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“SDGs Commuication Guide”発表!企業がSDGsに取り組む際に知っておくべきこととは?

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2015年にSDGsが国連で採択されて以降、企業がビジネス活動の一貫としてさまざまな環境や社会問題を解決することが期待されています。日本のSDGsの認知は14%と低いですが(2018年7月朝日新聞社調べ「SDGs認知度調査 第3回報告」)、SDGsに取り組む企業は増えつつあります。

 
企業がSDGsに取り組む際は、どんなことに留意すべきなのでしょうか。そのポイントを整理し、明文化したSDGs Communication Guideを、2018年6月に株式会社電通が発表しました。ガイドの作成には、複数の団体・企業担当者も作成委員として携わっています。

 
本ガイドは2部構成で、パート1では、SDGsと企業経営に関する基本的な知識を解説しています。そしてパート2では、企業がSDGsによる広告コミュニケーションを行ううえで、具体的に担当者が留意すべきポイントなどを整理しています。

 
ガイドについてより深く理解し、各企業の担当者が効果的に活用できるように、作成に携わった株式会社電通の木下浩二さん、明石英子さん、池田百合さんの3名に、お話を伺いしました。

SDGs Communication Guideとは?

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(株式会社電通 PRプランニング局 事業企画部 シニア・プロジェクト・マネージャー 池田百合さん=左=とビジネス・ディベロップメント&アクティベーション局 産業戦略室 産業2部 部長 明石英子さん=右=)

 
―― はじめに、SDGs Communication Guideとはどのようなものなのか、教えてください。

 
明石英子さん(以下、明石) ひとことで言えば、企業が自身のSDGs活動を発信する際に、理解しておくべきことや注意点をまとめたものです。

 
企業活動は、多くのシーンでSDGsに紐づく環境や社会問題と関わって成り立っています。そのことを企業がしっかりと理解したうえで発信できれば、企業経営にとって多くのメリットが生まれます。それを伝える為に作成しました。

 
―― SDGsがもたらす企業経営へのメリットには、どのようなことがあるのでしょうか?

 
明石 「未来を見据えた持続可能な企業経営」という視点から、企業がSDGsに積極的に取り組むメリットは大きく4つあると考えています。

 
①ステークホルダーとの関係性の改善と発展に寄与すること
②巨大ビジネスチャンスにつながること
③SDGsを共通言語に、さまざまな主体との協働が実現すること
④資金調達に益するESG投資を通した資金調達が有利になること

 
このように、SDGsは、取り組むことで自分たちのビジネスにつながっていくことが前提にあります。企業にとってSDGsは取り組んでいくべき重要な課題であること、そしてその取り組みに企業の価値が生まれ、ビジネスチャンスでもあることをまずは認識してもらうことがSDGs 理解の第一歩になりますね。

 
―― では、企業がSDGsに取り組むうえで留意すべき点はなんでしょうか?

 
木下 まずは「経営理念とSDGsを統合して企業活動の中核に位置づけ、中長期的な視点のもとに推進すること」が大切です。

 
わかりやすく説明すると、そのSDGsの取り組みが、本業に近いところにあるかどうか。これは、持続可能というSDGsの根本となるコンセプトと重なる部分で、企業が無理をせずに、継続的に取り組めることでなければ意味がありません。

 
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(株式会社電通 法務マネジメント局 CSR推進部長 CSR/CSVコンサルティング・ディレクター 木下浩二さん)

 
―― SDGsの取り組みは、CSRとは少し異なり、利益を追求してもよいのでしょうか?

 
木下 そうですね。企業にとって営利を求めることは、当然の活動です。その営利を目的とした活動とSDGsの取り組みが一致していれば、企業が取り組む必然性が生まれ、それが結果的に無理のない持続可能性につながっていきます。

SDGsウォッシュとは?

明石 一方できちんとした知識のないままSDGsによる広告コミュニケーションを行おうとすると、周囲から非難や指摘を受ける可能性があります。いわゆる「SDGsウォッシュ」です。SDGsウォッシュとは、ひとことで言えば「広告で訴えていることと実際の行動(活動)が異なる」ことです。そうした指摘を受けないようにするために、ガイドラインを参考にしてほしいと考えています。

 
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SDGs Communication Guideより抜粋)

 
―― 「SDGsウォッシュ」についてもう少し詳しく教えてください。

 
明石 SDGsウォッシュは、SDGsと“ごまかし・粉飾”を意味するホワイトウォッシュ(Whitewash)を組み合わせた造語です。かつて環境問題に寄与していることをアピールしていた企業が、実際には自然破壊につながる活動を行っていたことが判明し、社会問題に発展したのですが、その批判がグリーンウォッシュ(Greenwash)と表現されました。具体的に問題視されたのは以下の3点です。

 
・実態がないのに環境に適しているように見せかける
・実態以上に環境に配慮しているように見せかける
・不都合な事実を伝えず、良い情報のみを伝達している

 
一度、批判を受けると、企業は信頼を失うだけでなく、投資先としての魅力も失い、経営面でも大きなダメージを受けることになります。SDGs Communication Guideでは、まさにこうしたグリーンウォッシュのようなことを起こさないための具体的なチェックポイントが整理されています。

 
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SDGs Communication Guideより抜粋)

 
―― 日本国内でも、SDGsウォッシュのようなことが起きているのでしょうか?

 
池田 現段階では、表立って批判されるような事例はありませんが、企業は気を付けて対処しないと、今後出てくる可能性があるのではないでしょうか。SDGsを実現するためには、企業の力は必要不可欠です。ですが一度、SDGsウォッシュだと見なされてしまうと、企業としてはかえって大きなダメージを受けかねません。それを未然に防ぐ為に努力することが大切です。

 
―― 企業によっては、SDGsウォッシュを気にするあまり、SDGsへの取り組みに二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。

 
木下 SDGs Communication Guideを作成するにあたり、その懸念点も議論しました。しかし、SDGsがグローバルスタンダードになりつつあることから、今後はSDGsに取り組まないほうが企業経営としてはリスクが高いと考えています。経団連が企業行動憲章をSDGsの達成を視野に入れた内容に改訂したことからもわかるとおり、これからの企業活動にSDGsへの取り組みは必須になってきます。

 
池田 何がSDGsウォッシュにあたるかは、人や地域によってとらえ方が違うということも考慮しなければなりません。SDGs Communication Guideでは、「人権の多様性・あいまい性」と明記してこの問題について触れていますが、たとえば、国や地域、宗教などが違えば同じ言葉でもとらえ方は変わってきます。さらに時代や、その当時の社会の風潮によっても判断基準は変わってくる。言い換えれば、知らないところで人を傷つけたり、批判する表現を使ってしまっているケースが意図しなくても起きてしまう可能性があるということです。こうした問題をクリアするためにも、担当者はできるだけ多角的な視点を考慮することが求められます。

 
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(SDGsを企業広告やプロモーションなどに取り組むには経営陣だけで推進するのではなく、実際の活動を担う事業部の人たちに理念を浸透させ、能動的に活動してもらうことがより大きな成果につながると明石さんはいう)

SDGsウォッシュを回避するには、シンプルに「うそはつかない」「誠実であること」

 
池田 これはむしろまじめな日本の国民性から想定される課題ですが、企業は自社のSDGsの取り組みについて発表する際に、SDGsの目標達成を完全にできてからでないと公表できないと思いがちです。今、現段階ではできていなくても、まずはきちんと現状を伝えること。同時に、あいまいであったり、自社に都合のいいだけの目標ではなく、しっかりとした計画をたてて、○○年までどこまで解決するかの企業の意志をきちんと伝えていく、もし明示した年にできなければ、その年には、どこまでできたのかを明らかにすること。そうやって、社会や、NPO/NGO、投資家などすべてのステークホルダーからの信頼を得ていくこと。それができれば、それはSDGsウォッシュの対象にはなりません。

 
―― うそはつかないこと、誠実であること。基本的にこの2点が徹底されていれば、その時点で目標が100%達成されていなくてもいいと。

 
池田 はい。たとえば、100をゴールとした場合、今年はまだ目標の30しか達成できていない。けれど、来年は40を目指します。そうした事実をきちんと伝えることが大切で、SDGsウォッシュを回避することにもつながっていくはずです。

 
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(SDGs Communication Guideを作成するうえで「現段階ではできていなくても、きちんと現状を伝えることが大切」と池田さん。うそをつかない、誠実であることが、SDGsウォッシュの回避にもつながるという)

SDGsによる広告コミュニケーションはなぜ大切?

――企業が、自身のSDGsへの取り組みを発信していくことを、ガイドの中で「広告コミュニケーション」と表現されていますが、これはなぜ大切なのでしょうか。

 
明石 企業インナーに向けても理解・浸透が進みます。実は企業さまからいただくご相談ごとの中に、経営陣は推進しようとしても、実際に活動を担う事業部門のほうの理解や行動がついていけないという課題が意外に多いんですね。そうすると、まさにSDGsウォッシュが懸念している、企業が発信していることと実態が伴わないということになりかねません。言い換えれば、SDGsウォッシュが起きてしまう原因のひとつに、その企業内での理解・浸透度が低い場合があるということがいえます。

 
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SDGs Communication Guideより抜粋)

 
―― 企業がSDGsを実現させる推進力を持つには、経営陣だけでなく、社員全員を巻き込んでいく必要がある。対外的だけでなく、対内的にも理解を深めて意志統一していくことが大事になってくるというわけですね。

 
明石 はい。SDGsによる広告コミュニケーションを企画したり実施したりするのは、あくまで事業部門の人間です。その人たちが、SDGsのことをしっかりと理解したうえでアクションを起こしていくためにも、「経営理念とSDGsを統合して企業活動の中核に位置づける」ことが大切だということです。

まとめ

「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」に掲げられたSDGs。3人が強調されたのは、SDGs Communication Guideは今回作成して終わりではなく、SDGsの浸透や企業の成長とともに、進化するものだということ。今回発表されたものは、Ver1.0という位置付けで考えているのだそう。

 
「SDGsは、一社で成し遂げられるものではありません。もっといえばSDGsは一旦、2030年を目標にしていますが、その後30年、50年、100年と、継続して行われるべきものです。そのためには、個々の企業がそれぞれに活動するのではなく、時にはコラボレーションしながら大きなイノベーションを起こすことが大事。SDGs Communication Guideが、そのハブ的な役割を担うことができればと思っています」(木下)

 
今回発表されたSDGs Communication Guideの内容を多くの企業が理解し実践すれば、企業の発展に寄与する正しいSDGsのプロモーションが増えるとともに、国内におけるSDGsの認知・拡大の推進力にもつながるでしょう。

 
SDGs Communication Guideはこちら
http://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf

 
<編集・WRITER>サムライト <撮影>島津 洋一郎

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