SDGsをデザイン ヤーコブさん来日 アイコンやキャッチコピーに込めた思いとは

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「誰一人置き去りにしない」という理念を掲げ、17分野の目標を2030年までに達成しようというSDGs(持続可能な開発目標)。この取り組みが世界中で広がってきた背景には、人目を引くカラフルなロゴとキャッチコピーというデザインの存在があります。目標は単純明快な言葉で表され、私たちが未来へ向かって進むべき道をわかりやすく示しています。今では、ロゴをあしらったピンバッジを身につけている人も珍しくありません。

 
この親しみやすいデザインに加え、コミュニケーションのシステムまで構築してきたのが、スウェーデン出身のクリエーティブディレクター、ヤーコブ・トロールベックさんです。

 
初めて来日したヤーコブさんは6月13日に東京・渋谷のTRUNK HOTELで開かれた「DSSE2019~知恵の使い道を、スライドさせる~」(主催・CLAVIS HELICE、斉藤圭祐代表)に参加し、その意図や狙いについて明かしてくれました。

わかりやすくシンプルな言葉で行動へ

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SDGsに関わりはじめたのは2014年のこと。1通の電子メールがきっかけでした。ニューヨークで約20年前に起業し、事業が成功する中、蓄えた知恵を使い、コミュニケーションする機会を頂いた訳です。たくさんの人々、多くの事業……。コミュニケーションするには世の中はとても複雑ですが、それは決して悪いことではない。社会を形成するうえでも、新しい技術を開発するうえでも、複雑さは必要でもあるのです。

 
メールの文書には国連が掲げたSDGsの17の目標と169項目にわたるターゲットが書かれていました。でも文字が多すぎ、詩的な表現とは言い難かった。しかし、貧困や環境、人の命に関するものなど、内容は私も感じていた問題そのもの。複雑なものをいかにわかりやすくするか。それは言葉を行動に移すということにもつながる。とにかくシンプルな言葉でデザインしたいと思ったのです。

面白さ、正しさ追求して図解を完成

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よりポジティブに、未来に向かっていると感じさせ、目標に向かっているんだと体感させるような言葉はないか。17の目標をよりよく表現することが課題でした。例えば、「目標1」では「End Poverty(貧困を終わらせる)」ではなく、あえて「No Poverty(貧困をなくそう)」に変えたわけです。「目標2」でも飢餓を無くし、栄養を改善し、持続可能な農業を推進して「飢餓をゼロにする」としました。

 
さらに、我々はデザイナーですから、いろいろなバリエーションのスケッチをつくっていきました。面白さを求めつつ、正しさも追求しなければいけない。「貧困」ではないものを表現しなければならず、最初は絵が描けませんでした。途中で、地球上では世界の3分の2の人々がフォークで食べ物を食べていないことを学び、(アイコンに)使えないと気付いたこともありました。

 
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「目標6」では水が一番重要な問題だと思っていたら、掘り下げていくと実際は衛生の問題でした。トイレの絵を使うわけにはいかず、結局、3カ月かかってようやく下向きの矢印にたどりつきました。

 
今では当たり前になっているような図解も、考える時間を相当費やしたものがかなりありました。現在、世界の何カ国語に翻訳されているのかわかりませんが、各国の表現については信じるしかないと思っています。

169のターゲットもデザイン アイコンにダース・ベイダーのイメージ

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これまで仕事を通じ、ブランドの大切さを常に感じてきました。今回の計画もしっかり考える必要があると考え、つまらない表現ではなく、最後を「ゴール」にして「SDGs」に定めました。ロゴはすべてが包含されるという印象を与えるように、太陽のような形状になりました。

 
ポジティブに未来に目を向ければ、人々の行動によって変えることができる。ただ、行動はもっと早めないといけない。そのため、このように目標を明確にした象徴ができあがったのです。さあ、この目標をどうしたら達成することができるのでしょうか。しかし、私たちは具体的に何を気にしなければいけないのかまで求められていません。一つひとつの目標は、カテゴリーに過ぎないのです。

 
そこで定められたのが169のターゲットになります。しかし、数が多く、理解できるか不安になります。デザイナーの仕事は、意味のあるものは残し、意味のないものは全てそぎ落とすことだと考えています。ターゲットを何度も読み返し、知識を共有することが重要だと思いました。「要はこういうことですよね」とまとめたのです。そうすれば、長々としたものでもあっという間に理解できる。デザインするのは17の目標だけでも大変でしたが、169のターゲットについてもわかりやすいものを作り上げたわけです。

 
例えば、「目標14の6」。補助金によって過剰な漁業が起きているという話では、アイコンの色にあえてほかではあまり使っていない黒を使いました。SF映画「スター・ウォーズ」のアンチヒーロー、ダース・べイダーみたいでいいかなと思いました。漁業で金もうけをしている雰囲気が出ていますね。

大きな課題、小さな行動で解決可能 2020年向け新デザイン発表へ

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デザインをさらに体系化させるため、周期表を模したものも作りました。縦型にしたのは上から下に文字を書く日本の影響を受けています。短冊のような(カードタイプの)グッズもあります。表面は色を多彩に使い、裏側にはターゲットに関する情報を入れました。複雑なものはなかなか理解されにくいという問題はありますが、デザイナーの力でそれを変えてきました。すべてのグローバルな問題は、ローカルな解決策があるはずです。一見、大きな課題に見えても、小さな行動で解決できるのではないでしょうか。

 
デンマークでローカル向けのウェブサイトを作りました。日本でも同様に作り、全ての進捗(しんちょく)が測定できるようにできればと思っています。2020年には大型キャンペーンを考えており、その時には新しいデザインを出すつもりです。

 
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(イベントでは、ヤーコブさんと世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋さん、元鎌倉投信で株式会社eumo代表取締役の新井和宏さんらがパネルディスカッションし、意見を交わした)

 
ヤーコブ・トロールベック(Jakob Trollbäck)
1999年にクリエ-ティブ・スタジオ「Trollbäck+Company社」(米国・ニューヨーク)を設立。数多くの実績と受賞経歴を持つ。現在は、サステナビリティに関するコミュニケーションに特化した「The New Division社」(スウェーデン・ストックホルム)を立ち上げ、代表として幅広く活動している。SDGsの理念をもとに、デザインとワーディングを融合させた取り組みは、国際的にも時代を先取りしたアプローチとして評価が高まっている。

 
イベント「DSSE」
「Design for Sustainable Society and Economy」の略。SDGsに向け、クリエイターや起業家にサステイナビリティの視点を養う場や、新しい評価軸に基づいたデザインアワードなどの機会を提供していくコミュニティ。初めてとなる今回は、デザインが持つアプローチの可能性と、クリエイターや起業家が持つべき捉え方と思考のヒントなどを届けたいという思いを込めて開催したという。

 
<WRITER・写真>小幡淳一

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