国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を子供が分かるように、遊びを交えて楽しみながら学べる施設が相次いでいます。幼い頃からSDGsの考えに触れることの重要性を意識した企業やテーマパークの取り組みを紹介しましょう。夏休みに家族でSDGsを学ぶ機会にしてみてはいかがでしょうか。
開放感ある空間 ワクワクする仕掛け 伊藤忠
東京・外苑前にある伊藤忠商事東京本社の敷地内に22日、「ITOCHU SDGs STUDIO KIDS PARK」がオープンしました。延べ床面積は約300平方㍍。乳幼児から小学校低学年向けの施設です。子供が遊びを通してSDGsとであえる場所を、ということでつくられました。言い換えると、子供が手を出して遊びたくなる仕掛けを用意し、そこにSDGsに通じる学びや体験がある、ということです。

起点は「SDGs経営」 教育コンテンツを重視
「SDGs経営」を掲げる伊藤忠は2021年4月、発信拠点として「ITOCHU SDGs STUDIO」を開設しました。朝日新聞社との共催企画「SDGsミライテラス」を月1回配信し、ラジオ番組の収録や企画展でも活用し、来場者はのべ2万人超を数えました。紹介した取り組みは40以上あります。今回は「大人だけでなく、子供にもSDGsを」という趣旨で入場無料の新施設をつくりました。伊藤忠の担当者は「SDGsのめざす社会を実現するには、未来を担う子供の力が不可欠です。教育コンテンツに力をいれていきたい」と話します。


室内を案内しましょう。「ヒラメキオーシャン」という一角にはスクリーンが設置され、プラスチックごみが海を漂流する様子が映されます。子供は手元のブロックを好きなように組み合わせて「海の生き物」をつくり、スキャンします。すると、スクリーン上の「海」からプラスチックごみが1つ消え、代わりに「海の生き物」が映されます。子供の手元にある机は、海岸で回収されたごみをアップサイクルしたものです。「ビーチクリーン」の意義を理解して欲しい、という願いが込められています。


廃材で学ぶ「捨てない文化」 創造性を育もう
「ステナイアトリエ」という工房では、いろんな形や色の廃材を組み合わせて、子供が自在に創作物をつくります。ここでは、のり、ハサミ、テープといった文具を使わないのが「お約束」です。廃材アートを体験し、終わったら元に戻します。捨てないことを学んでもらう狙いがあります。

ボール遊びに夢中の子供 分別理解と協調が狙い
子供の歓声が響くのが「ナナイロスカイ」という一角です。七色のボールプールの中に入り、白い雲を模したトランポリンで遊びます。色分けされたかごにボールを投げ入れ、「虹」をつくる喜びを体験するとともに、分別する必要性を学んでもらいます。小学生の娘と遊びにきた40代の女性会社員は「広々とした開放感があります。窓ガラスにクレヨンでお絵かきできるので子供は喜んでいました。自宅では経験できないことを学べる施設だと思いました」と話していました。


この施設は1日最大300人が利用できます。午前9時半~午後5時半。月曜定休。事前予約制でサイトをご覧ください。
持続可能なコーヒーを学ぶ UCCは内容一新
UCC上島珈琲(コーヒー)は16日、イオンモール幕張新都心ファミリーモール(千葉市美浜区)の仕事体験型テーマパーク「Kandu(カンドゥー)」の出展内容をSDGsについて学び、体験できる空間にリニューアルしました。内装や動画を一新し、SDGsに関する冊子も配ることにしています。UCCホールディングスは今年4月、2030年までに自社ブランドを100%持続可能なコーヒー調達にする指針を掲げました。そうしたことも踏まえ、施設の内容を改めました。

コーヒービジネスと温暖化を学ぶ「子供店長」
「Good Coffee Smile CAFE」というアクティビティーでは、子供がコーヒー豆の産地や栽培を学び、コーヒー豆をブレンドします。「カフェ店長」として保護者らにコーヒーを提供します。コーヒーをめぐっては、地球温暖化で将来、おいしい豆の産地が減ることが懸念されています。そうした内容を盛り込んだ動画を「カフェ店長」は視聴します。

そして、赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までの「コーヒーベルト」と呼ばれる一帯の産地についても、内装を見て理解します。「産地の農家に思いをめぐらせ、SDGsとコーヒー産業を取り巻く状況を考えてもらいたい」と担当者は話します。所要30分です。

東京都江戸川区から5歳の娘と参加した女性は「コーヒーが好きで毎日飲みますが、どういう環境でつくられているのかピンときませんでした。そうしたことがテーマパークで学べるのは貴重だと感じました」。対象は3歳から中学生までの子供と家族で不定休です。委細はKanduのサイトをご覧ください。
キッザニア東京・甲子園 期間限定で2施設
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キッザニア東京(東京都江東区)とキッザニア甲子園(兵庫県西宮市)の両施設でも8月28日まで、SDGsをテーマにした2つのパビリオンが登場します。「サンゴ未来研究所」では、子供たちが「サンゴ研究員」になり、気候変動でサンゴが消滅する危機にあることを理解します。そして、サンゴの生態系を再現した水槽を観察し、サンゴの未来を考えます。そのほか、サーキュラーフード(循環型食材)の開発者になるコーナーもできます。子供が「食品ロス」を学び、サーキュラーフードとしてのコオロギに注目。食用コオロギ(パウダー)を使い、ポップコーンのおやつをつくります。広報担当者は「子供にとって身近な地球の課題を考え、食品ロスとサンゴの減少をテーマにしました」としています。詳細は公式サイトをご覧ください。
海の微少な生物に注目 八景島シーパラダイス


また、横浜・八景島シーパラダイス(横浜市)では、水族館アクアミュージアムに「身近な海の生きもの研究所」が16日、オープンしました。コンセプトは「楽しく学ぶSDGs」。展示ゾーンは6つあり、東京大学三崎臨海実験所との共同の取り組みを展示で紹介しています。実際に同実験所で使われている水槽の展示や貴重な生物データも公開。海の生きものの生態や豊かさにふれ、命の不思議さや美しさを感じて頂けるように工夫されています。大津大館長は「微少生物にスポットをあてることで、海の豊かさを守ろうという気持ちになっていただくことを目的としています」とコメントしています。委細はシーパラダイスのサイトをご覧ください。
