2015年、国際連合サミットで2030年までに達成をめざす世界目標として、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。その時、当時の国連事務総長パン・ギムン氏は、「LGBTはSDGsのすべての項目に関わる問題であり、『誰も置き去りにしない』というSDGsのモットーに含まれている」と述べました。また、ジェンダーについては、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」と掲げられました。
「LGBTQ+」やジェンダーは、SDGsがめざす社会に近づくための国際的な課題として捉えられています。本シリーズでは、「誰も置き去りにしない」というSDGsの理念のもと、普段何気なく使っている言葉や学校の制服など急速に変化している性の捉え方・表現について紹介します。「自分らしさ」について考えたり、周りの人と語り合ったりする時の参考にしてみてください。第一回目は、「LGBTQ+」の言葉の意味や成り立ちを説明します。

みなさんは、LGBTQ+という言葉を知っていますか?
まず、「LGBT」はそれぞれの言葉の頭文字から取った表現で、セクシュアル・マイノリティー(*1)の人たちを表す総合的な呼び方のひとつです。Lesbian(レズビアン)とは女性の同性愛者、つまり女性を恋愛対象として好きになる女性です。Gay(ゲイ)とは男性の同性愛者のことです。Bisexual(バイセクシュアル)は、自身の性を問わず男性と女性、両方の性を好きになる人のことをいいます。
レズビアン=男性的な外見、ゲイ=女性的な外見というわけではありません。見た目は関係なく、自分の性と好きになる人の性の関係で表されます。Transgender(トランスジェンダー)は、生まれた時に割り当てられた自身の身体の性別と、性自認(*2)が違っている人のことを表します。例えば、女の子として生まれて生活しているけれど、どうしても制服のセーラー服が着たくなかったり、「女性」として生きていくことが苦痛だったりすることがあります。その中には性同一性障害(*3)と診断される人もいます。
「LGBT」という言葉は、2006年の国際連合、「モントリオール宣言」の中ではじめて公的文書に用いられました。LGBTは長い間、権利の制約を受けたり、迫害されてきた歴史がありますが、当事者や支援者が諦めずに声を上げ続けたことで、状況は徐々に改善されていきました。さらにSDGsの採択後は言葉とともに活動や考え方も広まりました。
そんな中、LGBTという言葉の知名度は飛躍的にアップし、2020年の調査(*4)では約8割の人が知っていると回答しています。しかし、「LGBTQ+」という表現になると、Q(キュー)や、+(プラス)とはなんだろう、と思う人も多いのではないでしょうか。 LGBTQのQは、Questioning(クエスチョニング)といって、自身の性のあり方がまだわからない・決めていない・あえて決めない人のことを表現しています。LGBTQ+の+(プラス)は、こうした言葉では表現しきれない、性の多様性のことを表したものです。

多数派にも呼び名がある
生まれた時の性別と性自認が一致している人のことは「シスジェンダー」といいます。女性が男性を、男性が女性を好きになるのは異性愛と呼ばれ、「ヘテロセクシュアル」といいます。例えば、あなたが生まれた時に女性で、自分のことを女性と認識し、男性を好きになる場合は、「シスジェンダーのヘテロセクシュアル」の人ということになります。
性の捉え方・表現の多様化は急速に進んでいます。そもそも性自認や性的指向は一人ひとり違うのですから、LGBTQ+という表現もこれからまた変わっていくかもしれません。また、セクシュアル・マイノリティーを総称するということ自体がなくなっていくかもしれません。
次回は、「ジェンダーニュートラルとは?」と題し、みなさんにもなじみのある学校制服の話題を中心に紹介します。
*1 性的少数者のこと。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどを含む総称として使われることが多い。
*2 自分の性別をどのように認識しているかを表す概念。「こころの性」と呼ばれることもある。
*3 身体的性別と性自認が異なる人の中でも、特に精神医学的に診断基準を満たした人のこと。
*4 電通ダイバーシティ・ラボ「LGBTQ+調査2020」
https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2021/0408-010364.html
≪この記事は『図解でわかる14歳からのLGBTQ+』(社会応援ネットワーク著/太田出版)の内容を加筆修正して作成しました。≫