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より“人や環境にやさしい”企業はどこ? 企業のエシカル通信簿 発表会レポート

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コンビニやスーパーマーケットで商品を手にとるとき、性能やデザインに大きな差がないのであれば、より“人や環境にやさしい”企業のものを選びたい──。消費者として、一度でもそう考えたことのある人は少なくないのではないでしょうか。
 

最近では倫理的、社会的な視点でモノやサービスを選ぶ「エシカル」の考え方も少しずつメジャーになってきています。しかし、それでもやはり、私たちが身近な商品やサービスを提供してくれる企業を選ぶとき、指標になりうるデータはあまりないのが現状です。
 

2018年3月9日、そんな“指標”を明確にし、どの企業がより持続可能な消費に配慮しているかをレイティング(=評価・格付け)で発表する「企業のエシカル通信簿 第2回結果発表会」が、「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」主催で、東京都内で開催されました。発表会の様子と、レイティングの結果をレポートします。

「つくる責任、つかう責任」を果たすために

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「企業のエシカル通信簿」は加工食品とアパレルの2業種に絞って実施された昨年度の第1回に引き続き、2017年度で2回目となります。今回はコンビニ、化粧品、宅配便の3業種の大手企業(資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、マンダム、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)を対象に実施され、それぞれのレイティングが発表されました。
 

「企業のエシカル通信簿」の目的と活用方法について、主催団体である「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」共同代表幹事の杦本育生氏は、こう語ります。
 

「持続可能で豊かな社会を目指したい、というのは誰しもが願うことですが、残念ながら、いま私たちは夢があるとはなかなか言えない社会を生きています。そこで、国連は変革の一歩として、『誰ひとりとり残さず、変わらなければいけない』とSDGsという世界目標を定めたんですね。
 

SDGsの17のゴールの12番目には『つくる責任、つかう責任」というものがあります。商品や企業を選ぶときに、『つくる責任、つかう責任』を果たしているかという視点を、消費者に持ってほしい。そして、その視点を受けて企業にも変わっていってほしいという願いをこめて、私たちは消費者目線の情報提供を行っています。
 

図12
 
具体的には2つの情報を提供していて、ひとつが“品物”を選ぶための『ぐりちょ』。これは、企業に関わらず、よりエシカルな商品を選ぶための情報サイトです。
 

そしてもうひとつが、今日のテーマである『企業のエシカル通信簿』。たとえば車を買おうと思ったとして、その車を製造している企業がどういった取り組みをしているかわかると嬉しいですよね。そういった、市民目線での評価を行う取り組みです」

「環境」「人権・労働」「アニマルウェルフェア」など多角的に企業を評価

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企業のエシカル通信簿は、「持続可能な開発(社会)」「環境」「消費者」「人権・労働」「社会・社会貢献」「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」という7つの項目で企業を評価したもの。調査メンバーが企業の公開情報をもとに各項目を調査するとともに、調査票を対象企業に送り、エシカル通信簿を作成しました。
 

今年度は調査票を送った12社中、8社から回答があったとのこと。エシカル通信簿の結果は以下のとおりです。
 

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『企業のエシカル通信簿』第2回結果発表会 第2通信簿レイティングより)
 

この日は、7つの各項目ごとに、それぞれの特徴や課題について各担当者から発表がありました。

「持続可能な開発(社会)」「環境」:SDGsへの取り組みが急激に進展

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まずは1,2項目の「持続可能な開発(社会)」と「環境」。
「持続可能な開発(社会)」に関してはやはり、どの企業においても、SDGsへの取り組みが急激に進展したことが今年度の特徴です。しかしその一方で、ESD教育(※)の認知度の低さは課題として浮き彫りになりました。
 

(※ESD教育……持続可能な開発を実現するために発想し、行動できる人材を育成する教育)
 

持続可能な調達については、サプライチェーンでの浸透がまだまだ追いついていないことも課題として挙げられました。調達方針は多くの企業で策定されているものの、いままさに項目別の方針が検討され始めた、という印象です。
 

また、「環境」に関しては、環境行動を担当する専任部署がほとんどの企業で設置されていた一方、環境行動計画を策定している企業は2社にとどまりました。大きな課題としては、「持続可能な開発(社会)」の項目でも提言されたとおり、サプライチェーンに対するマネジメントをしている会社が1社もなかったことが挙げられました。

「消費者」、「人権・労働」:多様化する消費者、従業員にどう対応するか

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「消費者」の項目では、“消費者がその企業の商品を買うことで、社会的課題の解決にどれだけ貢献できるか”を基準にレイティングが行われました。
 

消費者対応の専任部署はすべての企業で設けられていた一方、どの企業においても消費者教育がまだまだ進んでいないことが課題として挙がりました。消費者に自社の製品やサービスを評価してもらうための情報として、外部の識者や消費者団体を交えた評価委員会を設置している企業が少なかったことも、やはり課題です。
 

また、多様化する消費者のため、ユニバーサルデザインを取り入れている企業はほとんどであったものの、環境ラベルについては取り入れている企業がまだ少なかったことも指摘されました。
 

「人権・労働」については、12社すべてが人権についての基本方針を明文化していました。多様性に配慮した働きやすい職場環境の整備のため、中でも女性の活躍サポートに取り組んでいる企業が多いのが特徴です。
 

たとえばファミリーマートでは、従業員の育児支援のため、保育園に入れなかった子どもを持つ従業員はベビーシッターを利用することができるなど、先進的な取り組みが見られました。
 

障害者雇用にもほとんどの企業が積極的であるなど、女性の活躍、障害者の活躍については目立つ取り組みが多く見られたものの、パワハラ・モラハラへの対応や、LGBTの従業員の受け入れといった分野に関しては、社内研修を積極的にしてほしいという意見が挙がりました。
 

また、今回調査したコンビニでは4社すべてでフェアトレードの商品の販売を行っていたものの、自社製品でフェアトレードの商品の開発をしているのはファミリーマートのみにとどまりました。今後、コンビニのように消費者の日常と密接に関わる企業では、よりフェアトレード商品が広まっていくのではないか、という予測もされました。

「社会貢献」、「平和・非暴力」:CSR活動の推進が明確化されていないことが課題

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「社会貢献」の項目に関しては、どの企業もガバナンス、コンプライアンスについては専任部署を設置して対応していること、ネガティブ情報の開示も進んでいることが評価されたものの、中長期の経営戦略にCSR活動の推進を明記している企業が1社しかなかったことが課題として挙げられました。また、他社の株を取得、保有する際にSRIの基準が明確化されている企業もほとんどないという結果でした。
 

一方で、社会貢献活動に関しては、NGOやNPO、市民活動などに対して公募型の助成活動を行っている企業が12社中6社と、半分近くであったことが印象的でした。
 

「平和・非暴力」の項目については、12社中10社が「1」という低いレイティングとなってしまった中で、ミニストップは、グループ会社のイオンが経営理念の中に「平和」と取り入れ、それに基づいてサステナビリティの取り組みを行っているという点が評価されました。

「アニマルウェルフェア」:動物実験は行わないという方針の企業が多数

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最後の項目は、「アニマルウェルフェア」です。多くの企業においてアニマルウェルフェアに対する取り組みが始まりつつあり、コマーシャルといったプロモーションの中で動物利用の削減が行われ始めています。
 

化粧品業では、動物実験に関するポリシーが対象企業の5社すべてで明確であり、どの企業も動物実験の代替方法の開発に意欲的であることが大きく評価されました。しかし、多くの企業で動物性の原材料については触れられておらず、今後の取り組みを期待したいところです。今回の対象企業の中では、ポーラ・オルビスが動物性原材料のアニマルウェルフェアについて検討していると回答を寄せています。
 

宅配業では、佐川急便が原則、動物の輸送を取り扱わないというポリシーを明確にしていることから高い評価を得ました。安易な宅配の引き受けは動物売買に加担してしまう可能性があることからも、宅配業は特にアニマルウェルフェアに気を配ってほしいとコメントが寄せられました。
また、コンビニは評価が一律であまり高くないという、少々残念な結果となりました。

市民と企業との“フレーミングのずれ”を解消することが重要

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発表会の報告を受け、東京都市大学名誉教授の中原秀樹氏からは、こんなコメントがありました。
 

「右目と左目でそれぞれ見え方が違うように、ひとつのものを見ていても、市民と企業でその見方が違うということはよく起こります。その“フレーミングのずれ”が大きくなってしまうことは問題だな、と思っています。
 

『人権・労働』の分野に関しては特に、そのフレーミングのずれを実感させられました。いま、パワハラやセクハラは市民の中で大きな問題になっていますが、印象だけでその線引きをしている企業が多いな、と。パワハラ・セクハラも、どこからがそうなのかを明確にすることがなにより重要です。その分野だけに限らず、フレーミングの違いが人の価値観や考え方をどのように変えているか、企業はじっくりと考えることが必要だと感じさせられました。
 

いま、世界の動きとしては、マルチステークホルダーミーティング(※多様な人々が多様な角度から話し合うミーティング)が進んでいます。サプライチェーンマネジメントが問われるこの時代、企業はさまざまな専門家や消費者の意見を聞いて、グローバルエコノミーの中でなにをしなければいけないのか、改めて考える必要があるのではないでしょうか」
 

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私たち消費者にとって、もっとも小さな社会活動は日々の買い物です。エシカルな視点で商品やサービスを見つめ、持続可能な社会により貢献している企業のものを選んで購入するというのは、立派な社会貢献のひとつ。消費者の行動が変われば、企業もそれを受けて変わっていきます。
こういった取り組みが増え、私たちがより多くの企業を“エシカル”を指標のひとつとして選択できるようになれば、社会や暮らしはより豊かになってゆく。──企業のエシカル通信簿 第2回発表会は、そう強く予感させられる場となりました。
 

「SDGs」について、詳しくはこちら:SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり

 
<編集・WRITER> サムライト

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