持続可能なまちづくりとは?「未来メディアキャンプ2018」で考えた横浜の未来【未来メディアキャンプvol.5】2日目レポート

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10月14日に開催された「未来メディアキャンプ 2018」(朝日新聞社、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科共催、運営協力・Think the Earth、メディア協力・ヨコハマ経済新聞)1日目のワークショップから約1カ月後の11月11日。2日目は、昨年のキャンプと同じく、横浜市内の「富士通エフサス・みなとみらいInnovation & Future Center」に会場を移して、さらに議論を続けました。

 
未来メディアキャンプは、さまざまな社会課題を対象に、あらたな解決策やソリューションの創出を議論していくワークショップ型イベントとして開催。5回目の開催となる今年は、これまで行われてきた、新しいアイディアを育む(=ゼロから1をつくる)ことを踏まえて、すでにそのような取り組みを経た個人や組織のアイデアをよりブラッシュしていく(=1を10にする)ことをコンセプトとして実施しました。

 
今回は横浜を拠点に実際に地域活動を行っている5団体から6チームが参加。各チームには慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の学生がチームメンターとして加わり、10月のキャンプ1日目でインプットしたアイデアをこの1カ月の間に議論を重ね、実際に各地でフィールドワークを行い、試行錯誤しながら各プロジェクトの実現性と有益性を高めてきました。各チームが最終的にたどり着いた、未来の横浜のまちづくりにつながる地域活動とは、どのようなプランになったのでしょうか?「未来メディアキャンプ 2018」2日目の模様をレポートします。

 

「未来メディアキャンプ2018」1日目のレポートはこちら!
SDGs未来都市「横浜」の2030年を考える。「未来メディアキャンプ2018」スタート

 

【ワークショップに参加した団体・プロジェクト】
山北プロジェクト
コトラボ
SDGs×教育プロジェクト
Code for YOKOHAMA(A/B)
パパカンパニー

キャンプ2日目は“対話”がキーワード

キャンプ2日目は、大きく5つのフェーズで構成されました。

 
1.1日目から2日目までを振り返る
2.各チームの成果と課題を共有する
3.チームを超えて対話をする(ワールドカフェ)
4.SDGsを視座にプロトタイプの新たな可能性を探る
5.今後のアクションプランを発表する

 
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未来メディアキャンプのファシリテーターを務める、慶應SDMの神武直彦教授は、2日目のプロセスはすべて「アウトプット」につながるものだといいます。

 
「キャンプ1日目は、多くの時間をインプットやアイデア創出に費やしました。SDGsのゴールの年でもある2030年に自分たちが住む横浜のまちがどうなっていてほしいのか。ブレーンストーミング方式でいろいろな意見、アイデアを出し合いながら、未来の横浜を考えることからスタートしました。このみなさんが考えた『2030年までに実現したい未来の横浜』を目指し、では自分たちのプロジェクトはどのように貢献し、価値を提供できるのか、プロジェクトの方向性や方針をさまざまな角度から議論しました。

 
それに対し、2日目のゴールは具体的なアウトプットになります。キャンプ1日目でまずは机上で議論したものを、この1カ月の間に実際に街に出て、実現性を模索してきました。その結果、あらたに浮き彫りになった課題も出てきたかと思います。今日は、この1カ月でみなさんがやってきたことを共有し、掘り下げていくとともに、横のつながり、具体的には“対話”を通して各プロジェクトをブラッシュアップしていければと思っております」

 
未来メディアキャンプ2018の最大のポイントは、プロジェクトのアイデアを考えるだけでなく、持続可能な具体的成果を目指すこと。各チーム内で濃密な議論と実験が繰り返され、すでに実施できるレベルまでに各プロジェクトは引き上げられましたが、さらにチーム外からの意見やアドバイスを積極的に聞き入れることで、より有益性の高いプロジェクトへ高めることが求められました。

 
神武教授が2日目に用意したキーワードが“対話”です。各チームがそれぞれこの1カ月で行ってきたアクションを発表し、プロジェクトの「現在地」を共有。その発表後の質疑応答の時間を多めにとったのは、チーム外の第三者との対話を通して、新しい発見やつながりが生まれると考えられたからだそうです。

 
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参加者のひとり、黒田千佳さん(Code for YOKOHAMA)からは、キャンプ2日目の意義について、次のような意見が述べられました。

「同じ志や課題を持った方々と連携をとり、いかにそれぞれのプロジェクトをよりいいものに育てていくのか。より良いプロジェクトにするために互いに考えていくきっかけが、多くの対話から生まれたらいいなと思います」

 
今回、集まった参加者は、真剣に社会問題と向き合い、実際に解決に取り組んでいる方々ばかり。だからこそ好意的な意見から厳しい指摘まで、活発な対話が行われ、時間が経つにつれ会場は熱を帯びて行きました。

 
チームごとに行った議論とフィールドワークに、こうした第三者の意見も融合させた各チームのプログラムは、どのようなソリューションに仕上げられたのでしょうか。ここからは、未来メディアキャンプ2018のゴールでもある、各チームが最終的にたどり着いたアクションプランをご紹介しましょう。

【コトラボ】人が集まる街、地域のコミュニティの“ハブ”となるホステルを

山下公園や元町、中華街など、有名な観光地に囲まれた好立地。しかも“ドヤ”と呼ばれるリーズナブルな簡易宿泊所を有しているにもかかわらず、約20%がつねに空室という課題を抱える寿町。このまちを観光客にとって魅力的なまちへと再生させるために、コトラボはおもに外国人観光客を対象に、ドヤをツーリストホステルやゲストハウスとして活用する「ヨコハマ ホステル ビレッジ」をこれまでに立ち上げました。

 
キャンプ1日目では改めて、課題として“危険なまち”というイメージを払拭し、人が集まる場所へと改善していくためにはどうすればいいのかを議論。「地域のコミュニティの“ハブ”となるホステル」をつくるというアクションプランが発表されました。

 
しかし、その後、1カ月のフィールドワークを経て、現場で遭遇するあらたな課題が浮き彫りになってきたといいます。

 
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コトラボの村山大輔さんは、「キャンプ1日目からこの日まで、チーム内でフィールドワークも含めさまざまな角度から実現性を話し合った結果、『多くを求めすぎていないか』という議論になりました。寿町の資産でもあるホステルを生かして観光客を呼び込むためにはどうすればいいのか。その方法論として『地域のコミュニティの“ハブ”となるホステルをつくる』というプランを策定しましたが、フィールドワークを通して中と外をつなぐ上で中のこと、つまり実際に寿町に住む方々の目線がプロジェクトには足りないことに気づかされました。今回のキャンプでつながった横浜市政策局共創推進室の関口昌幸さんにもサポートしていただき、寿町でフィールドワークを行ったのですが、地域発信のコミュニティをつくるには、もっと地元のことを知らなければいけない。そのためにはまだまだ準備不足だということがわかったのです」と説明。

 
「そこで少し軌道修正し、今回のキャンプのゴールでもある実現性のあるプランを作成するために、まずは来てもらった観光客に対して『地域の玄関口になるホステル』となるサービスを考えました」。具体的なプランとして発表されたのが、ただ目的地に行く拠点として宿泊してもらうのではなく、その目的地との往復の中で“寄り道”してもらうというアイディア。チェクイン時にお客様にくじをひいてもらい、選んでもらった寿町や黄金町のスポットに寄り道してもらいながら目的地まで行ってもらうルートを紹介するというサービスです。

 
「寄り道してもらうスポットは、横浜の歴史を知るスポットだったり、スタッフオススメのお店だったり、他のお客さまが投稿した内容などを考えています。このプランの真のねらいとしては、ただ単にそのスポットに行って欲しいというわけではありません。寿町や黄金町という横浜の街を自分たちの脚を使って歩いてもらい肌で横浜を感じてもらえればと思っています。そうして寿町の魅力を伝えていければと考えました。」(コトラボ 村山さん)

 
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新しいプランによって観光客が導かれた知られざる横浜の魅力、言い換えればガイドブックなどに載っていない新しい発見は、SNSなどで拡散されることが期待されます。

 
しかし質疑応答では、横浜市政策局共創推進室の関口さんから、コトラボの取り組みそのものには賛同しつつも、「もしも地元の方々を巻き込んで地域の活性化を本気で目指すのであれば、寿町の課題や街の歴史、そしてこれまで地元住民の方々が取り組んできたことを知らないといけない」という厳しい意見も。

 
これに対し、コトラボの村山さんは次のような言葉で発表を結びました。

 
「実際に現場に出て自分たちのプランの課題を痛感しました。私たちの活動は今日で終わりではありません。今後は寿町の中にあるひとつの事業者として、きちんと寿町にフォーカスをあて活動している人に向けたソリューションを提供していけるように、アドバイスをいただいた横浜市をはじめ、今回つながった各団体とも連携しながら取り組んでいけたらと思っています」

【SDGs教育】人と地元企業のマッチングから体験フォーラムへ

「私たちSDGs×教育チームは、そもそもSDGsに無関心な教育者や地元の企業をどのように巻き込んで当事者意識を持っていくかということを寸劇にまとめてみました」

 
岸本伴恵さん率いる同チームのプロジェクトは、持続可能な社会を目指すためには次世代を担う子どもたちの育成が必然、そのため教育現場から変えていく必要がある、という課題からスタート。議論の最大のポイントとなったのは、学校へのSDGsの広め方だったといいます。寸劇ではその具体的なプランとして、SDGsに関心のない教育者や地域企業に向けて勉強会を開催し、それが口コミで学校現場に拡散されていく過程が表現されていました。

 
まずは知ってもらうこと。定期的にSDGsについて知る場を提供することで、そこから少しずつ、確実に広めていくプランです。

 
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「まずは地域で開催されているリビングラボ(横浜市が実施している、企業、大学、NPOなどと行政が議論しながら社会課題解決アイデアを出し合う対話の場)に先生を誘います。そこで、先生と地元企業のマッチングが始まり身近な生活の中にあるSDGs活動に触れることができます。

 
さらに多くの先生たちに知ってもらうために、豊かな体験フォーラムなどを通してSDGsの理解を深めたり、実際の活動事例などの紹介を行っていきます。それによって新たな関心のある先生や企業が生まれ、毎年継続して実施することで中長期的に誰ひとり取り残さずに子どもたちと共に持続可能な未来を創ることに挑戦していくことができます」(岸本さん)

岸本さんは、企業や行政からのトップダウンでは、なかなか現場には浸透しにくいと指摘します。SDGsは、自分ごと化してとらえて初めて実行に移せるもの。そうした方々をつなげていくこともプロジェクトの重要項目として考えているそうです。すでに勉強会は横浜市と連携しながら開催され、その中でプロジェクトの新しいヒントも得られたといいます。

 
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「実際にリビングラボに参加していた、心臓に疾患を抱えている子どもたちをサポートしている会の代表の方とお話しする機会がありました。自分たちは課題にまっすぐ向き合って真剣に取り組んでいるけれど、なかなか広まらないことに悩んでいるそうです。そうしたそれぞれの立場、環境で課題を持っている方々をつなげ、パートナーシップを築いていければ、みんなでその子どもたちをサポートしていけるようになる。そのように考え方も広がってきています」(岸本さん)

 
身近な人に、SDGsを知ってもらう。SDGsに関心を持った人をつなげていく。そうして“一歩”を継続的に積み重ねていき、“輪”を大きくしていく。その“輪”は2030年には当たり前のように定着していることを期待しています。

【山北プロジェクト】 森に親しみ、間伐する需要を増やし、水源地の課題を解決する循環を

横浜の水源地のひとつである、神奈川県の最も西に位置する山北町では、その豊かな水源を守る森が崩壊し始めているという深刻な課題をかかえています。そこには経済的、人的不足などの原因から、森が健康な状態を維持するために必要な間伐作業が、効果的に実施できないという現実があります。この課題に対して、横浜市のコワーキングスペース「mass×mass」クリエイティブディレクターの森川正信さんは、自分たちの水源は自分たちで守ろうと、山北プロジェクトを立ち上げました。

 
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「横浜で水道をひねると出てくる水の5分の1は、山北から給水されています。しかし、その水源が今、危機的な状態を迎えています。そんな山北の森と人をキーワードに、横浜の人にどれだけこの問題を自分ごと化してもらえるか、ということを私たちはプロジェクト化しました。

 
キャンプ1日目に、たとえば薪なども自分たちでつくるような、『何もないキャンプ場』の計画を発表させていただきました。このプランを実現させるために私たちは山北に何度か脚を運び、試行錯誤している中で森林組合の石田貴久さんと話す機会がありました。山北の現状をみなさんに知ってもらうために、今回、石田さんにも参加してもらい、山北で間伐されたばかりの“生の木”を持ってきてもらいました」(森川さん)

 
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スーツケースをあけると、前日まで山北の森にあったスギの木の豊かな香りが会場に広まりました。少し湿った木の感触も会場の人にとっては新鮮だったようで、山北プロジェクトチームの発表は、五感にも訴えるプレゼンとなりました。

 
「これは、山北の人にとっては日常にあるものです。でも、こうして都会の横浜に持ち込むと、ものすごいインパクトがある。そのことをみなさんも実感していただけたのではないかと思います。こうした体験を通して、山北の問題にも関心を持ってもらうことにつなげていくためにはどうすればいいのか、議論を重ねてきました」(森川さん)

 
山北プロジェクトが考えたプランは、大きく4つのステップから構成されています。

 
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この中の、まずは「木で遊ぶ」と「山北に興味を持つ」の各ステップをトライアルで行っていくとのこと。さらにこのキャンプを通じて学んだSDGsも絡めたアクションを展開していくことが発表されました。

 
「このプロジェクトを通じて横浜市民の方々にSDGsの倫理観や美意識をも伝えていければ、横浜のいろいろな企業ともつながりが出てくる。その中でエントランスやミーティングルームをつくる際に山北の木材を使うような文化を広めていくことができれば、山北の森を間伐する需要が増え、課題を解決する循環もできあがっていく。このことを、今回のキャンプを通じてあらためて再確認できたように思います」

 
この山北プロジェクトの発表に対し、ほかのチームからも、「キャンプ、良い木材、産業という3つの要素で新しい交流を生み出すコンセプトを発信できれば、いろいろな企業が関心を持ってくれるのでは」「自然学習の拠点で、横浜市、神奈川県のいろいろな子どもたちが山北とつながるルートをつくってみたら」など、多くの賛同がありました。

 
山北が抱える課題は、山北特有のものではありません。同じような問題は全国各地で、さらに世界中の森林地域でも起きています。この課題を解決する仕組みをまず横浜市と山北町の取り組みから発信することができれば、SDGs未来都市(*)に選定されている横浜市としても大きな成果を示せるかもしれません。

 

*SDGs未来都市
SDGsの目標達成に向け、国が主導して持続可能なまちづくりや地方創生を推進していく方針にともない、政府はSDGsの達成に向け優れた取り組みを行う、29の自治体を「SDGs未来都市」として選定。その中でも横浜市の「“連携”による横浜型『大都市モデル』創出事業」は、特に先導的な取り組みを行う10の「自治体SDGsモデル事業」のひとつに選定されている。

【code for YOKOHAMA】子どもたちを守る防災アプリ「防災クエスト for YOKOHAMA」試作

code for YOKOHAMAは、「子どもが自分自身の安全を守れるようにするにはどうしたらいいのか。どんな状況にあっても子どもは安全でいて欲しいと願う親の思いを叶えるために、code for YOKOHAMAが専門とするITの力でどのようにサポートしていけるか」、これらの課題についてAとBの2チームに分かれて検討してきました。

 
近年、頻繁する自然災害に対する防災をテーマにしたcode for YOKOHAMAチームの取り組みは、今回のキャンプの中でも大きな注目を集めました。

 
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「電力もない、通信手段もない、交通手段もない、家族にも会えないし連絡もとれない……。東日本大震災のときのような、何もかもがロストする状態は、おそらく経験者ではないと想像も理解もできないと思います。そうした状況が万が一起きたときに、子どもたちをどのように守ればいいのか。その回答のひとつとして、普段から子どもが防災の知識や逃げる場所をきちんと持っているという状態をつくり、家族で共有することが重要だと考えました。たとえば8歳児でも災害に遭ったときに自分の身を守るために体が動くような子どもを育てることができたら、子どもたちの被害を小さくできるはずだと」(村上源さん)

 
そこで開発されたのがスマートフォンで使用できるアプリ「防災クエスト for YOKOHAMA」です。同アプリの試作品はすでに開発され、この1カ月の間で実装テストが行われました。実際にアプリは、小さな子どもでも扱える内容にブラッシュアップされましたが、この日の他チームとの対話を受け、新しい課題も見つかったといいます。

 
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「今日のディスカッションと皆さんの対話を受け、新たな気づきがいくつかありました。たとえば、私たちが一番このアプリを使ってほしい小学3年生以下の子どもたちのスマホの所有率が低いこと。このアプリが有益なコンテンツツールになることはさまざまな実験で確認できたのですが、この根本的な問題をどのようにクリアするかは新たな課題として認識することができました」(code for YOKOHAMA西野貴志さん)

 
今回の未来メディアキャンプの参加者には、実際に小学校の教壇に立つ先生もいて、リアルな意見が出されました。

 
「防災、防犯の問題は、私たち教師にとってはとても重要な課題で日々、悩んでいます。子どもたちは絶対に守らなければいけないのですが、100%安全を確保できるかというと、どうしても限界がある。たとえば、放課後や学校が終わると、子どもたちがどこにいるのか把握することは、現状、ほぼ不可能な状態です。では、どうするか。実際にはアナログ的に地域パトロールを行う“見回り隊”や年配の方々と協力しながら、人の連携で安全を守るという取り組みになります。
地域住民とのつながりを強化することは、少なくとも現段階では子どもたちの安全を守る上で欠かせない要素です。そこにいかにcode for YOKOHAMAが考えるようなITの力を融合させていくかは、今後の大きな議題になってくるのかなと思いました」(SDGs×教育チームで、横浜市立和泉小学校教諭の池田孝さん)

 
また、質疑応答では、子どもたちが活用するだけでなく、子どもたちの安全を見守る地域の大人たちが情報を共有できる機能の開発や、アプリそのものを個々の家庭という枠ではなく、いかに教育という現場に広め、根づかさせていくことが、プロジェクトの成功につながるのではないか、という意見もありました。

 
これらの議論を経て、Code for YOKOHAMAの西野さんは次のように締めくくりました。

 
「みなさまとの対話を通じ、実装するにはまだまだ多くの課題があることがわかりました。Code for YOKOHAMAとしては、つねに『どんな状況にあっても子どもは安全でいて欲しい』という親の普遍的な願い、原点に立ち戻り、今後もどのようにこのアプリを強化させていけばいいのか、引き続きみなさまの力も含め、いろいろな人たちを巻き込みながら考え続けていきたいと思います」

【パパカンパニー】地域の眠った人材や場所を案内する「子どもカレッジ」プラン

チーム・パパカンパニーは、すでに実績のあるソリューション「あそびい横浜」を活用し、いかにプロジェクトとしてブラッシュアップしていくかが議論の焦点になりました。取り組んだ課題は、子どもたちの可能性を広げていく恒久的かつ持続可能なまちづくりの仕組みをつくること。具体的には、地域の眠った人材や場所を掛け算することで、子どもたちにさまざまなコトを伝えていく「子どもカレッジ」のプランが考案されました。「子どもたちの未来を、地域全体が協力してサポートしていく。そうした社会をつくりたい」と代表の高瀬康道さんはいいます。

 
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「『子どもカレッジ』のおもな目的は、子どもの可能性を伸ばしていくことにありますが、最終的なゴールとしては地域で子どもを育てていくような仕組みを確立し、家族2世代、3世代が住み続けるような、横浜の地域活性を支えるプロジェクトにまで発展させていきたいと考えています」(高瀬さん)

 
質疑応答では、子どもが参加する価値だけでなく、親も参加することで何かが得られる付加価値もあったほうがいいのではないかという意見がありました。これに対し、高瀬さんは、次のように説明しました。

 
「親にとってのメリットについてもいろいろと意見を交わしました。そのひとつとして『子どもカレッジ』は、気楽に習い事が体験できることにあるのではと思っています。実際に何か習い事をしようとすると、教室やクラブなどに入会し、それなりの月謝も払わなければいけない。場所によっては送り迎えをしなければなりません。それに対し、『子どもカレッジ』ならたとえば50の教室を、言葉は悪いですが、“つまみ食い”することができる。ひとつのことを集中して学ぶことももちろん価値はありますが、いろいろなことに触れたり学べたりすることは、子どもにとっても大きな刺激になるはずです。さらに仕組みとしてすべての教室を連携してカレッジノートのようなものを作成し、いろいろなことを学んだことを記録として残すことが、親子のコミュニケーションにもつながります。新しい体験や知識を増やしていく。これは、子どもの成長や教育にもいい影響を及ぼすでしょう」

 
そのほかにも、教える側の知識レベルなどのクオリティーコントロールはどうするのか、また大企業が主催する教室などとの差別化はどのようにしていくのかなど、実装するにあたりかなり具体的な質問が投げかけられました。

 
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「大企業が主催するイベントの多くは、全国どこでも同じ内容が求められます。しかしそれだと果たしてそれぞれの地域のニーズに本当にマッチしているのか、という点では、少し疑問が残ります。もちろん、すばらしいイベントも多いですが、それでも私たち市民が市民のことを熟考し、市民のために開催する教室のほうが、本当のニーズに寄り添うことができると確信しています」。(パパカンパニー添田昌志さん)

 
横浜市民が横浜の未来を担う子どもたちを教えることにこそ意義がある。それが横浜のブランディングにもつながると、添田さんは主張しました。

いつの時代も変わらず求められるのは、人の情熱

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すべてのチームの発表と質疑応答を終えて、神武教授は1カ月にわたって行われた今年の未来メディアキャンプを振り返り、次のように感想を述べました。

 
「SDGsという広い観点からいうと、横浜だけがよければいいというわけではありません。しかし、今回のキャンプを通じて実感したのは、あらためて横浜は優れたまちであるということ。このキャンプで得られた知見を、日本全国に、さらに世界へと発信できればと思っています。一方で私は毎月、海外に出張に行きますが、これは日本に取り入れたらいいなと思うことが海外の地域にも数多くあります。日本から世界へ、世界から日本へ、そうしてつねに広がりを模索していくことが、SDGsの思想には大事だと思っています。みなさまにもそのマインドを持って、今後も活動に取り組んでもらえたらと思います」

 
未来メディアキャンプ2018に参加した各団体は今後、実際のフィールドでそれぞれの社会課題のソリューションを目指して作業を続けるでしょう。

 
SDGsは2030年がゴールに設定されていますが、実際にはその後も続く、未来永劫の活動だとされています。時代が変われば価値は変わり、もしかしたら100年後には現在では考えられない、あらたな社会問題が発生しているかもしれません。しかし、こうした社会課題に対し、いつの時代も変わらず求められるのは人の情熱だと、神武教授はいいます。

 
「情熱なしにできることは、すべて無価値である」。神武教授が最後にドイツの政治・社会・経済学者であるマックス・ウェーバーの名言を引用し、未来メディアキャンプ2018は終了しました。

 
<取材・編集>サムライト <撮影>千葉裕子

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