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企業はSDGsを通して国際協力のアクターとなり得るか~SDGs書籍の著者に聞く第6回~

2021.06.11
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

3月18日に最終回を迎えたリレー形式のオンラインイベント「SDGs書籍の著者に聞く」(主催:朝日新聞社/共催:SDGsジャパン)。最終回である第6回のテーマは「国際協力」だ。本セミナーには、聖心女子大学教授でSDGsジャパン共同代表理事の大橋正明氏、ARUN代表の功能聡子氏、アジア経済研究所・上席主任調査研究員の佐藤寛氏が登壇した。

SDGs達成のために必要な資金を投資で賄う

SDGsは「誰ひとり取り残さない」ことを目指す目標だ。SDGs達成のためのキーワードとして、功能氏は「Inclusion(誰ひとり取り残さない)」「Innovation(イノベーション)」「Sustainability(持続可能性)」を挙げる。従来取り残されやすかった女性や難民なども包含して社会全体で発展していくためには、イノベーションが欠かせない。しかし、新たなイノベーションを生み出すには、多額の資金が必要だ。功能氏によれば、およそ2兆5000億ドルが不足しているという。ここで登場するのがESG投資だ。

ESG投資では、投資家が「環境(E)」「社会(S)」「企業統治(G)」などの非財務情報で投資先を選定する。たとえば、地球温暖化対策など環境に配慮しているか(環境)、人権に配慮したり、労働環境を改善したりしているか(社会)、法令を順守しているか(企業統治)、といった具合だ。他にも、企業の社会的インパクトを評価するインパクト投資がある。功能氏が代表を務めるARUNでは、社会課題や環境問題を解決する技術やサービスを提供するスタートアップ企業を発掘し、社会的インパクトを評価した上で、投資先を選定する。「社会課題の解決に取り組む企業とパートナーシップを組むことが日本でももっと盛んになっていってほしい」と功能氏は話す。

SDGs達成のためのキーワード

SDGsを通して、企業を国際協力のパートナーに

続いて話が及んだのは、SDGsと企業の関係性についてだ。佐藤氏は「企業はSDGs達成のための重要なアクターとなり得る」と主張する。同氏によれば、企業がSDGsに取り組む入り口は二つある。一つ目は、サプライチェーン上で人権侵害や環境破壊などの問題があった場合に、NGOから名指しで批判されることを避けるためだ。たとえば、過去に環境系NGOグリーンピースがネスレ(コーヒーや乳製品を製造販売するスイスの食品・飲料会社)を批判、不買運動を展開したケースがある。

二つ目は、企業がSDGsに取り組むと企業自身にメリットがあるためだ。SDGsでは、たとえば未電化地域で生活する人々など、従来企業がターゲットとして捉えていなかった人もビジネスの対象となり得る。そのため、従来のビジネスとは異なる市場にアプローチでき、そのビジネスが成功すれば企業の利益に直結する。

どちらの入り口であっても、鍵となるのはNGOだ。前者はリスク管理として、後者は、特定の市場に関する知見を持つNGOがいれば、ビジネスパートナーとして組むことが十分に考えられる。どちらにせよ、SDGsを通してより良い世界を実現するために、企業はNGOと互いに手を取り合うことが必要となる、と佐藤氏。 企業とNGOは活動目的が根本的に異なる。企業は利益追求のため、NGOは理念追求のために活動し、従来両者が関わる機会はほとんどなかった。しかし、今後はSDGsを共通言語としてより良い未来をつくっていくために共創していかなければならない。ここで佐藤氏は「パートナーシップを実現するための『対話の作法』を作り上げていく場が必要だ」と訴える。対話の作法を作り上げ、企業とNGOが共創できれば、途上国を含む社会課題の解決につながり、SDGsが望む未来に近づく、と語る。

企業がSDGsに取り組む二つの入り口

SDGsは「危機の万能薬」でも「大衆のアヘン」でもない

大橋氏は「SDGsは欠陥や問題の多い目標だ」と指摘する。まず、SDGsは外交文書であるため、なぜこの世界が「持続不可能になったか」が示されていない。原因が分からないままどこまで根本的な改革ができるのか、疑問が残る。また、SDGsそのものに法的拘束力はなく、あくまで努力目標だ。各国や各企業がSDGsの実施方針や目標を策定できるため、柔軟性は高いものの「できることだけ取り組めば良い」という主張を許すことになる、と指摘する。

そして、SDGsは原発や核兵器、軍拡、難民、国家暴力といった重要な問題には触れていない。SDGsではこうした問題に触れなかったからこそ合意できたといえるかもしれないが、こうした問題に取り組まずして持続可能な発展はあり得るのか、と疑問を投げかける。 SDGsは資本主義の改良を求めるものだ。大量生産・大量消費社会や環境破壊、分配の不平等など、さまざまな問題を抱える資本主義を、資本主義自体がどこまで改良できるのかが問われている。しかし、世界が抱える問題は資本主義にまつわる問題だけではない。SDGsを単に資本主義の問題と捉え、DX(デジタルトランスフォーメーション)や技術のみによって社会課題を解決しようという思考に陥れば、持続可能で平和な世界は達成し得ない。大橋氏は「SDGsがアヘンに堕するリスクに対して警鐘を鳴らすとともに、SDGsが問題の多い資本主義をより良くする可能性に賭けたい」と主張する。

それでもなお、SDGsが資本主義をより良くする可能性に賭けたい

今後の日本の国際協力のあり方

最後に、今後の日本の国際協力のあり方について、登壇者がそれぞれ意見を述べた。

大橋氏によれば、「日本政府や企業は、相手国の問題は相手国が解決すべきと考える傾向が強い」という。特に企業はサプライチェーンなど、国境を越えた問題に対して自分たち(企業)が責任を取らなければならないという意識を強く持つべきである。今後の日本の国際協力のあり方については、「人道的支援など国益を一切考えない純粋な国際協力と、ある程度国益や経済的利益を追求した国際協力の2種類に分け、日本としてどれくらいの割合で両者を行うかを議論していくべきではないか」と投げかけた。

功能氏も「現在の日本の国際協力は、まず国益に資さなければならないとされているのが残念である」と述べた上で、「今後の国際協力のあり方を考えるにあたっては、SDGsのキーメッセージである『誰ひとり取り残さない』をどのような視点で考えられるかにかかっている。『誰ひとり取り残さない』を考えるためにはまずSDGsについて知る、対話することが第一歩になる」と主張した。 佐藤氏は「日本政府は、企業を含めたさまざまなアクターがSDGsに取り組むよう後押ししているが、企業はそれを活用し、途上国の抱える問題やサプライチェーン上の人権侵害リスクなどに詳しい『社会開発の専門家』を企業に置いたらどうか」と斬新なアイデアを提示する。社会開発の専門家は必ずしも公的機関や援助機関に属さなければならないわけではない。サプライチェーンマネジメントを通して、国境を越える倫理観を身に付けた社会開発の専門家が企業の中にいること、社会開発の専門家が企業の中で活躍できるようになること、そのためには投資家や消費者がそれを応援するようなしくみになっていることが必要だ。佐藤氏は「国際協力のアクターとしての企業に期待したいし、そのためにSDGsが有効なツールとなり得るのではないか」と締めくくった。

登壇者によるSDGs書籍はこちら▼
「SDGsを学ぶ :国際開発・国際協力入門」高柳彰夫・ 大橋正明(編)(法律文化社、2018年12月、税込み3200円)

「60分でわかる! SDGs 超入門」バウンド(著)、功能聡子・佐藤寛(監修)(技術評論社、2019年11月、税込み1080円)

writer:鈴木 麻由 取材協力 NPOメディアganas

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