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助け合いの社会に向けてSDGsを考える〜コロナ禍におけるレジリエンスとは〜【未来メディアキャンプ特別編】

2020.12.23
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
イベントイメージ

朝日新聞社と慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(以下、慶應SDM)が主催し、一般社団法人Think the Earthの運営協力により、さまざまな社会課題に対する新たな解決策について議論していく未来メディアキャンプ。2020年のテーマは、「原点に戻ろう キャンプ サバイバル 森」と設定し、2020年10月に未来メディアキャンプのリアルイベントを計画していましたが、コロナ禍にあって実施を断念。そのため今年は「未来メディアキャンプ特別編」という形で、オンラインイベントを11月27日に開催しました。

オンラインイベントのテーマは、「助け合いの社会に向けてSDGsを考える〜コロナ禍におけるレジリエンスとは〜」。イベントでは、はじめにサバイバル体験を通じて生き抜く力を養成する一般社団法人72時間サバイバル教育協会代表理事の片山誠氏と、取材出張先のアメリカ・ニューヨークからの参加となった朝日新聞社GLOBE編集部の山本大輔記者によるプレゼンテーションを実施。その後、第2部としてお二人に加え、一般社団法人Think the Earth理事の上田壮一氏をモデレーターに、慶應SDMの神武直彦教授も交えたクロストークが行われました。そのイベントの模様をリポートします。

◇(参考記事)自助・共助の思考で生き抜く力を。「未来メディアキャンプ 2020」に向けた新しい試みとは?

「『生きる力』と『足るを知る』ことで、自分に余裕が生まれ、自助・共助が当たり前の社会につながる」(片山 誠)

無人島研修中
▲無人島研修中に参加者が自作の蒸留装置で何とか工夫して水を得ようとしている場面

「世の中に多く存在する社会課題は、助け合いの社会が実現することで解決すると思っています。SDGsのいくつかの項目が生み出された根本的な背景にも、自己防衛による対立や差別があります。では、なぜ対立や差別が起こるのかというと、それぞれが日々生きることに余裕がないので、他者を尊重したり助けたりすることが難しくなっていることが原因ではないでしょうか。

私が提供しているサバイバル体験では、サバイバルスキルを身につけることがゴールではありません。想定外のことが起こったときに、どう行動するのか。自ら考え、判断し、行動に移せる『生きる力』を身につけていただくようにプログラムを構成しています。

では、なぜ『生きる力』にこだわるのか。それは助け合いの社会をつくるうえで、自分に余裕を持つことが重要だと考えるからです。『自分に余裕がない』とは、『お金がない』『時間がない』などと感じる状態だけではありません。それを理解する上で大事となるのが『足るを知る』ことです。

『足るを知る』ことで、幸福の価値観を見直すことにつながります。たとえばキャンプを経験することで、平らな場所で寝ることなど、これまで当たり前だと感じていたことが実は幸せなことなんだと感じてもらう。と同時に逆境にも何とか対応する経験をすることで、自信がついて自己肯定感があがる。そうなると自分に余裕を持つことが出来て、自分以外の困っている人にも目を向けられるようになる。そんな人が増えることで、自助・共助が当たり前の助け合いの社会に近づけていけるのではないかと考えています。

私から参加いただいた方に宿題を出します。家族、または友人と、キャンプまたはご自宅でミニマムな生活を1~2日過ごしてみてください。そのときに、皆さんがどのレベルで幸福を感じられるか、ご自身の価値観を改めて考えてみてください」

「自分ごと化するためにどう伝えていけばいいのか、試行錯誤しています」(山本大輔)

NY現地報告
ニューヨーク・マンハッタンイメージ
▲コロナの影響で、平日でも閑散としたニューヨーク・マンハッタン

「米大統領選直前に渡米し、現在ニューヨークにいるので、現地で感じたことを中心にお話しします。大統領選は、アメリカ社会の分断を強く反映した選挙となりました。生活のあらゆる場面で分断を感じます。日本とは桁違いの新型コロナウイルス感染者数を記録しているアメリカですが、例えばマスク着用の判断に支持政党の方針が影響されるなど政治化しており、分断の深刻さを物語っています。

一方で、マスクをしている人たちの中でも、マスクによって何が防げて何が防げないのかなどの理解が浸透していないと感じました。マスク着用を自分ごととして捉えてもらうためには必要な情報です。そうした理解を深める伝え方をメディアもする必要があります。

アメリカは歴史的に、individualism(個人の自由、権限)の概念に重きを置く国です。Individualismを犠牲にしてまでマスク着用などの公衆衛生を重んじるという考え方は、米国的ではありません。コロナ禍で直接被害にあったことで、公衆衛生を優先しようという考え方がようやく浸透しつつありますが、それも一時的な対応という前提に立った理解で、長引けば長引くほど反発は必然です。こうした国民性が、社会分断とともに、アメリカを世界一のコロナ感染者数、死者数の国にしてしまっている大きな要因だと考えています。

バイデン次期政権が最優先課題に位置づける気候変動問題も、Individualismの国で、多くの人にどこまで自分ごととして実感を持たせられるかが鍵となります。コロナ禍で人々の活動が制限され、その結果、世界各地で一時的ではありますが顕著な空気の浄化が起きましたが、実体験があると身の回りに起きたことは自分ごと化しやすい。自分ごと化すると、問題意識も持ちやすい。では、どのような伝え方をすれば、読者に自分ごとの意識を持ってもらえるか。ジャナーリストして試行錯誤する毎日です。

ネット時代になり、記者自身の意識を前面に出した記事がよく読まれるようになりました。そうしたこともヒントにしながら、自分ごと化してもらうための伝え方を、追求していきたいです」

SDGsイメージ

社会課題を「自分ごと、自分たちごと」にするには?

第一部の片山氏と山本氏のプレテンゼーションでは、「自助・共助」と「自分ごと化」というキーワードが繰り返し強調されました。2つのキーワードは、密接に絡んでおり、SDGsに取り組むうえで欠かせない言葉です。第二部では、モデレーターの上田氏と神武教授も加わり、「(社会課題を)いかに自分ごと化できるか」というテーマで話が進んでいきます。

上田 コロナ禍の今、片山さんが仰っていたように想像できなかったことが起きています。この機会から、どうやって考え学び、自分で行動するのか、一つの試練として私たちの前に立ちはだかっているのだと捉えなくてはとあらためて思いました。また、日本にいるとニューヨークの状況がリアルに想像できないのですが、山本さんのお話を聞いて、想像力を働かせることができました。自分ごと化して話している人のお話を聞くと実感が伝わってくるから、聞き手の自分ごと化につながりますよね。

神武 自分ごと化は、やはり今回のキーワードですね。大事なことは、いかに正しく理解し、考える力を身につけるかということだと思います。

一方、10年前と今の状況を比べると、テクノロジーとデータの高度化とコモディティー化が進んでいるという違いがあります。たとえば、人工衛星のデータを使って分析すると、自動車から出る大気汚染物質排出量のコロナ前後での変化を可視化できるのが今のテクノロジーです。これらは、自分ごとにするための武器になります。

片山 自分ごと化は、社会課題解決に必要です。でも、子どもたちと貧困問題を解決しようとしても、実際にその子どもたちが貧困に身を置いているわけではないため、自分ごと化するための場づくりに試行錯誤しています。山本さんは、この問題に対してどのように思われますか?

山本 私自身、伝え方の解決策は模索中ですが、思いつくことはいくつかあります。

まずは、自分が貧困の状況に置かれていなくても、現場体験などを通じて貧困の状態をじかに見てもらうことで、自分ごとにしやすくなると思います。我々記者は現場でのルポ取材がとても重要です。アメリカがコロナ感染で世界最悪の状態にあることは情報としては知っていましたが、実際にニューヨークで現場取材したことによって、全米で連日18万人規模という感染者数が出ている深刻さと恐怖感が自分ごととして実感できました。(アメリカの11月27日までの1日あたり最多感染者数)。自分で見て、感じてもらうことが、自分ごとの意識を養う一番の近道だと考えます。

また、自分が関心を持っているものと組み合わせて提起してあげることも有効ではないでしょうか。たとえば、その人の関心が漫画なら、それと貧困問題を組み合わせて問題提起するという工夫です。

神武 片山さんが提供するサバイバルキャンプを私も体験しました。キャンプでは普段使っていないアイデアや知恵が出てきましたが、いわゆるティーチングではなくコーチングが大事だと思っています。その意味で、片山さんは、参加者を放置しているようでしていない絶妙なバランスを保ちながら、キャンプを運営し、コーチングされていますね。

片山 キャンプでは、参加者の行動や言動を観察しています。そして、火起こしできることがどう助け合いにつながるのかということと、自助から共助へつなげることを意識して運営しています。火起こしできるスキルを教えているわけではありません。何のために実施しているのかを考えることが重要だと考えています。

上田 SDGsも自分ごと化がキーワードです。好きなことから社会課題と結びつける方法はよいですね。好きから始まる体験の積み重ねのなかで仲間ができ、自分ごとが「自分たちごと」(※)になっていくことで大きなインパクトをもたらすことができるのだと思います。

※「自分たちごと」は北海道大学准教授だった故渡辺保史さんが、個人と社会をつなぐデザインのキーワードとして深めていた概念。

まとめ

SDGsを考えるうえで大切な「助け合い」の精神を養うには――。イベントでは、助け合いの社会づくりに向けて大切な「自助・共助」や「自分ごと・自分たちごと化」についてさまざまな意見が交わされました。

◇視聴者から多くに質問・感想が寄せられました(一部抜粋)。

■片山さんセッション
【質問】
・現在、片山さんがキャンプなどを通じてサバイバル力をつけて欲しいと思われる「みんな」とは主に子供たちですか。つまり未来を背負う世代を対象とされているのでしょうか。
【感想】
・どうなっていたら自分に余裕ができて他人に目を向けられるのか。いま、抱えているものを手放すことのように思います。身軽にすることですかね。物も気持ちも抱えない。

■山本さんセッション
【質問】
・教養の有無と分断と”余裕”には関係がありそうな気がします。トランプ派は教養無さそう、視野が狭いように映ります。合理的で目的意識の明確さの裏返しなのでしょうか?
・スウェーデンに住んでいます。マスクまで分断社会のシンボルというのは驚きです。トランプ政権下Induvidualism 米国ファーストが蔓延してきましたが、今後欧州や日本がバイデン新政権とコラボして「助け合いの社会」を推進していく必要があると考えています。日本ができる役割、提言についてどのようにお考えですか。
・「自分ごとに考える」について、日本財団や内閣府の調査でも日本の若者の社会問題や政治への意識が極端に低いのが明らかになっています。米国で学校にいかれた山本さんは日本と何が一番違うとお考えですか。

■クロストーク
【質問】
・片山さん宛 子供が問題意識を持ってサバイバル講習に参加するというよりは問題意識を持つ親が子供を参加させるケースがほとんどだと思います。そうだとすると親への教育のほうが必要だと思いますが、この点についてどのように対応されていますか。
・神武先生宛 得意な事がない子にはどの様にアプローチされているのか知りたいです。
・山本さん宛 気候変動問題(地球温暖化)について、日本においては例え産業革命時代から4℃上昇したとしても住めなくなるような地域は海水の上昇による沿岸部の土地が減る部分以外はでてこないと思います。そうした恵まれた土地に住んでいる日本人にとって、どうすれば気候変動問題を身近な問題として捉えることができるようになるでしょうか。
【感想】
・先進国が途上国を搾取して貧困を生み出していると思います。まずは先進国各国が食料自給を途上国に頼らないシステム作りがとても大切だと思います。
・日本の子供たちに貧困を自分ごととして捉えてもらう手立ての一つとして、自分たちの生活が世界の貧困を生み出す原因にもなっていることを分かりやすく伝えてあげることも重要かと思います。
・仲間を見つけて一緒に仕事をするっていうことには大変共感します。しかし田舎にはそういった人たち(地区外の人や若者)を受け入れる多様性がなく排他的な意見の方が多い。小さな成功体験を積み重ねていくしか手はないと思いますが、地域の人は短期的成果を求め、結果が出ないとすぐあきらめてしまう人が多い。持続あるまちづくりは楽しくて経済的利潤がないとボランティアでは難しいと思います。

今回のメインテーマである自助・共助の社会。そんな社会を築くには、幸せの価値観をいま一度見つめ直し、自分に余裕を持つことで他者に対する見方も変わっていく。そのためのキーワードである「自分ごと・自分たちごと」化は、大きなインパクトをもたらします。今年の「未来メディアキャンプ」は、コロナ禍の影響によりリアルイベントではなく、オンラインイベントという形で実施しましたが、助け合いの社会をつくるうえで、あらためて本質を確認するイベントとなりました。今後も助け合いの社会をテーマとして、引き続きSDGsについて考えていきます。

片山誠氏
speaker:片山 誠

一般社団法人 72時間サバイバル教育協会 代表理事

アウトドアツアーを運営する株式会社ココロ代表取締役。東日本大震災時にボランティア活動で東北に通う中、未来を見据えた時に、子どもたちが自力で生き抜く力を身につけることが大切だと実感し、2013年に仲間と共に一般社団法人「72時間サバイバル教育協会」を設立。固定観念にとらわれずに自ら考えて行動できる人を増やしていくために全国で講習・講演活動中。JOLA2019優秀賞受賞。著書に「もしときサバイバル術Jr」「車バイバル!」など。

72 時間サバイバル教育協会  https://72h.jp/

神武直彦氏
speaker:神武直彦

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

慶應義塾大学卒業後、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構JAXA)入社。H-IIAロケットの研究開発と打ち上げなどに携わる。欧州宇宙機関研究員を経て、JAXA主任開発員。国際宇宙ステーションや人工衛星に搭載するソフトウェア独立評価の統括や、宇宙用ソフトウェアに関する国際連携に従事。2009年より慶應義塾大学准教授、2018年同大学教授。専門分野はシステムズエンジニアリング、デザイン思考、社会技術システムのデザイン、宇宙システム、IoTなど。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 http://www.sdm.keio.ac.jp/

(推薦図書)ドネラ・H・メドウズ氏

・「世界はシステムで動く――いま起きていることの本質をつかむ考え方」

・「システム思考をはじめてみよう」

上田壮一氏
speaker:上田壮一

一般社団法人 Think the Earth理事/プロデューサー

広告代理店勤務を経て2001年にThink the Earth設立。以来、コミュニケーションを通じて環境や社会について考え、行動するきっかけづくりを続けている。主な仕事に地球時計wn-1、携帯アプリ「live earth」、プラネタリウム映像「いきものがたり」のほか、編著に『百年の愚行』『1秒の世界』。2017年にSDGsの教育普及プロジェクト「SDGs for School」を開始し、書籍『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』を出版。グッドデザイン賞審査委員(2015-2017)、「STI for SDGsアワード」選考委員(2019-)などを歴任。多摩美術大学客員教授。

Think the Earth  https://www.thinktheearth.net/jp/

山本大輔氏
speaker:山本大輔

朝日新聞社GLOBE編集部 記者

1972年東京生まれ。中高大学と米国ニューヨークで育ち、帰国後の98年8月入社。長野支局を振り出しに、外報部(現・国際報道部)、政治部(外務省担当・野党担当)、アジア総局特派員、週刊アエラ記者などを経て現職。父も元新聞記者(他社)のため、血で記者になったと思っている。人間が好きで多くの人に会える職業だったことも動機の一つ。昨今は国際関係の仕事が多い。動物も大好きで犬3匹、猫3匹と暮らす。無類のアニオタ。宝物は家族と世界中にいる友人!

朝日新聞 GLOBE+  https://globe.asahi.com/

最近の主な執筆記事

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https://globe.asahi.com/article/13926362

・米テレビのあからさまな肩入れ報道 NY で CNN と FOX を見続けて感じた深刻な危機

https://globe.asahi.com/article/13911826

・水が澄み、山が見えた 新型コロナで「環境は自分の手で改善できる」を学んだ私たち

https://globe.asahi.com/article/13609035

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