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認知症の人の視点に立って考えたことはありますか?〜「認知症フレンドリー」でSDGsの実現へ~

更新日 2022.02.03
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

▲徳島県鳴門市で開かれた「認知症フレンドリー講座」

 「認知症はひとごと」「できればあんまり考えたくない」「いずれ両親がなるかもしれないけど……」。認知症について多くの人がこのような印象をお持ちではないでしょうか。しかし、認知症の問題は日本社会に横たわる大きな社会課題です。「数の問題」で考えると、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人、約730万人(※)が認知症になるといわれています。このデータはさまざまな資料で引用されていますので見聞きしたことがあると思いますが、認知症の人の数は今後さらに増えるとみられています。

 福岡県久山町で世界的にも有名な高齢者の疫学調査を長年実施している九州大学の二宮利治教授の統計によれば、今から40年後の2060年には、認知症の人は850万から1154万人になると推計されています。この頃には高齢者の3人に1人くらいは認知症になっていると考えられます。超高齢社会である日本にとってどれだけインパクトがあることかおわかりいただけると思います。

 そうした状況を踏まえ、朝日新聞社では創刊140周年を機会に「認知症フレンドリープロジェクト」を立ち上げました。これは認知症の人が今後増えていく社会において、認知症になったとしても今まで通り住み慣れた地域で、安心して暮らしていける社会の実現を目指したものです。
 新聞社としての役割を果たすべく部門横断型の取り組みで、紙面では認知症の人の思いを伝える新連載や特集紙面を立ち上げたり、イベントやシンポジウムを開催したりするなど多彩な展開をしています。

▲朝日新聞社の社内賞である2019年SDGs大賞に「認知症フレンドリープロジェクト」は選ばれた

 そうした取り組みの一環として、認知症のことを理解し、認知症の人とともに暮らす社会のあり方を考える出張講座「認知症フレンドリー講座」を2019年4月に立ち上げました。これまでに自治体や企業、学校など全国200カ所以上で開催し、約5千人に受講していただきました。

▲認知症フレンドリー講座の様子

 同講座では、専門家の解説動画を交えながら、講師が認知症の基礎知識などを講義します。認知症の人のインタビュー動画があり、「認知症になると何もできなくなると思われがち」「必要なことだけ手助けし、本人が自立して生活するためのサポートを」などと訴える声を紹介し、周囲がどう寄り添ったらいいのかなどを受講者に考えていただきます。

 朝日新聞社が独自に開発したVR(バーチャルリアリティー)動画も特徴の一つ。空間の把握が難しくなって階段を恐る恐る下りたり、幻視で見えた子どもに話しかけたりと、認知症の人の見えている日常の視点を疑似体験していただきます。

 2020年10月と12月、徳島県鳴門市の櫛木ボランティア会(上原規志夫会長)の主催で同講座が開催されました。マスク、ビニール手袋の着用や会場の換気の徹底など感染対策をして実施され、地域住民に加え、飯泉嘉門県知事と岡田理絵県議会副議長、泉理彦鳴門市長を含む自治体関係者ら計80人ほどが参加しました。

 冒頭にあいさつした飯泉知事は県内の高齢化率の高さに触れながら、「県として率先して、認知症になっても住み慣れた地域で快適に暮らせるモデルをつくっていきたい。認知症を『自分事』として学び、身近な問題として恐れることなく前向きにとらえていただきたい」と話しました。参加した主婦の盛井操さん(73)は、「認知症になると周囲に迷惑をかけるものと思っていましたが、その人自身をちゃんと見て付き合うことが大切だと学びました」と感想を述べました。

 一方、2020年9月からはオンライン配信も開始しました。岐阜市民病院認知症疾患医療センターは市内の医療・福祉関係者向けの研修に採用。同年12月と2021年2月の計2回導入し、合わせて約60人が視聴しました。
 同センター相談員の村瀬智明さんは、「募集開始後、定員がすぐに埋まりオンラインでの受講希望が強かったことが印象的だった」と話しました。視聴者からは「自宅にいながら認知症の人の思いが聞けてよかった」などの感想が届いているといいます。

 認知症の問題は今の日本にとって避けて通れない課題です。しかし「ひとごと」としてとらえる風潮がありますし、それがゆえに誤解や思い込みが広がっていると考えられます。

 人が老いていくことは自然なことですが、高齢化にともなう症状、なかでも認知症は誰もがなる可能性があります。まずは「自分事」として考えていただくことで、認知症になったとしても安心して暮らしていける社会の実現に少しでも近づけるのではないでしょうか。


(※)厚生労働省「新オレンジプラン」

writer:坂田 一裕  朝日新聞社総合プロデュース本部認知症フレンドリーユニット

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