コラム&リポート

日本人が愛する魚、実は絶滅危惧種?魚は有限、という意識から始めよう

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writer

末吉里花

一般社団法人
エシカル協会
代表理事

鮮魚売り場に並ぶ魚 でも海は危機的状況

太平洋クロマグロとニホンウナギ、共通する点は何でしょうか?
それは二つとも多くの日本人に愛され、なじみが深い魚であるということ。そして、両方とも絶滅危惧種に指定されている、ということです。
 

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スーパーの鮮魚売り場は「将来絶滅するかもしれない魚」の展示場になっている――専門家から今、そんな指摘が出ています。絶滅寸前の魚が乱獲され、「普通の魚」として大量に売られているのです。皆さんはスーパーに行き、そのような視点で買い物をしたことがありますか? すぐに信じられない話かもしれません。でも、太平洋クロマグロは乱獲で、とうとう絶滅危惧種に指定されてしまいました。
 

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンによると、太平洋クロマグロは、もともといたとされる数の2.6%まで取り尽くされてしまったそうです。それでもまだ、おなかに卵を抱えたお母さんマグロや成熟していない小さなマグロまで取られ続け、スーパーの棚や居酒屋のメニューに並んでいる状況だそうです。マアジやマサバなども絶滅予備軍です。魚の数は、乱獲や気候変動、海洋汚染によって、年々減っています。
 

この状況が続くと、お寿司(すし)や魚料理が食べられないどころか、和食に欠かせない出汁(だし)もとれなくなる日がくるかもしれません。そんな警告がされてもおかしくないほど、海は危機的な状況にあります。どうやったら、そんな未来を回避することができるのか。魚たちを絶滅危機から守れるのは、私たち人間だけです。

「海のエコラベル」で持続可能な漁業推進を

私たちができることの一つは、「海のエコラベル」つきの魚を買うことです。MSC認証という海のエコラベルは、持続可能な漁業で取られた天然の水産物にのみつけられます。海洋管理協議会(MSC)が管理・促進する認証制度です。取ってよい漁獲量や時期、魚の大きさなどを定めたり、他の生物がかかりにくい漁具を使ったりなど、様々な厳しい基準を設けることで、乱獲を防いでいます。また、ASC認証という海のエコラベルもあります。こちらは養殖の水産物につけられるラベルです。
 

最近、MSC認証やASC認証のラベルがついた水産物がだいぶスーパーにも並ぶようになってきました。大手スーパーのイオンは、MSC認証を持つサバや紅鮭、タラ、カラスカレイ、カラフトシシャモ、辛子明太子、カツオのたたきなどバラエティーに富んだ商品が売られています。またASC認証商品では、薫製カキやあぶりサーモンなど加工品のラインアップも充実しています。
 

私たち一人ひとりが、こうしたラベルを意識して買い物をすることが大切です。もし自分がよく行く近所のスーパーに「海のエコラベル」つきの魚がなければ、少し勇気が要るかもしれませんが、「ここには『海のエコラベル』つきの魚はありませんか?」と聞いたり、店頭で見かけるアンケート用紙に書いてみたりしてください。魚という「資源」も、無限ではありません。
 

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(南三陸町戸倉地区のカキ養殖漁師、後藤清広さんの船に乗って、海の恵みであるカキをいただく)
 

「海のエコラベル」を普及させることで、豊かな海を取り戻せるだけではなく、他にも良いことがあります。日本の漁師たちの労働環境の改善にもつながります。昨年(2017年)と今年、私は宮城県南三陸町の県漁協戸倉出張所のカキ部会長・後藤清広さんを訪ねました。実はここのカキ養殖には、震災から5年後の2016年3月に、日本で初めてASC認証がもたらされています。
 

震災前、戸倉の養殖いかだの数はとても多かったため、その分一つひとつのカキの大きさが非常に小さく、味もいまひとつだったそうです。津波でいかだがすべて流された後、海は想像した以上にきれいで、後藤さんは試しに種ガキを海中にしかけたところ、震災前には考えられないほど大きなカキが育ち、味もとてもおいしかったとのこと。震災の翌年、漁師らを集めてASC認証をとることを決めて、紆余(うよ)曲折を経てようやく取得に至りました。
 

ASC認証の基準を満たすためには、漁師の労働環境の改善も求められます。今まで、漁師は海が良ければ365日海に出る、という生活を送ってきましたが、取得したおかげでちゃんと休めるようになり、家族と過ごす時間が増えたそうです。後藤さんは妻と映画鑑賞に出かけるのが楽しみ、ととてもうれしそうに話してくれました。予定が立てられる生活は、小さな子どもを育てている若い漁師に大変喜ばれたそうです。

作り手の思いを噛(か)み締め、おいしさに感謝

働く漁師の労働環境を守り、環境に負荷をかけないよう水質を保ちながら、将来ずっと先までおいしいカキを作り続ける。そのためにはASC認証の取得が不可欠だったのです。私も戸倉のカキをいただきましたが、大きな身に磯の香りがたっぷり詰まった濃厚なカキは言葉も出ないおいしさで、海の恵みを存分に味わいました。
 

作られる過程を知り、そのおいしさに感謝する。これはまさに作り手にとっても、買い手にとっても、環境にとっても良いというフェアトレードの考え方そのものです。こうした日本のエシカルな作り手の思いを、日本の買い手につなげていくことを、私は「国内フェアトレード」と呼んでいます。
 

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(レストランBLUEのサステナブル・シーフードを使った寿司ロール)
 

サステナブル・シーフード(持続可能な水産物)を応援する活動は広がりつつあります。例えば昨年(2017年)5月、日本初の認証水産品レストラン「BLUE」が東京・世田谷にオープンしました。MSC認証やASC認証の水産物を調理し提供しており、新たなシーフードの可能性を追求しているレストランです。
 

今年3月に東京スカイツリータウンで開かれた朝日新聞社の未来メディアカフェ「あなたの買い物が未来を変える~エシカルと消費とSDGs」イベントではBLUEのフードカーが出店していました。認証のサーモンを使った寿司ロールとクラムチャウダーをいただきましたが、どちらも抜群においしく、レストランにも足を運びたくなりました。
 

Sustainable Seafood Event with Influencers
(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン主催の「OCEAN TALK」で提供されたサステナブル・サーモンのお料理 © Kensaku Seki / Greenpeace )
 

このように、素材をおいしく生かすプロのシェフもサステナブル・シーフードを応援しています。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンでは、サステナブルな魚を取り扱っているかどうか、国内大手15社のスーパーマーケットを調査した、2018年最新の「お魚スーパーマーケットランキング7」をネット上で公開しています。
 

こうした情報を消費者として知っておくことは非常に重要で、買い物の時の指標にするべきです。
 

私たちが海で起きている問題を知れば、解決に導く方法を編み出せます。大切なのはまず知ること。そして行動すること。身近な魚からエシカル消費を始めてみませんか?今夜の献立は、サステナブル・シーフードにぜひトライしてみてください。
 

Be the change!(変化の担い手になろう!)

 
「SDGs」について、詳しくはこちら:SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり
 

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