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SDGsイノベーションラボ「UNLEASH 2018」が実現するダイバーシティの場づくり

更新日 2022.02.03

2018年5月31日から6月6日の間、「SDGs(Sutainable Development Goals)」を元に、貧困や飢餓、ジェンダー不平等、環境破壊といった世界に現存する問題を解決するソリューションを生み出す、デンマーク発のイノベーションラボ「UNLEASH lab 2018」が、シンガポールの国立大学を舞台に開催されました。
 
オープンイノベーションの場として先進的な取り組みを行う「UNLEASH lab」は、セクター間のパートナーシップの実現やデンマークの教育を取り入れた手法から、世界でも注目を集めています。二回目となる今回は、デンマークで行われた初回同様、国連開発計画(UNDP)や、シンガポール政府、地元企業・団体、地元大学など、さまざまなセクターが関わるとても大きなイベントとなりました。
 
ラボには世界108ヵ国から1,000人もの若者たちが一堂に会します。ミレニアル世代を中心とした参加者たちは、チームをつくってインプットとアウトプットを繰り返しながら、SDGsアジェンダに沿ってソリューションを生み出していきます。
 
以前こちらの記事でもご紹介しましたが、主催するのはデンマークの非営利団体「UNLEASH(アンリーシュ)」。デンマークの大手ビール会社カールズバーグの会長であるFlemming Besenbacher さんの声がけで立ち上がった団体で、パートナー企業や団体は200以上にもなります。
 
今回扱われたアジェンダは、「目標2:飢餓をゼロに」「目標3:すべての人に健康と福祉を」「目標4:質の高い教育を」「目標6:安全な水とトイレを世界中に」「目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「目標11:住み続けられるまちづくり」「目標12:つくる責任つかう責任」「目標13:気候変動に具体定な対策を」の8項目。
 
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(これらのアジェンダはUNLEASHとパートナー企業のダイアログによって選ばれています)

参加者の内なる「INSIGHT(問題意識)」からグルーピング、フレームワークで具現化

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7,000人の応募から選ばれた1,000人の若者たちはまず、シンガポールの国立大学のひとつ「Nanyang Technological University(NTU)」で開催されたオープニングセレモニーに出席しました。
 
ここでは、UNLEASHの会長Flemming Besenbacher さんの開会の挨拶とともに、2017年の参加者によるアドバイスを盛り込んだプレゼンや、難民として各国を渡り歩いたビジネスマンのスピーチなどが行われました。
 
アイスブレイクで行われたレゴを使ってアヒルをつくるワークでは、一つのテーマでも違いが出てくることから、他者との視点の違いをみんなで共有しました。
 
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(プレゼンに良い刺激を受けた様子の参加者たち。会場はさらなる熱気に満ち溢れていました。)
 
次の日、SDGsアジェンダごとの部屋に別れた参加者たちは、UNLEASHオリジナルのシートを元に、自分のなかにある問題意識と向き合っていきます。「どんなことを経験してきたか」「なぜそれを問題だと思うのか」など、他の参加者とともに共有し、言語化することでより問題意識を明確にしていきます。
 
次に参加者たちは、自分の持っている専門知識や性格特性、セクターなどをペルソナシートに書き込んでいきます。そしてファシリテーターは、個人の「INSIGHT」とこのペルソナを元に、3〜5人ほどのグループを結成。
 
例えば水のアジェンダには、「アクセスができるインフラがない」「きれいな水がない」といった複数の問題が存在します。それぞれに興味がある問題ごとに小さなチームをつくり、チームビルディングを行っていきます。
 
このアジェンダごとの大きなグループには、10人ほどのファシリテーターが在中し、メインファシリテーターは2人、それぞれの小グループには2人ずつファシリテーターが入って、グループワークをサポートします。
 
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チームでまず行われることは、価値観の共有。大きな紙に円を書き、ディスカッションをしながら、大事にしたい言葉や考え方を円の内側に書いていきます。そしてその逆、やってはいけないことやチームの価値観にそぐわない言葉や考え方を、円の外側に書いていきます。
 
この作業によって、それぞれのパーソナルな特性、大切にしていることをより明らかにし、チームでワークをする際のコミュニケーションを円滑にしていきます。ラボは、育った環境や働く環境がまったく異なる人との協業です。言葉の捉え方ひとつにしろ、仕事の進め方、時間の概念など、ワークをスムーズに進める際にチームが配慮すべき点も共有することが大事になってきます。
 
「ここでの意識共有がとても大事だった」日本から参加していた人はそう話します。チーム内で独自のルールづくりを行ってプロジェクトを進めたことが、後のアウトプットに差を生んだそうです。
 
そうやってたくさんのディスカッションを重ね、ベースとなるチームの価値観を固めたあと、いよいよアイディアを元にディスカッションを行い、ソリューションへと発展させていきます。
 
ここで参加者たちは、UNLEASHが独自に開発したイノベーションプロセスを掲載したブックを元に、アイディアをフレーミングしていきます。先ほど出した問題に対する考えやキーワードを付箋に書き込み、アイディアをどんどん広げていきます。
 
さらに、一旦広げたアイディアのなかから、「チームの問題意識は何か?」「取り組みたい問題は何か?」「その問題の解決策はどんなものにするか?」をツリーに当て込んで深掘りし、チーム内で整理をしていきます。

まちに出てリフレッシュしながら意識を広げるアクティブラーニングへ

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ある程度アイディアを固められたところで、グループごとにまちへ繰り出します。ここでまちにある社会問題に触れたり、最新のテクノロジーに触れながら、アイディアのための新しいインスピレーションを得て、ソリューションに生かしていきます。
 
そして次の日参加者たちは、サポート企業であるシンガポール大手銀行「DBS BANK」主催のイベント「DBS MARINA REGATTA」へ。これは、健康に関するさまざまなアクティビティを体験できる「スポーツフェス」のようなイベントです。シンガポールでも有名なマリーナベイサンズの目の前、都市の真ん中に設置されたアスレチックとステージ、マーケットに、参加者たちは大興奮。
 
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缶詰状態でワークに取り組んできた参加者たちは、ここで一旦リフレッシュ。バナナボードに乗ったり、アスレチックにトライしたり、マーケットで買い物したりなど、それぞれの時間を楽しみました。
 
とはいえ、この体験も立派な学びの時間。体験を通して何を得るのか、どんな学びの入り口があるのかを知る良い機会にもなっているのです。実は、目標3「すべての人に健康と福祉を」において、達成度がもっとも高いシンガポール。こういったイベントも、SDGs達成に貢献しているようです。

ゲートチェックでアイディアをブラッシュアップ、最終プレゼンへ

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リフレッシュした参加者たちは、再びワークへ。チームはファシリテーターが行う「ゲートチェック」にアイディアを持って行きます。「ゲートチェック」とは、ファシリテーターにソリューションアイディアの進捗や完成度を確認してもらうというもの。
 
ここでファシリテーターは「必要な要素がきちんと入っているか」「マーケットに通用する内容か」「ダイバーシティを意識したソリューションになっているか」など、さまざまな視点でアドバイスを渡します。
 
日本人参加者の一人は、「褒める」「気づけていなかった視点を与える」「散らかってしまった意見をまとめる」これらがうまいファシリテーターをうまくつかまえたことで、期限内にアイディア出しが終わり、良いアウトプットができたと話していました。
 
また、各業界の専門家への相談タイムが設けられており、アイディアに何が足りないのか、アイディアがきちんと通用するものかどうかといったチェックを行う時間も用意されており、実現性をより高いものへとしていきます。
 
このような過程を経て完成したアイディアは、アジェンダごとのグループ内で一度プレゼンを行い、全員のファシリテーターから最終チェックを受けます。そして場所を移し「ドラゴンデン」と呼ばれるプレゼン大会へ。
 
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すべての参加者、ファシリテーター、パートナー企業がいる大勢の目の前で、完成したソリューションをチームでプレゼン。ここでは、パワーポイント、模型、演劇、さまざまなかたちで、多種多様なソリューションが発表され、最後は審査員たちによって今年の金賞、銀賞、銅賞が決定されました。

UNLEASH流 ダイバーシティを実現した場づくり

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(最終日のクロージングパーティの様子)
 
国連が発表した幸福度ランキング3位のデンマーク。教育で実践されている「他者をひとりの人として認めるフラットなコミュニケーション」「生産性を高めるために協調性を高める」「物事の背景から考える俯瞰した大局的視点」といったことが、ラボのなかにもたくさん散りばめられていました。
 
例えば、参加者たちのパーソナリティにフォーカスした時間をしっかりとつくるところ。
 
例えば、ほとんどのファシリテーターが「参加者の背景やここに来るまでの経験を思いやることに注意しながら場づくりしている」と回答したこと。
 
例えば、デンマークの成人教育機関「フォルケホイスコーレ」でも取り入れられているアッセンブリー(合唱)や、チームメイトの名前を呼び合うワークなど、チームの温度感を高めるさまざまなワークが用意されているところ。
 
例えば、ファシリテーターがチームに「なぜやるのか?」「何のためにやるのか?」に何度も立ち返らせるところ。
 
UNLEASHのなかにも、デンマークの哲学が脈々と息づいているような気がしました。
 
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(食堂で行われたアッセンブリーの様子。「Let it be」の替え歌で大盛り上がり。場に一体感が出ました。)
 
これを読んでいる皆さんは、普段同じ国、同じ業界、同じ職業の人と働いている人がほとんどなのではないでしょうか。その環境では、共通認識や共通言語が自然と出来上がっているかと思います。
 
しかしSDGsの文脈で、今後日本も、セクターや国を超えたパートナーシップの必要性が言われています。そういった共通言語や共通認識が出来上がっていない状態で、チームビルディングを行い、短期間でレベルの高いアウトプットを生み出していくために、どうしたらいいのか。そのためのヒントを、UNLEASH labのなかでたくさん発見することができました。
 
<編集>サムライト <WRITER>松尾沙織
 
Special Thanks : 合同会社フォルケ founder内藤崇さま

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