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「みんなにトイレをプロジェクト」トイレを利用できない23億人を救いたい

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日本では、誰もがいつでもどこでも、安全に利用することのできる“トイレ”。駅やショッピングモールといった大きな施設から、小さなお店、新幹線などの乗り物にいたるまで、トイレが利用できない場所はこの国にほとんどないと言っても過言ではありません。
 

一方で、世界に目を向けてみると、安全で衛生的なトイレを利用できてない人々が23億人もいるということを皆さんはご存じでしょうか。
 

その23億人のうち、約9億人もの人たちが屋外で排泄をしており、衛生的なトイレが利用できないことによる経済的損失は推定22兆円(※2015年度の統計)とも言われています。例えば、開発途上国の女児のなかには「トイレがないせいで学校に通えない」「トイレがないせいで、生理のときには学校を欠席しなければいけない」という人も少なくないのです。SDGsの17目標でも、6番に「安全な水とトイレを世界中に」を掲げています。
 

そのような社会課題を解決し、世界の衛生環境を改善すべく、開発途上国向けに簡易式トイレを開発し、寄付・販売している日本の企業があります。住宅設備機器・建材メーカーの株式会社LIXILです。
 

LIXILの一体型シャワートイレが1台購入されるたび、開発途上国に1台の簡易式トイレ「SATO」が寄付される

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(出典:LIXIL みんなにトイレをプロジェクト 2018
 

LIXILは2017年4月から、LIXILの一体型シャワートイレ1台が購入されるたびに簡易式トイレ「SATO」1台を開発途上国に寄付するという、「みんなにトイレをプロジェクト」に取り組んでいます。2017年4月~9月の半年間の実施で、208,805台の「SATO」が開発途上国に寄付される予定です。
 

「SATO」はLIXILが開発したトイレで、少ない水でも排泄物が流れることと、虫や悪臭を防いでくれること、設置が簡単なシンプルな構造が特徴です。設置される国や環境によって和式、洋式などの選択肢が用意されており、20以上のタイプが存在します。
 

昨年度のプロジェクトで実際に「SATO」が寄付されるのはインドやバングラデシュなどの特に緊急性の高い地域で、これは今後、約100万人の人々の衛生環境の改善に役立てられます。
 

現地に本当の意味で根付いてほしい

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これまでも、国連機関やNGOは開発途上国に向けてトイレを利用してもらうべく積極的な衛生教育を行ってきました。しかしなかなかそれが広まらなかった要因の一つは、トイレそのものが足りていなかったことです。LIXILは、現地の人でも安く購入できるトイレを作って衛生環境を改善したいという思いで、この問題に取り組んでいます。
 

「SATOの開発が始まったのは2012年のことです。学生時代にバックパッカーをしていて途上国の衛生環境の悪さに衝撃を受けた経験を持つ石山大吾というデザイナーが中心となり、開発プロジェクトが進んでいきました」
 

LIXILのコーポレートレスポンシビリティーグループ シニアマネージャーの小竹茜さんは、そう語ります。
 

デザイナーの石山さんは「SATO」を開発するにあたり、実際にバングラデシュに赴いて3週間のあいだ現地の人と生活を共にしました。そこには、「現地のニーズをきちんと把握し、本当の意味で現地に根付いてほしい」というLIXILの強いこだわりがあったといいます。
 

「現地での生産工場、販売する方、そしてSATOを実際に利用する現地の方々。そのなかにひとりでもSATOのことを良く思ってない人がいたら、このプロジェクトが途切れてしまう、と思ったんです。携わる人全員がSATOを好きになり、現地でもサスティナブルに利用してもらうためには、現地の状況を知り、生産もなるべく現地に近いところで行うべきだと考えました」
 

「SATO」の生産拠点は、なるべく提供国の近くに置くことを目指しているといいます。その背景には、現地に製品を根付かせたいという気持ちはもちろん、開発途上国に雇用を生み出したいという思いもあります。
 

「寄付したものの、使われなかった」を防ぐために

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LIXILは「みんなにトイレをプロジェクト」を進める一方で、期間限定の寄付だけでなく、現地の人に継続的にSATOを購入してもらえるようソーシャルビジネスも展開しています。
 

「寄付はもちろんよいことですが、たとえば重厚すぎるトイレ、大きすぎるトイレなど現地のニーズや状況にマッチしないものが寄付されてしまうと、プロダクトだけは渡せたけれど実際は使われずに終わってしまう、という可能性があります。それに、本来は自分でトイレを買える購買能力のある人たちに寄付をしてしまうと、現地のマーケットが正常に機能しなくなってしまう恐れもある。」
「SATO」自体の販売価格はわずか数ドルから。トイレを建設する際には政府から3万円程度の補助金が出る国もあるなど、開発途上国の人々でもトイレを購入しやすい環境は、徐々に整いつつあります。
 

「日本の消費者はグリーンコンシューマーではない」は固定観念に過ぎなかった

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(出典:視察レポート2017
 

2018年度のみんなにトイレをプロジェクトは、いままさに進行中です。簡易式トイレのニーズがもっとも高い場所に「SATO」を送るべく、パートナーと共に寄付対象国を選定している最中だといいます。
 

「昨年度のプロジェクトと大きく違うのは、今年度は“学校”を中心にしようとしていることです。学校にトイレがないことで生理の子どもが授業を欠席してしまったり、教師が着任したがらないことも多く、貴重な学習の機会が奪われてしまっている。そういった状況を打破すべく、今年は学校への寄付に注力することになりました」
 

並行して、「SATO」以外のトイレシステムの開発も進んでいるそう。開発途上国のなかでも、農村部とは環境の違う都市部やスラムで利用できるトイレを作るべく、プロジェクトが進んでいると言います。
 

「みんなにトイレをプロジェクト2018」の寄付台数を今後どのくらいまで増やしたいかを尋ねると、LIXILの小竹さんからは意外な答えが返ってきました。
 

「台数の目標値は特に設定していません。というのも、日本ではまだ開発途上国のトイレ事情についてまったく知らない人も多く、途上国の現状を知ってもらうという啓蒙活動そのものにも大きな意味があると思うので、そちらも重視しているからです。今後は、寄付されたトイレが実際にどのように現地で使われているのか、皆さまにレポートでお見せしていきます」
 

「みんなにトイレをプロジェクト」が始まった当初は、「日本の消費者はグリーンコンシューマーではないから、あまり関心が寄せられないのでは」という懸念の声もあったそう。しかし実際にプロジェクトが進んでいくと、営業部門の社員はもちろん、工務店などのパートナーやLIXIL製品を購入する消費者からも「社会課題の解決に自分が貢献できるのが嬉しい」という反響が多くあったといいます。
 

「携わる人全員がファンに」。その言葉通り、みんなにトイレをプロジェクトは、「SATO」を実際に利用する人から販売する人、寄付をする人まで、関わった人たち全員を幸せにするプロジェクトのように思えました。
 

図6

 
 
<編集・WRITER>サムライト

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