賞しました。

第4部 「SDGs日本モデル」による次のライフスタイルと次世代からのメッセージ

エシカルで健康的な暮らしが見えてくるクロストーク

第4部では、『エシカルで健康的な暮らしがみえてくる』をテーマに、4名の登壇者が身近な日常生活での体験を引用しながらSDGsの近未来像を語り合ったり、次世代を担う高校生たちが、SDGsに向き合う気持ちや自分たちのアイデアを発表しました。

 
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(黒田・CSOネットワーク事務局長/理事)

 
まず、黒田かをり・CSOネットワーク事務局長/理事が「皆さんにとってSDGsとは?」と語りかけました。

 
末吉里花・エシカル協会代表理事は、「厳しいことを言えば、諸刃の剣。可能性はすごく大きいけれどリスクもある。使い方次第でしょう。『心の羅針盤』とも言えます」。

 
また、上田壮一・Think the Earth理事は、「SDGs自体がソーシャルデザインとして優れていると思います。自発性をうながし、『誰も置き去りにしない』というメッセージに示されるように、社会のすみずみにまで配慮することが、最初から含まれています。末吉さんが言ったように諸刃の剣という面もありますが、それも含めてとても良いソーシャルデザインだと思います」と述べました。

 
蟹江憲史・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授は、「大きなチャレンジ。これだけの規模のものにすべての国が同意したことは初めてで、すごいこと。目指す答え(未来)はあるので、どうやって解くかを考える問題集ですね。やり方は自分で考えなきゃいけない」としました。

 
「ワクワクする未来思考のチャレンジですよね」(黒田氏)。

 
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(末吉・エシカル協会代表理事)

 
一方、末吉氏からは、「最近購入したエシカルなものは?」との質問が投げかけられました。

 
「有機JASつきの商品を買っています。お米は震災後は東北の有機米、ほかにもチョコやコーヒー。ヨーロッパだと専門のお店も多いけれど、日本はあまりないんですね」(黒田氏)。

 
「難しい質問ですね。買ったもの、受けたサービスがすべてエシカルになる世の中になったらいいですね。購入したものではないんですが、震災をきっかけに出会った宮城県大崎市の市職員から、2012年に殺処分になる可能性がある捨て猫の写真を見せられました。生後2ヶ月の子猫が2匹。今うちにいます。その子たちを見るたびに東北のことを思い出します」(上田氏)。

 
「実は、家を購入途中です。SDGsを意識した『SDGsハウス』。材木なども、持続可能な森林に貢献できるものなのかなどSDGsのコンセプトを考えながら設計しています。けれども、家族の意見や条件などローカル状況を大事にすると、すべてSDGsにとって理想どおりとはいかないし、コンセンサスをとりながら進めています」(蟹江氏)。

 
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(蟹江・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

 
蟹江氏からは、「プラスチック問題などが時事問題として挙がっています。つぎに、『来る』であろう課題はなんだと思いますか?」と問いかけが出されました。

 
「気候変動ですね。地球上の生き物が持続的に生きられないと、他の大きな問題も解決できないでしょう。エシカル協会でも、この気候変動の問題を解決するひとつの行動としてダイベストメント(投資撤退)をしたいと思いまして、2年前に口座を移しました。気候変動という大きな枠組みで認識し、判断しています」(末吉氏)

 
「僕も気候変動です。2013年頃から水の災害が増えてきました。日本は地震が身近ですが、これからの災害は気候災害が増えるでしょう。自治体を越えて連携をとらなければいけません」(上田氏)。

 
「私も気候変動と言いたいところですが、おふたりが言ったのであえて私はジェンダー平等と多様性を挙げます。日本のジェンダーギャップ指数は149ヶ国中110位。自治体も、企業も、家庭も、地域コミュニティでも意識を変える必要があります。また、多様性も問題。地域の外国人労働者も増えています。多様性とは、いろんな人がいるということではなく、それを受容していくことです」(黒田氏)。

 
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(上田壮一・Think the Earth理事)

 
そして最後に上田氏から、「2030年に向けて、さらに、その先の未来を考えたとき、次世代に期待することは何でしょう?」という質問が投げかけられました。

 
「若い人に怒られるんです。『私たちに未来を押し付けてどうするんですか?』と。一方で、上の世代は『若い人は海外にも出ないし内向き思想』などと言います。そんなとき、このフォーラムの総合プロデューサーである川廷昌弘さん(=神奈川県SDGs推進担当顧問)に言われた『質のいいバトンを渡していく』という言葉が響きました。次の世代に託したい。全部は難しいかしいかもしれないけれど、知識やスキルは受け渡すので、一緒に世界を変えていこう、と言いたいです」(末吉氏)

 
「僕は、次の世代には突拍子もないことを考えて欲しいですね。大人は、今あるものを『次にどうしよう』と考えちゃう。でもSDGsは突拍子もないことを実現できることがある。我々の役割は、その突拍子のなさを寛容さで受け入れることです」(蟹江氏)

 
「大人は頭で考えるけれど、若い人は『食べ残しは学校で堆肥化していました』というように、生活に染みついています。大人がたすきを渡すことは大事ですけど、大人も若い人から学ぶことが重要だと思います」(黒田氏)

 
「SDGsは世界を変革しようという呼びかけですから、若い人の柔軟な想像力や創造力がとても重要です。大人には、その発想を受入れ、実現できる環境を作っていく懐の深さが求められていると思います」(上田氏)

 
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「自治体が肩肘を張るのではなく、いろんな発想があっていい。そういう考え方を吸収していける仕組みや雰囲気をつくっていけたら、それ自体が多様な社会を作るベースとなるのではないでしょうか」(蟹江氏)。

 
「パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードさんにこう言われたんです。『今あなたが活動をやめたら、あなたは問題の一部になる。活動を続けたら、あなたは解決の一部になれる。なにを言ったり思ったりするかではなく、なにをするか』。行動が社会を、世界を変えていくんですね」(末吉氏)。

 
「SDGsの重要なところは、自治体や企業のどこかひとつだけで問題が解決するわけではないところ。異なる人が一緒にやっていくための共通言語がSDGsです。多様な主体のパートナーシップを築き、連携するための仕組みづくりが重要です」(黒田氏)。

 
上田氏からはさらにこんなエピソードが。

 
「都立高校の入江遥斗くんの言葉を引用します。『SDGsは自分が世界とつながるパスポートだ』と彼は言いました。SDGsを通して自分の世界が広がり、世界と話ができるようになったという彼に共感しました。SDGsをツールだと考えたときには、いろいろな人たちと新しく出会います。すべての人がチャレンジできる可能性に満ちたものです。若者に後押しされて、自分もそういう生き方をしたい」。

 

次世代からのメッセージ

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こうした4人のクロストークを受けて、フォーラム最後のプログラムへ。

 
「SDGs日本モデルによる次のライフスタイルと次世代からのメッセージ」として、湘南学園中学校・高等学校の生徒と教諭が登壇し、彼らのSDGsへの取り組みを紹介しました。

 
生徒のひとりは、「SDGsには、それをとっかかりに他の問題について深めることもできる力がある。それは、我々が今生きている現代社会について学ぶことです」とスピーチ。

 
現実は、「成績に関係ないじゃん」という生徒がほとんどだ、といいます。しかしそれは今、自分たちが生きている高校生という枠の中での価値観でしかなく、卒業したら社会で生きていかなければならない。その社会で大切なものがSDGsであることを考えると、中学生、高校生からSDGsについて学ぶことは自分たちの未来を豊かにすることにつながり、きっと役立つ、と考えているそうです。「SDGsの達成に向けてわれわれができること。それはここにいる仲間が世代関係なく、むしろそれぞれの立場、世代の特性を生かして協力していくことが大事だと思いました」。情熱的なスピーチは大きな拍手を受けました。

 
最後に、今回のフォーラムの総合プロデューサーを務めた川廷昌弘・神奈川県SDGs推進担当顧問が登壇し、次のように結びました。

 
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(川廷・神奈川県SDGs推進担当顧問)

 
「『SDGs日本モデル』宣言は、決して自治体だけがやるものではなく、多くの方と協働するための宣言になっています。政府、企業、各団体、官民の連携だけでなく、世代間を越えたパートナーシップが未来を変えます。大人が次世代に質の良い『バトン』を渡すということはどういうことなのか。それは本気で、きれいごとで勝負できる社会をつくって、こどもたちに渡さなければいけない、ということです。今、高校生が力強いメッセージを痛いほどわれわれに投げかけてくれました。彼らのメッセージを真摯に受けとめて、あらためて彼らの社会的出番をつくるために、私たち大人は、きれいごとで勝負できる社会を彼らに準備しなければいけない責任がある。そのためには、質の高いバトンの意味をひとりひとりが考えて、この『SDGs日本モデル』宣言を一緒に進めていきましょう」。

 
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事例紹介から提言まで、SDGsに関するさまざま話題が飛び交った「SDGs全国フォーラム2019」。各地域でそれぞれ取り組んでいたSDGsが「線」で結ばれ、より大きなムーブメントとなって全国へと普及・拡大していく。高校生から発信された「ここに参加されたみんなが仲間」という言葉に象徴されるように、今回のフォーラムが起点となってSDGsがさらに推進されることを参加者の皆さんは強く実感できたようです。

 
<WRITER>河野桃子 <編集>サムライト

 
【SDGs全国フォーラム2019】日本各地から世界へ発信する「SDGs日本モデル」とは?(前編)

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