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SDGsを企業に浸透させるために必要なこと~ SDGs書籍の著者に聞く第3回~

2021.05.10
目標8:働きがいも 経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標12:つくる責任 つかう責任
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsの現状や課題について語る「SDGs書籍の著者に聞く」と題したリレー形式のオンラインイベント(主催:朝日新聞社/共催:SDGsジャパン)。3回目となる今回は「ビジネス」をテーマに、SDGsを企業に浸透させるために不可欠となる視点や取り組み方について、立教大学特任教授、不二製油グループ本社CEO補佐の河口真理子さん、デロイトトーマツコンサルティング Specialist Lead (Sustainability)の山田太雲さんの2名が語り合った。

SDGsは生活者の視点が不可欠

「生活者の視点がないと企業にSDGsは浸透しない」。こう話すのは「SDGsで『変わる経済』と『新たな暮らし』2030年を笑顔で迎えるために」を出版した河口さん。今回著書の中で一番伝えたかったこととして、消費者の視点を強調した。いくら企業が持続可能な製品を作っても購入者がいなければ、フェアトレードやエシカル商品は成り立たないし、社員のモチベーションも下がる。その壁を乗り越えるのは、高くてもいいから購入したいという消費者の声。その声が社内でSDGsに意欲的な社員を後押しし、企業がSDGsに積極的になれば、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する投資家も、その企業を評価できる。その結果、単なるコストと軽視されてきたCSR(企業の社会的責任)事業も強化できる。こうした好循環が望ましいという。

経営の在り方自体が問われている

「SDGsはいまの経営の在り方や収益モデル自体の妥当性が問われている。社会や環境におしつけてきたコストを内部化することで評価される、新しい市場作りが求められる」。こう説明するのは「SDGsが問いかける経営の未来」を出版したチームの一員、山田さん。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の時代には、国境を越えて自由に貿易や資本移動を行う、利益重視のグローバル資本主義そのものは問われていなかったという。その活動による環境や社会への影響は考慮されず、得た利益の一部をODA(政府開発援助)やCSRという形で途上国の人たちに還元すれば、あまり問題視されなかった。しかし、SDGsが提唱する持続可能な社会を実現するには、よい製品やサービスを生み出して利益を得ることは最終目的にならない。グローバル資本主義では環境や社会へ負荷がかかる。この問題を解決する経営がいま求められるという。

「新しい市場を形成するには、業界団体やNGO、政府のようなステークホルダーとの連携が大切」と山田さん。また「社会課題解決能力やルール(秩序)形成力が、新しい市場でリーダーシップを取るために必要だ」と続ける。消費財メーカーのユニリーバは、洗剤などに使用されるパーム油について国際NGOの世界自然保護基金(WWF)より批判を受けた。しかしその意見を取り入れることで業界全体が準拠すべき基準へと昇華させた。その結果、他社が調達しにくい構造を作り出し、市場での優位性を高めることができたという。

パーム油の持続可能な調達

企業にSDGsを浸透させるには若者の意見が必要

「SDGsを社内に浸透させるには、多面的に物事を見られる社員を増やすことが近道」と河口さん。定時退社の導入や副業、NGOでの活動を認めるなどが考えられる。親としての自分、地域メンバーとしての自分、社員としての自分など、多様な立場、経験、価値観を持つ社員の数が増えることが鍵となる。「2030年に責任を持つ人に積極的に考える機会を与えて、40、50代はサポート役に回るといい」と考えを示す。

最近小学校では、輸入した食料を自国で生産すると仮定したときに必要と推定される水(バーチャルウォーター)に関する授業が行われている、と河口さん。例えば一つのハンバーガーを作るためには、牛肉45g、パン45gが必要だが、牛肉には927リットル、パンには72リットルの水が使われる。500ミリリットルのペットボトルで約2000本だ。この授業を通して子どもたちはSDGsを学んでいる。

こうした学びを進める中高生は、実際に経営層が悩むサステナビリティ問題に取り組んでいるという。その結果、「とにかく質問がすごい」と河口さんは言う。サステナビリティをどうするか? ロビイング活動をどう行えばいいか? どうしたら無関心の人にSDGsへの関心を持ってもらえるか? 生徒からの質問が止まらないという。「10年後に彼らが加わると思うとギョッとしませんか」と河口さんは問いかけた。

「欧米では、若い従業員が経営層を非難し、経営層を突き上げるケースもある」と山田さん。日本でも、グローバルに展開する、とある企業では、各地域の次世代リーダー候補が集まって、サステナビリティを経営戦略に絡める理由や、方法、戦略を考えて、経営者に進言しているという。「トップも刺激を受けるし、若手もエンパワーされる」と話す。 こういった取り組みは増やすべきだが、実際、SDGsについてコンサル会社に相談にくる大半はCSRやサステナブルの担当部署で権限も予算も限られている。「彼らは自分たちの部署だけで解決しろと言われてくるが、経営モデルや収益モデルを変えるには経営層の理解が不可欠だ」(山田さん)

SDGsとコーヒー、SDGsと工事会社

オンラインイベントでは多数の質問が寄せられた。中には、コーヒーとSDGsの関係性、工事会社のSDGsの取り入れ方など具体的な質問もあった。

コーヒーとSDGsの関係について、「気候問題が進むと(生産に)適した土地が少なくなる。その結果数十年後にはコーヒーが飲めなくなるかもしれない」と山田さん。気候変動を止めるためには、余分な電気を消すなど一人ひとりの取り組みが必要になるが、この問題に積極的に取り組む政治家を選ぶと影響力が大きいという。また河口さんは「レインフォレスト・アライアンスやバードフレンドリーが認証する環境配慮型コーヒーを選ぶといい」と話す。少し値段は高いが、消費者が簡単にできることだという。 工事会社がSDGsを取り入れる方法は沢山ある、と二人は話す。「車を洗浄する時の汚水処理の仕方や燃費のよいルートを走ることなどを考えるとよいのでは。社員に対しては、男性が多い会社でも女性や一人親家庭の人が働きやすい環境づくりや、外国人へのサポートなどが大切だ」と山田さん。「工事現場は環境に負荷がかかるが、大手ゼネコンはゼロエミッション(廃棄物をゼロにする試み)を取り入れて、細かくゴミを分別している」と河口さん。「他にも人権問題も考慮すると、下請け会社の仕事環境が劣悪になっていないか確認する必要があるのでは」と続けた。

環境配慮型コーヒーを選択するなど、消費者が手軽にできることはある

最終的には「地球ファースト」の思考が必要

「SDGsを浸透させるには、最終的には地球ファーストに切り替える必要がある」と河口さんは強調する。「風力発電もメガソーラー(大規模太陽光発電)も結局は人為的な環境対策。(対策しても)プラスチックも分解はされない。地球の生態系の分解プロセスからはみ出ているものはずっと残って損害を与えるし、次の課題も出てくる」と力説した。

新型コロナウイルスは、経済社会活動を停滞させ、私たちの生活に影響を及ぼしている。今後も人類は未曽有の危機に直面するだろう。どんな危機にさらされても「持続可能な社会」を実現するために、私たちはいま地球に試されているのかもしれない。

writer:酒井 里江子 取材協力 NPOメディアganas

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