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文字を書いて脳を活性化 手書き文字に現れる認知症のサイン

更新日 2021.08.16
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2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとみられています。認知症は、ゆっくりと進行していくことから、本人も周囲も気づきにくい場合が多いといわれます。そういう中で、「文字から心理状態を読み解く」研究を行ってきた筆跡カウンセラーの石﨑白龍さんと脳神経外科医で認知症を専門とする濵﨑清利さんがタッグを組んで、文字を書くことで脳を活性化できる文字トレを本ににまとめました。


編集者として関わった徳間書店の苅部達矢さんは「石﨑さんは、文字を変えることで、行動が変わる。行動が変わることで、習慣が変わる。習慣が変わることで、人生が変わることを、10万人以上の文字を見るなかで実証されきました。実は、私も私の家族も1年以上前から指導を受けさせていただき、何がどのように変わるかを実感してきました」と話します。文字からどのようなことが分かるのか。具体的な事例と合わせて見ていきます。

以下は、石﨑白龍著/浜崎清利監修『書くだけで発見・予防・改善! さよなら認知症文字トレ』(徳間書店)から抜粋。
記事の最後に本のプレゼントの案内があります。

なぜ文字を書くことが脳にいいのか

石﨑 私は約20年にわたり、筆跡カウンセラーとして「文字から心理状態を読み解く」研究を行ってきました。
最初に注目したのが子どもの文字でした。のべ2万人を超える子どもたちの文字を診るなかで、文字の特徴に子どもの心理状態が現れることに気がつきました。さらに、8万人以上の大人を診るなかで、「文字に認知症のサインが現れている」ということを確信するようになりました。そこで次第に医学的なエビデンスがほしい、もっと認知症対策の文字トレをブラッシュアップしたいと思うようになりました。そんな折に濵﨑先生との出会いがありました。


濵﨑 石﨑先生と初めてお会いしたのは、アンチエイジングをテーマに開催された講演会で、ともに登壇者としてご一緒したときでしたね。講演後に石﨑さんから、「ちょっとご相談したいことがあるのですが」と声をかけていただいたのがきっかけでした。


石﨑 講演会での濵﨑さんのお話を伺うなかで、濵﨑さんが脳神経外科医であるばかりか、とくに認知症の治療に力を注いでいらっしゃると知って、その瞬間、「ついに出会えた!」と運命を感じてしまいました(笑)。


濵﨑 ありがとうございます(笑)。私は私で、石﨑さんの活動に関心を寄せていました。
なぜならば、脳科学の分野でも、文字と脳の関係性についての研究がさかんに行われているからです。脳科学の世界におけるこれまでの研究で、脳の機能が低下すると文字に現れることがわかっています。
脳科学的にも、文字は認知機能低下のサインだと言えるのです。

なぜ、文字トレが認知症にいいのか

濵﨑 認知症は、突如として「記憶障害」や「失認」といった深刻な症状に陥るというわけではなく、個人差はありますが20 年くらいかけて徐々に進行していきます。ですから、認知症かどう、本人も周囲の人たちも気づかないことが多いのです。


石﨑 そんな発見しづらい状況のなかで、書き文字は初期の認知症を見抜くことができます。 つい先日も、会社員として現役で働いておられるかたの文字を見て、「物忘れが激しくないですか?」と聞いたら、「そうなんです!」と。そこで文字の改善指導をしたところ、日に日によくなられました。

濵﨑 素晴らしいですね。文字から認知症を早期発見できるということは、早期治療に通じます。
石﨑 先生は「認知症バイバイ体操」を発案されていますが、脳の血流を増やすためには、呼吸を整えながらゆっくりと行うことがポイントだと。文字を書くことと同じだなと思いました。


濵﨑 私は手書きで文字を書くことも運動のうちだと捉えています。指先を動かすことで脳に刺激を与え、血流をよくすることが期待できるのです。


石﨑 医学的に見て、文字を書くことで認知症を改善することは可能だといえますか?


濵﨑 文字を書くことで完全に認知症が治るというのは考えづらいです。そもそも、子どもの名前を思い出せないところまで症状が進行しているかたの多くは、文字を書く行為自体ができないことが多いですから。
ただし、初期の認知症であれば、文字トレをすることは、とても有効だと考えます。症状の現状維持、あるいは進行を遅らせることも可能だといえるでしょう。

認知症の5つの典型的な症状をチェック

記憶障害 物忘れ
見当識障害 時間や場所、季節などが認識できない
実行機能障害 仕事や家事ができなくなる
理解・判断力の低下 文章の理解ができない・道に迷うなど
失認・失語・失行 人や物がわからない・言葉を忘れる・動作を真似できない

診断例)マスに「口」という漢字を3文字書いてみてください。

(診断結果)下の接筆や終筆が開いている人→物忘れしやすい

物忘れの多い人は、下の接筆(線と線の接触するところ)や終筆(線の書き終わり)が開いています。1カ所は軽度、2カ所はもの忘れが頻繁に起きている可能性があります。

<実践例 記憶障害用>

記憶障害について

食事をしたばかりなのに、「食事はまだか」と言い出したり、ついさっき話したばかりの人に「久しぶり」と声をかけたり……。
記憶障害になると、新しい出来事を脳に留めておく即時(短期)記憶が難しくなります。 即時記憶障害ともいわれるこの症状は、アルツハイマー型認知症の初期段階でよく見られます。
この段階で「認知症かも」と家族や周囲の人たちが疑うケースが多いようです。記憶障害(物忘れ)が続き、コミュニケーショントラブルが増えると、人は不安になっていきます。不安障害も認知症の周辺症状の一つです。
文字を正しく書けなくなっていることを観点に、物忘れに早期に気づくことができれば、改善する方法はいくらでもあります。
記憶障害は、文字診断、文字トレのなかで、一番重要かつ典型的な中核症状といえます。
文字診断において物忘れが顕著だと診断されたかたは、認知症を発症する前の軽度認知障害であるかどうか、医療機関を受診して、総合的な診断を受けることをお勧めします。

文字に現れるのはバランス感覚

石﨑 「紙に文字を書いてください」とお伝えすると、マス目から飛び出すほど大きな文字を書くかたがいます。これも認知症の特徴だといえますか?


濵﨑 断言はできません。年齢に関係なく、結婚式の芳名帳などで次に書く人のスペースにまで及ぶほどの大きな字を書く人はいますよね? ケースバイケースですが、たとえば、書いているうちに文字が次第に小さくなっていくという場合には、パーキンソン病である可能性が高いでしょう。


石﨑 なるほど。私は認知症を疑う目安のなかでも、とくに「目」という文字で横線と横線が等間隔になっているのか、「曲」という文字において極端に右上がりになっていないかなどに着目しています。
非等間隔である場合や、文字が水平でない場合も、ご本人はきちんと書いているつもりだと話されることが多々あります。


濵﨑 つまり、文字にはバランス感覚が正常に保たれているかどうかということが現れるのです。筆圧の強弱にしても、脳のなかで変電所の役割をしている「視床」というところがきちんと働いていないとバラつきが出ます。脳のなかに流れる電気の強さをうまく配分することができるといった
イメージです。ですから、文字を書いたり、絵を描いたりするには、視床を正常に働かせる必要があり、そのためには枠のなかに文字を収めて書く練習や、塗り絵などが効果的なのです。

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