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海のプラスチックごみ、2050年までに世界中の魚の重量を超える恐れも

2021.05.12
山本智之
目標12:つくる責任 つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
インドネシア・バリ沖の海面下を漂うプラスチックごみ=朝日新聞社

インドネシア・バリ沖の海面下を漂うプラスチックごみ=朝日新聞社

30年以上前の「ハンバーグ袋」が海底に!

千葉県沖の海底で、大量のプラスチックごみが見つかった――。今年3月下旬、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中嶋亮太・副主任研究員らのチームが、海底のごみに関する調査結果を発表しました。

現場は、房総半島から約500キロの沖合。太陽の光が届かず、暗黒が支配する水深6000メートル前後の深海底です。この場所が、海に流れ出たプラスチックごみの「集積地」のひとつであることが、有人潜水調査船「しんかい6500」を使った調査で明らかになったのです。

この付近の海底に存在するプラスチックごみの密度は、1平方キロメートルあたり4561個にのぼります。大量のポリ袋のほか、風船や歯磨き粉のチューブも落ちていました。

泥をかぶって海底に横たわる「ハンバーグの袋」=JAMSTEC提供

そのうちのひとつは、レトルト食品の「チキンハンバーグ」の袋。製造されたのは「昭和59年」(1984年)であることが、袋の表面にあった刻印から分かりました。

なんと、捨てられてから30年以上たっても、ほとんど劣化せず、そのままの姿で海底に横たわっていたらしいのです。

このハンバーグの袋をみると、生物に分解されず、環境中にいつまでも残り続けるプラスチックごみの厄介さを改めて感じます。

プラスチックの大量生産は1950年代に始まりました。2016年までの生産量は計83億トンにのぼります。そして、世界では毎年、1000万トンを超えるプラスチックごみが海に流入し続けているといわれます。しかし、実際に海面に浮かぶ量はわずか44万トンとされ、残りの大部分の行方はよく分かっていません。

今回見つかったのは、そうしたプラスチックごみの集積地のようです。JAMSTECによると、海の表層から沈み込んだプラスチックごみは、1週間以内に水深4000~6000メートルの海底に到達すると推定されています。

回収してみると、「昭和59年」を示す刻印があった=JAMSTEC提供

クジラや魚の体内からもプラスチックが

プラスチックごみは、さまざまな海洋生物の体内からも見つかっています。

神奈川県鎌倉市では2018年、体長10メートル余りのシロナガスクジラが打ち上げられました。生まれて数カ月のオスで、すでに死んでいました。その胃の中からプラスチックごみが見つかり、ニュースになりました。

インドネシアの島に流れ着いたマッコウクジラのケースでは、ポリ袋やペットボトルなど、約6キログラムもの大量のプラスチックごみが胃の中から出てきたと報道されています。

クジラだけでなく、ウミガメや魚、海鳥など、国内外ではこれまでに200種類を超す海洋生物の体内からプラスチックが見つかっています。

鎌倉の海岸に漂着したシロナガスクジラ。体内からプラスチックごみが見つかった=朝日新聞社

海のプラスチックごみの量は年々増え続けており、2050年までに、世界中の魚の重量を超えてしまうのではないか、との予測も発表されています。

いま特に問題となっているのは、食料品の容器や飲料のボトルなど、一度使ったらすぐにごみになってしまう「使い捨てプラスチック」です。

プラスチックごみは、燃やして処理をすることもできますが、地球温暖化を招く二酸化炭素が発生してしまうという問題があります。また、リサイクルをするにも限界があります。このため、プラスチック製品の消費量そのものを抑える取り組みに力を入れるべきだと専門家は指摘しています。

最近、「マイクロプラスチック」という言葉をよく聞きます。プラスチックごみのうち、大きさが5ミリ以下のものをさします。こうした小さなプラスチックの破片や粒が、世界中の海を汚して問題になっています。

もともとは大きなプラスチック製品も、太陽の熱や紫外線、波の力などで細かく砕けることで、マイクロプラスチックとなり、海の中を長い期間漂うようになります。

このほか、プラスチック製品の原料である「レジンペレット」という粒や、化粧品などの成分として使われてきた「マイクロビーズ」、フリースなどの服を洗濯したときに出てくる細かい化学繊維も、マイクロプラスチックの一種です。

海辺で採取した砂の中に混じっていたマイクロプラスチック=山本智之撮影

マイクロプラスチックは海流に乗って広がり、美しい南の島々の浜辺はもとより、南極海でも見つかっています。

年々深刻化する海のプラスチックごみの問題は、「SDGs」(持続可能な開発目標)の中でも課題の一つとして位置づけられています。

SDGsとは、地球環境や私たちの社会を未来の世代につないでいくために、解決しなければならない課題をまとめたものです。「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」など17の目標があり、それぞれの目標を達成するために、具体的に何をするべきかを169項目の「ターゲット」で示しています。2015年の国連総会において全会一致で採択され、2030年までの達成を目指します。

17ある目標のうち14番目は、「海の豊かさを守ろう」です。この目標の中で、海のプラごみ問題について、「2025年までに海洋ごみなどを含む海洋汚染を防止し、大幅に減らす」というターゲットが設定されています。 

これまで見てきたように、私たち人類が排出したプラスチックごみによって、クジラやウミガメ、海鳥など、海に暮らす様々な生き物たちが苦しめられています。その解決は、「海の豊かさを守ろう」の大きなテーマとなっています。

ただ、プラスチックごみの問題は、私たちの暮らしを支える様々なプラスチック製品の作り方や使い方の問題でもあります。したがって、「つくる責任 つかう責任」(目標12)ともリンクさせて対策を考えていく必要があります。

さらに、プラスチックごみを処理するために燃やしてしまえば、大気中に二酸化炭素が出てしまいます。二酸化炭素は、地球温暖化の主要な原因物質ですから、プラスチックごみの問題を解決するための取り組みの数々は、「気候変動に具体的な対策を」(目標13)ともつながっています。

このように、SDGsの17の目標は、実はそれぞれがお互いに関係し、つながっていることが、海のプラごみ問題を通して見えてくるのです。

writer:山本智之

科学ジャーナリスト・朝日学生新聞社編集委員

1966年生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了。1992年朝日新聞社入社。環境省担当、宇宙、ロボット工学、医療などの取材分野を経験。1999年に水産庁の漁業調査船に乗り組み、南極海で潜水取材を実施。2007年には南米ガラパゴス諸島のルポを行うなど「海洋」をテーマに取材を続けている。朝日新聞東京本社科学医療部記者、同大阪本社科学医療部次長などを経て2020年から朝日学生新聞社編集委員。 ツイッターでも発信中。最新刊は『温暖化で日本の海に何が起こるのか』(講談社ブルーバックス)。

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