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ネクタイを再活用 女子高校生グループ「H.O.P.E」が広める「エシカルファッション」 

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最近、「エシカル」という言葉が教科書にも載るようになったのをご存知でしょうか?
 

「エシカル(ethical:形容詞)」という言葉は、直訳すると「倫理的な」という意味を指します。これは、イギリスから入ってきた考え方で、あらゆる存在にとってよい選択をすること、行動をすることに用いられます。
 

この言葉を広める一般社団法人エシカル協会では、人、地域、社会、地球環境に優しい消費行動を「エシカル消費」と定義しています。具体的には、オーガニックコットンやフェアトレードの商品、被災地支援の商品や伝統工芸品などの購入がそれにあたり、毎日のように行われる消費行動から、お金の流れを変えることで世界をよくしていこうという取り組みです。
 

今回は、この「エシカル」に取り組む女子高校生たちがいるというのを聞きつけて、彼女たちの元を訪れてきました。
 

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東京都・目黒区の駒場野公園近くにある東京都立国際高校に通う高校3年生の彼女たちは、「H.O.P.E」というグループ名で活動しています。「Help Open people’s Eyes」の頭文字を取って付けられた名前には、「人々の目を開くことを手助けする」という素敵な意味が込められているそうです。
メンバーは、リーダーのニウシャ・ローズさん、田中 花向(かなた)さん、松田 怜奈さん、佐藤 茉唯佳(まいか)さんの4人。
 

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(イラン人のご両親を持つリーダーのニウシャ・ローズさん(左)と古着好きの田中 花向さん(右))
 

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(パタゴニアが好きな佐藤 茉唯佳さん(左)とピープルツリーが好きな松田 怜奈さん(右)。彼女たちが作ったネクタイを着用して写真に写ってくれました)

彼女たちがエシカルに取り組むきっかけとなった、国際教育プログラム「SAGE」とは?

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(過去の世界大会の様子 出典:SAGE
 

彼女たちは「SAGE JAPAN」という大会への応募をきっかけに「エシカル」に取り組むようになりました。「SAGE(Student for Advancement of the Global Entrepreneurship)」とは、アメリカで創設された国際的な教育プログラムで、高校生が数名のチームを組み、大学生とともに身近な社会問題をテーマに据え、それを解決するための社会貢献事業を考案するというもの。
 

その案を元に国内大会でプレゼンをし、見事選ばれると、世界大会へと進むことができるのです。2017年時点では30カ国が参加しており、高校生同士の交流もさかんに行われています。第5回目となる2017年度は、都立国際高校、私立蒲田女子高校、私立田園調布学園、都立練馬高校、都立千早高校、県立横須賀高校、市立横浜サイエンスフロンティア高校の7校からの参加者が集まりました。
 

国内大会である「SAGE JAPAN CUP」では、創価大学 宮崎研究室が推進委員を務め、大学生がメンターとしてチームに入り、スケジュールや予算管理などのアドバイスをしています。さらに企業や団体にも協力を仰ぎ、セクターを越えた協業から事業を行うという本格的な内容で、学生のやる気が試されます。
 

大会の応募が始まったのは2017年6月。4人は、もともとビジネスコンテストに興味があり、世界大会に惹かれたことから大会に応募したと話します。
 

「教室にSAGEのポスターが貼ってあって、ビビっときたことから応募しました。もともと私は起業に興味があって、将来起業に関わる仕事がしたいなと思っていました。国際高校ならではだと思うんですが、授業中にプレゼンやスピーチをする機会がたくさんあるので、今までやってきたことがどのくらい通用するのか、大会を通して確かめたいと思って参加を決めました」。メンバーのひとりである松田さんは、そう言います。

ファッションがはらむ問題を知り、廃棄ネクタイを活用

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(H.O.P.Eの名前から目のマークに。)
 

2017年9月頃から、本格的にプラン作りを始めました。4人が取り組んだテーマは、全員がファッション好きだったことから、”エシカル・ファッション”に決定。グループでテーマに関する調査を行います。
 

「SAGEに参加することになって、取り組むテーマを決めるためにさまざまな問題を調べていたら、そこで初めて ”エシカル” という言葉を知りました。より詳しく調べていくうちに、自分たちが買った服の中にも、さまざまな問題を引き起こすものがあるということを知ってとても衝撃を受けました」と田中さん。日本の衣服の廃棄量が年間33億着にも及ぶということや、ファストファッションの低価格を実現するため、低賃金で労働を強いられている人々がいることを知り、辿り着いたのが、“廃棄されてしまっているネクタイ”の問題。4人は、それを活用する事業を思いついたのです。
 

使わなくなったネクタイを、一般社団法人日本リ・ファッション協会から譲り受けることになり、たまたまH.O.P.E.の記事を見たことから出会った綾瀬シルバー人材センターのお直し工房で、サイズを直してもらうことに。
 

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(綾瀬シルバー人材センターのお直し工房のみなさん。百貨店のお直し経験を持ち、ネクタイの直しができる方がいたことからお願いしたそう。)
 

集まった35本の成人男性用ネクタイは、学校の正規のネクタイをサンプルに短く直し、オリジナルのマークをつけて、可愛らしいデザインに変身させることができました。そしてそれを持って4人はInstagramで呼びかけをし、学校の購買横で、自分たちで700円で販売します。Instagramを見て廃棄の問題を知った学生たちによって、ネクタイはあっという間に完売しました。仕立て代以外の売上金額は、サポート役も務めた一般社団法人エシカル協会に寄付をしたそうです。

校内の「エシカル」普及にも貢献!優秀賞獲得で世界へ

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(本大会がある2018年3月21日までの準備期間は、およそ半年。受験中ながらも頑張りました。)
 

さらに校内で「 ”エシカル” という言葉について知っているかどうか?」というアンケートを取ったところ、ネクタイの販売を行う前は知っている人が16%だったのに対し、販売を行った後は32%と倍になっていました。「 ”エシカル” という言葉を普及できたのは、とても嬉しかったです」と佐藤さん。
 

4人はその後、事業結果をレポートにまとめ、2018年3月21日に開催された「SAGE JAPAN CUP」でプレゼンを行いました。結果は、なんと優秀賞。8月に南アフリカのダーバンで開催される「SAGE WORLD CUP」の出場権を見事に得ました。
 

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これまでの道のりで得た学びについて、田中さんは「何回もミーティングを重ねて、わからないところは大学生や企業のメンターの方が的確にアドバイスしてくださったので、とても助けられました。協働をすることや、アポイントを取ることなど、普段やる機会がないことを体験できて、この大会で社会に必要な礼儀が少し身についた気がします」と話します。
 

さらに松田さんは、「エシカルのイベントに出たことからいろいろな出会いにつながりました。そういうつながりをつくることは、自分が実際に動いて体感しないとわからないと思うし、動かないと得るものも小さくなってしまうので、自分たちで行動してみることで視野が広がって、今までにない大きなものが得られました」と話してくれました。
 

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(H.O.P.Eの皆さんが「エシカル」について考えた投稿)
 

この大会をきっかけに、あるエシカルブランドから声がかかり、これから一緒に商品企画に取り組む予定もあるそうです。「大会が落ち着いたら、もっとエシカルの活動を広げていきたいです」と佐藤さん。
 

大会に参加することで、たくさんの気づきや学びを得ることができただけでなく、校内でのエシカルの普及にも取り組むことができた「H.O.P.E」。きっと、他の高校生にもよい刺激を与える存在となったことでしょう。彼女たちの今後の活躍に、これからも目が離せません。
 
 

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<編集>サムライト <WRITER>松尾沙織

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