持続可能なまちづくりはどうあるべきでしょうか。地域でどのように住民の協力を得ていくべきなのでしょうか。一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)理事の長島美紀さんは昨年10月から、朝日新聞との共催オンラインイベント「地域のSDGs実践者に聞く」でモデレーターを務めています。SDGsに関する地域の現状と課題について聞きました
危機感強める自治体 まちの再設計が不可欠に
多くの自治体が、人口減少と高齢化に直面しています。2014年に政策提言機関「日本創成会議」が発表したリポートでは、約半数の自治体が40年までに消滅する可能性がある、との試算がでました。国は財政難ですので、補助金に安易に頼ることができない時代です。多くの自治体が「このままでは地域が存続できない」という強烈な危機感を持っています。
地域を存続させるには、人とお金が必要です。魅力を高め、いかに人を呼び込むか。そのためには、まちのありかたを再設計する「リデザイン」が欠かせません。SDGsの掲げる17の目標は、道しるべになると思います。

いまの地域に欠けている視点や取り組みは何か。これから、どんな方向をめざし、政策をどのように組み立てていくべきか――。そうしたことを考える際、SDGsは課題解決につながる視座を与えてくれます。自治体が変わり、地域のブランド力を高めるきっかけになると思います。
地域全体で解決 高知県土佐町、京都府亀岡市
これまで3回、オンラインイベントを実施しました。いずれの地域も、目の前の課題に対症療法で臨むのではなく、ものごとを分野横断的にとらえ、地域全体、社会全体で解決策を考えているように感じました。その先に、リデザインした社会が見えてくるのではないでしょうか。
たとえば、初回の高知県土佐町は、地域の環境や経済、過疎高齢化を踏まえ、住民の意識啓発に腐心しています。耕作放棄地の保全や山林育成にも目を配り、幅広い視点で防災・減災を捉えています。

2回目の京都府亀岡市は、地元の保津川(桂川)に漂着したプラスチックごみの問題で環境への意識が高まった自治体です。全国で初めてプラスチック製レジ袋の配布を禁じる条例も制定しました。その意義を住民が理解し、協力しているからこそできる取り組みなのでしょう。こうした取り組みは広がっていくと思います。

地域を支える人に魅力 宮城県気仙沼市
3回目は「人を育てるSDGs」として宮城県気仙沼市を取りあげました。東日本大震災を機に地域に飛び込み、地元の課題解決に力を尽くしているNPOの方をお招きしました。地域を支える人に注目した動きで、いかに自分たちの暮らしの足もとを見ることが大切かを学びました。

宮城県気仙沼市(同法人提供)
エシカル消費でSDGsを 東京都墨田区
取りあげた自治体以外にもユニークな取り組みはあります。東京都墨田区は、伝統産業を支える人が数多く働く地域で、エシカル消費を意識したものづくりが進んでいます。消費という観点からSDGsを捉えている点がユニークです。
私たちは行き着くところ、ひとりの消費者です。買った製品や商品がどれだけ環境に優しいか、という視点が必要でしょう。一方、生産者は、社会や環境に配慮したものづくりができているかが問われています。経済との関わりが強いのもSDGsの特徴といえます。
少数者の声を地域に 社会の仕組み再構築へ
今後は持続可能な観光、外国人との共生、ジェンダーの3回を予定しています。SDGsは自分の地域を見つめ直すきっかけになるテーマです。自治体行政の話は、国政より身近で私たちの暮らしに直結しています。自治体や地方の政治に興味のない方もオンラインイベントを通じ、そうした点に興味を持って頂けたら、と思います。
地域社会には、障害者や海外にルーツを持つ人の声が十分に届いているとはいえません。そうした人の声をどのように拾い上げ、誰ひとり取り残さない社会の実現をめざしていけば良いのでしょうか。私たちの課題であり、社会の仕組みを再構築する必要があると感じています。そうした観点で地域とSDGsを考える際、NPOの取り組みにも光が当てられるべきだと考えています。
「地域のSDGs実践者に聞く」は1~3月にも開催します。取りあげるテーマと自治体は次の通りです。
1月13日「観光とSDGs」金沢市
2月10日「外国人共生の未来」北海道東川町・神戸市
3月10日「ジェンダーギャップ解消に向けて」兵庫県豊岡市 参加無料で朝日新聞デジタルの会員登録が必要です。(http://t.asahi.com/wleh) 過去の動画もご覧になれます。(https://miraimedia.asahi.com/movie/)