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コルクの再利用で身近な循環を生み出す 「TOKYO CORK PROJECT」

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コルクというと、ワインの封をしているものというイメージを持っている人も多いはず。実はこのコルク、シャトルや家の断熱材、車のエンジン、ダムや橋脚の一部など、私たちの知らないさまざまなところでも使われているのをご存知でしょうか?

 

遮音性、耐水性、断熱性……魅力の詰まったコルク

コルクの中は蜂の巣のような構造になっており、空気をたくさん含んでいるのでとても軽く、遮音性や耐水性にも優れています。特に注目すべきは、高い断熱性。炭化しても断熱性を失わず、宇宙の環境にも耐えられるコルクは、建築材としても適した素材なのです。

 
そもそも、コルクが生まれたのは地中海。19世紀に日本に入ってきてからは、主に船着き場の浮きや、船で運ばれる動物の寝床などとして使われていました。役目を終えたあとは加工され、薬品のビンの蓋などに使用されていたといいます。コルクは実は昔から、サステナブルな使い方をされてきた素材でした。

 
そんなコルクですが、近年ではなんと、東京都だけで年間600トン以上が廃棄されてしまっています。日本はコルクの原産国ではないため、ワインのコルクはどうしても輸入に頼らなければならず、結果的にエネルギーやマイレージの負担も大きくなってしまっている……という現状があるのです。

 

トレードオフを解決する「TOKYO CORK PROJECT」

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今回ご紹介する「TOKYO CORK PROJECT」は、そんな、廃棄されてしまうコルクにスポットを当て、さまざまなプロダクトに生まれ変わらせている素敵なプロジェクトです。

 
「TOKYO CORK PROJECT」代表の北村真吾さんは、不動産業、飲食業を経て今のプロジェクトを立ち上げました。不動産業でも飲食業でも、常に廃棄物やフードロスなどのトレードオフが気になっていたと言います。

 
「飲食業に携わっていたときのお店はワインをたくさん提供するところだったのですが、コルクを1ヶ月間貯めてから捨てるという習慣があったんです。そのときに、まとまったコルク栓の量を目の当たりにして衝撃を受けました。当時はワインブームで、ワインバーが次々とできていた頃。外食産業の方に協力していただきコルクの再利用ができれば、新しい取り組みになるんじゃないかなって思ったんです」
そう北村さんは、プロジェクトをスタートしたきっかけについて話します。

 
2011年、お店を1店舗ずつ回って飛び込みで協力を仰ぎに行った北村さん。関心を持ってくれるお店は多く、プロジェクトはどんどん育っていきました。現在は、デザイナーや営業担当の方を含め4人で運用しています。

 
ph6プロダクトの中には1つひとつていねいに手づくりされているものも。回収したコルクはまとめて工場に運ばれ、分別、洗浄、粉砕、圧縮されます。板状に加工されたコルクは、TOKYO CORK PROJECT本社に運ばれ、さまざまな製品にデザイン・加工されるのです。詳しいプロセスはこちら

 
「回収できているコルクの量はまだ微々たるものですが、月間およそワイン5万本分が集まります。現在はその95%をリサイクルできている形です」と、北村さんは話します。

 
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東京で500店舗、全国で750店舗が提携し、現在およそ315万点、1900kg分のコルクが集まっています。(2017年11月現在)今は運送代行に回収してもらっているところを、来年からはワイン流通業者に協力してもらい、納品の帰り便を利用して回収する予定。提携店舗一覧はこちら

コルクをもう一度暮らしの中へ

TOKYO CORK PROJECTで集まったコルクは、鍋敷きやコースターなどのテーブルウェアや、子ども用の積み木のおもちゃなどに加工されます。また、これまでのコルクボードのイメージを変えるような、自由に貼ったり剥がしたりできる壁材も新しくリリースされました。自分好みにカスタマイズでき、汚れても部分的に交換できるという優れものです。

 
ph5コルクを使用した壁材は、さまざまな形にデザインが可能

 
ph8コルクでつくられた子ども用の積み木

 
断熱性、遮音性、耐水性に優れ、さらに軽量で抗菌性もあり、多面的な機能を持つコルク。目立たないけれど、縁の下の力持ちのような存在です。そういったコルクのよさをもっと多くの人に知ってもらいたい、と北村さんは言います。

 
「今の時代はグリーンコンシューマー(※)の方も増えて、作り手も売り手も意識が変わってきているように感じます。今は天然素材が環境負荷のある素材に取って代わられているけれど、同じ特性を持っているのであれば、もっと自然素材のポテンシャルを伝えていきたい。それをみなさんに見せていくことが大切なのかなと思っています」

 
※グリーンコンシューマー=環境負荷の少ない商品の購入やリサイクルなどにも関心が高い消費者

 
ph3商品第1号のコルクを使った椅子は、北村さんが一番思い入れがあるプロダクトだそう。

 
ph4創業100年を迎える環境備品ブランド「BUNBUKU」と俳優の伊勢谷友介さん率いる「REBIRTH PROJECT」とのコラボレーションで生まれたスチール製のゴミ箱。蓋に再生コルクを使用しており、ゴミ箱以外にも、ベジタブルストッカーやタオル入れ、椅子としても使えます。

 
 
テーブルの上で廃棄されたものを、再びテーブルウェアとして再生させる。その小さな循環をつくれるのがコルクのよさだと北村さん。身近にそのような循環があることで、たくさんの人がグリーンコンシューマリズムに関心を持ってもらうためのひとつのきっかけになってほしいと北村さんは語ります。

 
「今後は、金型を使った立体的なプロダクトや、ペット用品といった新しい分野のものにもチャレンジしていきたいですね。フードロスや廃棄などのシリアスな問題に真正面からぶつかっていくというよりも、協力していただいている店舗さんや同じマインドを持つコミュニティの人たちと一緒に、“斜め”から楽しく問題に取り組んでいける何かをつくっていけたらいいなと思っています」

 

「つくる責任 つかう責任」を!小さな工夫でコルクを再生させる

国連が2015年に採択した開発目標「SDGs」の中には、資源の使いすぎや有害物質の廃棄などによる環境破壊を防ぐ「つくる責任 つかう責任」も含まれています。

ふと周りを見渡せば、コルクのように再利用ができるものは、そこここに存在しています。一見ゴミになってしまうようなものでも、小さな工夫によって新たな命を吹き込むことができる資源は、意外と身近にたくさんあるのではないでしょうか。

図12
目標12:つくる責任 つかう責任
・毎年、13億トンの食料が無駄に捨てられています。
・全世界の人々が電球を省エネ型に変えれば、合計で年間1,200億米ドルが節約できます。
・2050年までに世界人口が96億人に達した場合、現在の生活様式を持続させるためには、地球が3つ必要になりかねません。
・10億人以上が依然として、真水の供給を受けていません。
(国連広報センターのプレスリリース<2015年9月17日>より抜粋)

 
 
「SDGs」について、詳しくはこちら:SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり

 
 
<お話を聞いた人>
北村真吾(株式会社GOOD DEAL COMPANY 代表取締役)
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1983年生まれ。茨城県出身。人々の暮らしを支える仕事に関わりたいとマンションデベロッパーに就職、用地売買から販売までを一貫して担う。より多くの人々を喜ばせたいという想いから、カフェ独立スクールに通ったのち、不動産業を辞めて月間売上2,000万円の繁盛店でノウハウを学ぶ。日々の仕事や暮らしの中にある大量資材と環境汚染、廃棄物とフードロスに疑問を持ったことから、トレードオフを小さくしながら暮らしを豊かにする事業として「TOKYO CORK PROJECT」を2010年にスタートし、2014年に株式会社GOOD DEAL COMPANYを立ち上げる。現在では、自治体と共同したフードロスへの取り組みやアーティストが使用した楽器の一部をリユースした商品のプロデュースを行う。

 
東京で500店舗、全国で750店舗が提携し、現在およそ315万点、1900kg分のコルクが集まっています。(2017年11月現在)今は運送代行に回収してもらっているところを、来年からはワイン流通業者に協力してもらい、納品の帰り便を利用して回収する予定。提携店舗一覧はこちら

 
 
<編集>サムライト<WRITER>松尾沙織

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