コラム&リポート

SDGsの現在地とこれからを考える【SDGs3周年記念イベント】レポート

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2015年9月25日に国連総会で採択された、SDGs(持続可能な開発目標)。4年目を迎えた2018年10月3日(水)、SDGsを推進する官・民・国際機関・NGO/NPO・学術界の有識者が一堂に会し、SDGsの“現在地”を共有するイベントが東京都千代田区の「3×3Lab Future」で開催されました。

 
主催者を代表して、SDGパートナーズの田瀬和夫氏は「この3年間のSDGsへの取り組みに対して、どのような成果があったのか、今後どういったことをしていきたいのか、それぞれの熱い思いを共有していただければと思います」と挨拶しました。

 
登壇された各団体の代表者は、”これまで”の取り組みを振り返るとともに、それぞれが抱える課題、そして2030年までの”これから”の展望を発表。ここでは教育、消費、働き方、企業活動の4つのテーマから、各代表の報告をいくつかご紹介します。

 
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(司会進行は、主催した、SDGパートナーズの田瀬和夫氏<写真中央>と株式会社クレアンの薗田綾子氏<写真左>)

【教育】「試験のために学ぶ」から「未来のために学ぶ」へ

「ある日、学校の先生から、『小学校低学年のときに目を輝かせて学んでいたはずの子どもたちが、高学年になるにつれ試験のために学ぶようになり、笑顔が消えてしまう。本来、学びは楽しく、わくわくするものなのに。それをなんとかしたい』という想いを聞きました」。

そう切り出したのは、Think the Earthの上田壮一氏。文部科学省が学習指導要領を改定したことにより、SDGsの考えがどのように子どもたちに浸透していくのか、その過程を語りました。

 
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「2017年と18年に学習指導要領が改定されて、学校の役割として『持続可能な社会の創り手』を育むことが新しく盛り込まれました。こうした時代の変化や現状から、社会の課題を俯瞰的に見つめながらクリエイティブに解決する人材を育成するためにSDGs for Schoolというプロジェクトをスタートしました。

 
SDGs for Schoolの活動を通じて出会った、ある高校生がこう言っていました。

 
『SDGsは自分にとって世界とつながるパスポート。これまで会えなかった社会問題を抱えている人や、それを解決するために積極的に動いている同世代の中高生や大人たちに会うことができた。一方で自分のような高校生でも、アイデアを出して社会の課題を解決できることがわかって、人生が変わりました』と。

 
彼をはじめ、SDGsを入り口に社会とつながりはじめた子どもたちの前向きな姿勢や笑顔を見て、SDGsが『試験のため』ではなく『未来のため』に学び、行動するきっかけとなり、本来の学びの楽しさを取り戻す力をもっていることを確信しました」

 
「自らの人生を切り開く」をコンセプトに、子どもたちの成長を促すさまざまなプログラムを提供するHand-cの代表取締役・仁禮彩香さんも登壇しました。同じく、教育という観点からSDGsへのアプローチを推進しています。

 
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仁禮さんは、小学生の頃に「教科書に書かれた答え以外は間違っている。みんなと違うことはいけないこと」とする風潮や、中学・高校生が勉強する目的が受験で合格することになりがちな教育の現状に違和感を覚え、中学2年生のときに株式会社GLOATHを設立。子どもたちが自ら未来を考え、創造していく力を育む事業を展開しています。

 
「従来の教育プロセスでは、考える力は十分に養われない。自分が持っている問題意識や課題感を見つけて、自ら解決に取り組むことができる人間を育むこと。それが私たちの目標であり、そのための活動をこれからも続けていきたいと思います」

 
Hand-c の理念や活動はThink the Earthと共通する部分が多く、参加者の多くはふたりの発表から教育の現場におけるSDGsの可能性と明るい未来を感じたのでしょう。発表を終えると同時に大きな拍手が送られていました。

【消費】身の回りのものがどうやって作られているのか。「作る責任、使う責任」を考える

エシカル協会の代表・末吉里花さんは、私たちの身の回りにあふれているモノが生産される過程を考える「エシカル消費」について解説しました。

 
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「エシカルとは、人や地球環境、地域社会に配慮した考え方や行動。エシカル消費は、その考え方を意識した消費行動のことです。

 
社会に生きるすべての人に共通する点は、消費者であるということ。一人ひとりが、『日々の中で手に取る食品や洋服が、どこでどのように作られたのか』を少しでも意識すれば、社会の環境問題や貧困問題は解決できると考えています。つまり、明日からでも取り組めるのがエシカル消費の大きな特徴です」

 
末吉さんは、ドイツの街中で安いTシャツを買い求めた人々に、Tシャツが途上国の過酷な労働環境で作られたことを見せる映像を紹介。この映像は、真のファッションの価値を問い直すFashion Revolutionという世界的なキャンペーン活動の一環として作られました。その映像の最後に映し出されたメッセージをスピーチで引用しました。

 
「”people care when they know”

 
これは「人は知ったら必ず気にかける」という意味。私たちが普段消費するものを作っている背景でいま何が起きているのか、それを知れば、人は社会問題を自分ごと化して考えるようになるというメッセージです。そうして生活消費者側の意識を変えていくことがSDGsにつながっていくのです。」

【企業活動】成功体験の外に出て、自分たちのこと、社会のこと、地球のことを考える

 
キリンホールディングス株式会社のCSV戦略担当・森田裕之さんは、7月の中旬にハイレベル政治フォーラムとそれに続くSDGsビジネスフォーラム参加のために、経団連のミッションの一員としてニューヨークの国連本部に行った際に「これからSDGsを推進していく上での国際社会における日本の立ち位置」を考えさせられたといいます。

 
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「国連の中で、SDGsの話をしているのは大半がヨーロッパ人。アメリカ人はほとんどいないのが印象的でした。

 
ドイツのシンクタンクが毎年発表しているSDGsの進捗度のランキングでは、国連での採択後、3年が経った現在、ノルウェーをはじめとするスウェーデンを筆頭に上位は北欧3か国がTOP3。その次はヨーロッパ諸国が占め、日本は15位。一方アメリカは35位、中国は54位と、世界経済をリードする二大大国はかなり下位にランクされています。アメリカも中国が一部環境問題に取り組んでいる以外、二大国はほぼSDGsに参加していない状況です。

 
なぜ、アメリカはSDGsに積極的ではないのか。ブルッキングス研究所のホミ・カラス博士をはじめとする研究者によると、アメリカは4年ごとに大統領選挙があって、一政権が最長で10年しか持たないため、SDGsのような長期的な目標を達成することはむずかしいと思われるとのことでした。

 
こうした中で、日本はどういう立場でどのようにSDGsと関わっていくべきなのか。そのひとつの回答として、これからの時代は、これまでの日本の成功体験というものの外に出て、自分たちで今後の自分たちのこと、これからの社会のこと、地球の未来のことを考えて、決断して動かなければいけないと思います。」

 
SDGsが掲げる持続可能な開発目標は、ひとつの場にとどまっていたら達成できません。私たちの日常の製造、販売活動や消費行動から世界に視野を広げSDGsについて考える。その結果、世界における日本のSDGsの立ち位置も変わることにつながるのだと森田さんは主張されました。

【働き方】どこでもいつでも働ける環境を作り、地域や社会に貢献する

 
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの取締役・島田由香さんは、「毎日、朝早くから通勤ラッシュに巻き込まれながら会社に行って働かないといけない、という思い込みに縛られて生きる必要はないのではないでしょうか」という問いかけから、自身が中心となって推進している「誰もが、いつでも、どこでも働ける」新しい働き方について報告されました。

 
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「私たちユニリーバは、一人ひとりがありのままの自分でいながらいきいきと輝ける世界の実現を目指しています。ジェンダーや年齢、生まれた地域などにかかわらず、みんなが自分らしく活躍できる働き方を作っていくこと。特に今は、WAA(Work from Anywhere and Anytime)という、働く場所や時間を社員が自分で選べる働き方を推進しています。

 
この仕組みを作る目的のひとつは、働く人たちがもっと地域とともに生きられるようにすること。日本人にはもともと自然への敬意や助け合いの心があり、SDGsが目指す持続可能な社会への想いや資質を持っている民族だと思っています。

 
その想いや資質を実際に未来を良い方向に変える力につなげていくためには、一人ひとりがもっと豊かに、自由に、楽しく生きていく仕組みが必要です。その仕組みをユニリーバから始め、多くの人の力を積み重ねて未来への大きな力にしていくことに取り組んでいきます。」

【企業活動】全従業員の物心両面の幸福追求と、人類、社会の進歩発展を

コマニー株式会社は、2018年4月に「世の中の幸福に貢献するために」をコンセプトとした「コマニーSDGs宣言」を発表。その中心人物として活躍された常務執行役員の塚本直之さんから、SDGsを企業経営に実装していくことになった経緯やこれからの展望が報告されました。

 
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「コマニーは、石川県小松市に本社がある会社であり、パーティションの製造販売を行っています。1961年に、キャビネットメーカーとして創業した後、製造や輸送のコストの関係からパーティションの製造に切り替えたことをきっかけに事業が成功しました。

 
しかし、その直後に社内分裂が起きてしまい、会社は経営の危機に陥りました。これから会社を大きくしようという時につまずいてしまったのは、創業者にとって大きなショックでした。

 
『どうしてこんなことになってしまったのだろう』と思い詰めた創業者は、『会社を永続的に発展させていくのに必要なのは、金銭ではなく心だ』と気づきます。それからコマニーでは、人道と友愛、共存共栄、技術向上、社会貢献、豊かで幸せな人生、の5つを理念に掲げました。

 
『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する』ことが我が社の経営理念。その中で2015年に採択されたSDGsに出会ったことは、やや色あせてしまっていた考え方が輝きを取り戻す何よりの理由になりました。経営理念をさらに浸透させるという意味でも私たちはSDGsに賛同し、今年の4月に『コマニーSDGs宣言』を表明。そしてその具体的な活動の指標として独自の『コマニーSDGsメビウスモデル』を制定しました。『コマニーSDGsメビウスモデル』は、私たちが目指している経営のあり方や、それがSDGsのどこに対してどのように社会的インパクトを与えて貢献・実現していくかということを図で表したものです。

 
私たちはメーカーなので、SDGsの9番目のゴール『産業と技術革新の基盤をつくろう』を中心に据え、技術革新で社会にインパクトのある貢献をしていくことを考えています。たとえば日本は地震が多いことから、耐震用のパーティションを作り出したり、避難所で感染症を防止できるようにクリーンルームの技術を生かしたり、といったことを産学連携で行っています。

 
ほかにも、今は新しい形の働き方がたくさんあるので、多様な働き方の空間を作り込んでいく提案や、これからの教育のあり方に適した空間の作り方はどうあるべきか、という研究開発を通して社会に貢献したいと考えています。

 
今後の取り組みとしては、2030年までにどこの分野でどのくらい貢献していくのか、という社会的インパクトの指標を具体化、SDGsメビウスモデルを実装した形でそれを実現するということに取り組んでいきたいです。」

2030年に向けて日本が中心となってSDGsを加速させる

最後に、外務省地域規模課題総括課首席事務官・原琴乃さんから、政府のこれからのSDGsに関する動きが紹介されました。

 
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「以前は、全閣僚が集まるSDGs推進本部でSDGsについて発言する大臣は7大臣ほどでしたが、最近はその倍の14大臣からSDGsをもっとこうしていきたい、と積極的な発言がなされるなど、政府部内でもSDGsの機運が高まっています。

 
政府が決定した最新のアクションプランでは、『SDGsを推進して課題を解決する』だけでなく、『グローバル化、少子高齢化の中でもより良い、豊かで活力ある未来を作っていく』という姿勢でSDGsの推進が打ち出されています。今、政府がとっているSDGsのアプローチは、ビジネスとイノベーション、地方創生とSDGs、次世代と女性のエンターメントの3つであり、日本の『SDGsモデル』としています。

 
国連の場でも、共同議長として、STIの力を使ってSDGsをどう推進していくかという議論を日本がリードしています。また、中小企業やスタートアップなどによるSDGsの取り組みを後押しするため、『SDGs経営推進イニシアティヴ』も立ち上げました。日本は、100年企業が世界で一番多く、社会の持続可能性に貢献することで、自らも持続可能としてきたと考えています。持続可能性のDNAは日本人の中に深く刻まれているとの誇りを感じながら、企業活動をしていただきたいです。ほかにも、下川町に代表されるSDGs未来都市を今後の3年間で100に増やしたいと思っていますし、東京オリンピック・パラリンピックでは有形無形の持続可能性のレガシーを残していきたいと考えています。」

 
「来年は、さまざまなサミットや会議が多く開催されます。WAW!(国際女性会議)では、起業家・企業人としての女性の力を後押ししていきたいほか、G20大阪サミットでは、海洋ゴミについても取り上げる見通しです。2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが、2025年に向けて、SDGsをテーマに掲げた大阪・関西万博の誘致を進めています。このように、2030年まで、さまざまなステークホルダーの方々と協力しながら、日本が率先してSDGs達成に向けたマイルストーンを刻んで行きたく、引き続き、宜しくお願いいたします。」

 
SDGsが国連で採択されてから3年。日本国内における認知度は、ここ数年の間に急速に広まりつつありますが、進捗ランキングが示すとおり、ヨーロッパ諸国と比較するとまだ先進国とは言えない状況です。世界的にも日本がSDGsをリードする国になるためには、企業をはじめ、さまざまな団体の積極的な協力や取り組みが欠かせません。2030年、どんな未来が待っているのでしょうか。今回のイベントは、SDGsの認知・拡大を担う人々が集まり、これからの日本の未来を考える場となりました。

 
この日、登壇されたのは以下の方々です(敬称略/所属はイベント当日現在)

 
大野星絵(NTCインターナショナル株式会社)
上田壮一(一般社団法人シンク・ジ・アース)
小野塚惠美(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社)
稲場雅紀(一般社団法人SDGs 市民社会ネットワーク)
川廷昌弘(株式会社博報堂DYホールディングス)
城宝薫(株式会社テーブルクロス)
石川淳哉(株式会社ドリームデザイン)
仁禮彩香(株式会社Hand-C)
森田裕之(キリンホールディングス株式会社)
山本菜奈(NPO法人WELgee)
荒川敦史(国立研究開発法人科学技術振興機構)
末吉里花(一般社団法人日本エシカル協会)
堀江敦子(スリール株式会社)
関龍彦(株式会社講談社)
島田由香(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社)
佐藤真久(東京都市大学環境学部)
原 琴乃(外務省地球規模課題総括課)
塚本 直之(コマニー株式会社)

 
「SDGs」について、詳しくはこちら:
SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり

 
<取材・編集>サムライト <撮影>鈴木智哉

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