2030SDGsで変える
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食べ残しから、開発途上国に必要な新しい仕事まで。親子でともに考える地球のみらいは?【未来メディアカフェVol.13】

更新日 2022.02.03
目標12:つくる責任 つかう責任

子どもたちが毎日、口にする学校給食。そのうちのどれくらいが“食べ残し”として捨てられているでしょう?
――そう聞かれて「うーん」と考え込んでしまう方は、きっと多いのではないでしょうか。そして、そのような身近な社会課題について自分の子どもとじっくり話し合ったことがある、という方も、おそらくあまりいないのでは。

参加者と専門家、朝日新聞記者がともに社会的な課題に向き合い、解決へのアイデアを出し合うセッション「朝日新聞 未来メディアカフェ」。
2020年度以降の学習指導要領では、受け身の学びではなく、子どもたちが“主体的に”情報を活用する力を育てる、という目標が定められます。

13回目の開催となる今回の未来メディアカフェでは、「親子でみらいの地球について『ともに考える』」と題して、子どもと保護者の方が一緒に、ワークショップ形式で楽しくグローバルな課題(SDGs)について考える機会を設けました。

2017年6月3日、東京・築地の朝日新聞東京本社に集まったのは、小学生と、そのお母さん・お父さん計42人。
イベントの1部では朝日新聞記者の藤田さつきが、食べられるのに捨てられてしまう食べもの、「食品ロス」問題についての解説を行いました。そして2部は、子どもたちが討論や発表を通して主体的に取り組む「サス学(サステナビリティ学習)」のメソッドで、環境問題、貧困・飢餓など国連がまとめた2030年までに解決に向けて取り組む課題(SDGs)について、親子で議論。最後にミニ新聞を作り、表現力を磨きました。


SDGsについては朝日新聞デジタル記事(2017年1月31日)をご覧ください。

日本の食品ロスって、どれくらい深刻なの? ――“捨てないパン屋”の取材から

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▲朝日新聞記者の藤田さつき

5種類のパンしか売らず、週3日、午後にしか店を開けない。そして、焼いたパンは決して廃棄しない。広島市にそんな、ユニークな“捨てないパン屋”があります。素材にこだわる代わりに具材を減らして、手のかかりすぎない、日持ちのするパンを作っているのです。

捨てないパン屋「ドリアン」を取材した朝日新聞記者の藤田さつきは、日本の食品廃棄問題についてこう語ります。

「日本の食品ロスの半分は、家庭で生まれています。食べ残しや賞味期限切れなどが原因で、年間282万トンもの食品が廃棄されているんです。また、食品工場では、賞味期限自体は切れていなくても、ラベルの印刷ミスや計量ミスなどで廃棄処分になってしまう食品がたくさんあります」

昨年12月、クリスマスの翌日に行った取材では、ケーキやローストチキン、ロブスターといった食品が、関東地方の百貨店やスーパーなどから1日にして30トンも運び出され、廃棄されるのを目の当たりにしたそう。

また、記事の冒頭でも触れた学校給食は、1年間で1人あたりに換算するとなんと17.2キロ、ごはん茶碗115杯分もの量が捨てられていると言います。

「給食に関係のある資源は、なにも食べものだけではありません。給食の材料となる野菜や家畜を育てるための飼料、それらを運ぶための車の燃料、保存のための電気……といった資源も必要なんです。そういったことにまで目を向けてみるのも大切です」

すぐに食べるものは棚の後ろから取らない。食品廃棄量を半分にするために

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食品ロスが生まれる大きな原因のひとつは、消費者が品ぞろえの豊富さや食品の新しさを求め、事業者がそれに応えようと食品を多く作ってしまうこと。課題解決のために必要なのは、私たち消費者の意識を変えることです。

最後に藤田は、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者である井出留美さんが提唱する、食品ロスを減らすために今日からできる10か条を教えてくれました。

食品ロス10か条
■井出留美さん著「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」より

「みなさん、スーパーで買い物するときに、棚の後ろの方から食材を取るのがクセになっていませんか? ほとんどの人が、賞味期限ができるだけ長いものを……と後ろから選んで取るんです。でも、すぐに使うものならその必要はありませんよね。手前のものを選びましょう」と藤田。

国連は、世界全体の1人あたりの食品廃棄量を、2030年までに半分にするという目標を掲げています。これは国連が昨年、世界に向けて発信した『SDGs』という17個の目標のうち、「飢餓をなくす」「持続可能な消費と生産のパターンをつくる」という2つの目標にも大いに関わってきます。

『SDGs』の17の目標について、詳しくはこちら

私たちの日々の行動の積み重ねで生まれている、食品ロス問題。事業者だけでなく、消費者である私たち1人ひとりが、日々できることに取り組んでいくことが大切です。

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▲三井物産 環境・社会貢献部長の菊地美佐子さん

続く2人目の登壇者は、三井物産環境・社会貢献部長の菊地美佐子さん。今回のワークショップでも利用する「サス学」という学びのメソッドについて、説明してくださいました。

「サス学」は、“社会で起きていることをジブンゴトととらえ、サステナブル(持続可能)な未来をつくるための知恵や価値観を育む学び”。具体的には、インタビューやフィールドワークといった探究型の授業を通して、子どもの考える力を養う学習法です。

「サス学」は、毎年7月に三井物産本社で開催している「サス学」アカデミーでも体験できます。「サス学」アカデミーでは、全国から小学生が集まり、5日間にわたってポジティブな未来を企画・提案する課題解決型ワークショップを行っています。

解決に挑む課題のテーマは、実際に三井物産が66か国、139ヵ所の海外拠点などを通じて取り組んでいる事業が中心。調べる、考えるといった“インプット”と、制作する、発表するといった“アウトプット”の両方を通して、子どもたちが社会とのつながりを体感できる内容となっています。

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▲輪転機(新聞を印刷する大きな機械)を見学する参加者

「サス学」にまつわるお話のあとは、朝日新聞社内の報道・編成局や、新聞印刷工場の特別見学ツアーが実施されました。普段はなかなかできない貴重な体験に、子どもたちも目をキラキラさせていました。

南アフリカの栄養不良をなくすには? 世界の課題について、子どもと大人で考えよう

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続く第2部は、子どもと大人による課題解決型ワークショップ。SDGsに関連する3つの“社会課題”について、ファシリテーターであるネクスファ の杉浦正吾さんの指示のもと、グループで議論し、アイデアを出し合いました。

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▲「ネクスファ」代表の杉浦さん

「10個のグループを作りましょう。親子は分かれてそれぞれ別のグループに入ってくださいね」という杉浦さんの指示に、一瞬不安そうな表情を浮かべた子どもたち。
それでも、自分から積極的に自己紹介をしたりして、知らない子どもや大人たちとコミュニケーションをとっていきます。

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今回考えるテーマは、<①南アフリカの栄養不良をなくそう>、<②風力・水力・太陽光などの再生可能エネルギーを世界中に広めよう>、<③開発途上国に必要な新しい仕事をつくり出そう>の3つ。これらの中から、グループごとに多数決で好きなテーマをひとつ選びます。

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一番人気だったのは、③のテーマ。「みんながHAPPYになるサイクルを」というコンセプトのもと、“学ぶ→つくる→売る”の循環をつくり、問題を解決に導く『まんまるプロジェクト』や、先進国と途上国で食品や技術、仕組み、伝統を交換する仕事『サバンナ急便』など、子どもたちを中心に、たくさん面白いアイデアが生まれました。

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最後は、グループごとに新聞を作り、掲示板に張り出します。大人たちはサポートにまわって、子どもたちを後押しする役。子どもたちが主役となり、会場は大いに盛り上がりました。

社会課題解決のために、私たち1人ひとりができること

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『SDGs』にも掲げられている社会課題は一見、遠い国の出来事のように思えますが、実は私たちの生活にも強く関係、影響しています。

イベントのあと、「難しいテーマで最初は何をしていいかわからなかったけれど、グループですこしずつアイデアが出てきて前進しました。新聞にまとめる作業がとても楽しかった」と小学5年生の参加者が話してくれました。

また、「子どもに『行ってみない?』と聞いたら、意外にも『行きたい!』と言われたので来ました。印刷工場の見学がめあてだったみたいですが、初対面の人たちと新聞をつくるのが思いのほか楽しかったようで。私も子どものアクティブさにびっくりしました」と語ってくれたお母さんも。

身近な給食の食べ残しから、アフリカの飢餓問題にまで思いを馳せることができた、今回の未来メディアカフェ。子どもと大人が一緒になってさまざまな問題について勉強し、その解決法を考える、有意義な機会となりました。

guest:菊地美佐子

三井物産
環境・社会貢献部
部長

1984年三井物産入社。鉄鉱石部、広報部を経て、2001年広報部編集制作室長、2006年CSR推進部コーポレートブランド戦略室長、2009年同部地球環境室長、2015年より環境・社会貢献部部長。三井物産では、「環境」「教育」「国際交流」を中心とした環境・社会貢献活動に取り組んでおり、その一環として、未来を担う子どもたちの「サステナブルな社会」をつくる力を育むことを目的とした新しい学び「サス学」を展開している。

guest:杉浦正吾

ネクスファ代表

ワークショップファシリテーター博士。大手企業をクライアントにCSRコミュニケーションの企画運営をプロデュース。CSV視点で地方創成与件も手がける。近年は、「サステナビリティ社会」のあり方を探究する学び(サス学)を三井物産と開発し、幅広い対象にワークショップを実践している。2010年環境共生学会論文賞受賞。武蔵野大学大学院講師、専修大学KSソーシャルビジネスアカデミー講師。杉浦環境プロジェクト株式会社代表。

speaker:藤田さつき 

朝日新聞東京本社文化くらし報道部記者

2000年、朝日新聞社に入社。奈良総局、大阪社会部などを経て、2015年4月から文化くらし報道部。食やライフスタイル、子育てに関する取材を主に担当し、昨年9月から消費者庁を担当。SDGsの取材チームにも入り、食品ロスを減らす取り組みなどの記事を執筆している。

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