記者が提示した10の社会課題について、記者と参加者が一緒に解決アイデアを考えるワークショップ「イノベーション・キャンプ」が1月25日と2月14日、東京都内で開かれた。
参加したのは、金融機関やメーカー、IT企業、コンサル、メディア、NPO、自治体など、業界も職種も異なるビジネスパーソンや学生の計50人。記者と6人1チームになり、解決策に挑んだ。
各チームが丸2日間の議論と3週間のフィールドワークを経て発表したアイデアに対し、3人のアドバイザーが今後への期待をこめたコメントをした。
「イノベーション・キャンプ」アドバイザー
林千晶さん(「ロフトワーク」代表取締役)
別井貴志さん(CNET Japan編集長)
原真人(朝日新聞報道編成局長補佐)
神武直彦(慶応義塾大学大学院准教授)=プログラム企画・モデレーター
林千晶さん(「ロフトワーク」代表取締役)のアドバイス
フィールドワークのアンケートにも説得力 「出会いは総選挙」
最初に、一番よかったと思うチームを「マジック賞」に選びます。 「マジック賞」の意味を説明すると、私が所属するマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボでは、「ユニーク」「インパクト」「マジック」の3点で新しいプロダクトを評価します。なかでも、「マジック」を大切にしています。マジックは、聞いた瞬間、「わお」と思うかどうかで、プロジェクトがうまくいくかどうかが決まります。
今回、私が「マジック賞」だと思ったのは、「出会いは総選挙」(チームSSS)です。
総選挙というと、マスメディアが取り組むと、とかく難しくて読みたくなくなるテーマのナンバー1。それが、「出会い」という全く異なるものとくっついた新結合こそがマジックです。ただ新しいだけでなく、「町コン」というのは地域が好き取り組みなので、どこかでひとつ成功事例ができると、他の町へもダダッと広がる可能性があります。
そうすれば、少子化や地域活性化を内包しているおもしろい取り組みになる。 フィールドワーク期間に実施したアンケートもニーズがあることの説得力を増しました。発表に映像が使われたこともよかった。アイデア創出プロセスも秀でていたと思います。
別井貴志さん(CNET Japan編集長)のアドバイス
ワークライフバランスとウエアラブル、現実の流れに 「ミエールめがね」
私からは、「テクノロジー賞」を「ミエールめがね」(チーム:ここにいるよ)に贈ります。
これからの社会では、ネットワークと無縁だったものがいろいろつながっていき、新たなデータが生まれていく。その流れは変わらないし、モニタリングデータが、ビジネスになっていく。
そのなかで、ワークライフバランスの情報やデータのウエアラブルツールをつくり、モニタリングにも生かすというアイデアは、デジタル機器の中長期的な潮流をつかんだものだったと思います。
また、アイデア創出にあたって、フィールドワークを丁寧にやったことが伝わってきた。現実はどこまでいっているのかを取材、調査、議論をしたことを感じました。
原真人(朝日新聞報道編成局長補佐)のアドバイス
ユーザーの本音評価、幅広い問題に使える 「安住.com」
「リスクと上手に向き合う」という大きなテーマに取り組んだ、引っ越しの際に役立つ情報サイト「安住.com」(チーム:命知らず)の提案を「社会課題解決賞」に選びます。
「安心して住める家を探す」という情報は、普遍的な汎用性があると思います。不動産情報だけでなく、さまざまなリスクに対し、ユーザー側が思う本音評価をデータベースとしてまとめることは、幅広い問題に使えると思いました。実は、アドバイザー同士で、「私もこんな大家にだまされた」などと盛り上がりました。身近に苦労している人が多い、不動産をテーマに選んだのもよかったと思います。