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ダウンを再利用 未来へ続く「羽毛循環サイクル社会」とは

更新日 2022.02.03
目標8:働きがいも 経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標12:つくる責任 つかう責任
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

(グリーンダウンプロジェクト提供)
 
不要になった羽毛布団やダウンジャケットを回収し、再利用する「羽毛循環サイクル社会」を推進している一般社団法人「グリーンダウンプロジェクト」。限りある天然資源の有効活用は、環境を守り、生産と消費のバランスを安定させ、新たな雇用を生み出した。ふわりと舞う羽毛は、人々を持続可能な未来へと導いている。

天然素材の羽毛製品、使い古したら?

軽くて暖かい。そのうえ、温度や湿度の調整もしてくれる天然素材の羽毛製品。羽毛布団やダウンジャケットは、もはや寒い季節に欠かせない定番アイテムだ。しかし、年数を経て、使い古したものはどうするか。粗大ゴミとして処分? それとも……。
 
羽毛はアヒルやガチョウなど食肉用に飼育された水鳥の副産物。首の周辺などから1羽あたり10グラム程度しか採取できない。それをジャケットなら一般的には100グラム、羽毛布団では1キロが必要という。食肉用のため、羊毛のように何度も採取できるものではない。さらに羽毛は消費動向によって価格が変動しがちで、世界的には羽毛が食肉の需要が上回っている傾向にある。鳥インフルエンザの影響やフォアグラを生産するためにチューブでエサを流し込んで肝臓を大きくする強制給餌(きゅうじ)への批判の高まりなどを受け、今後ますます安定的な供給が難しくなることが予想される。
 
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(回収された羽毛布団=グリーンダウンプロジェクト提供)

羽毛リサイクルで二酸化炭素排出削減、雇用創出も

 
羽毛製品が普及していく裏で、廃棄される量も増えている。一般的に羽毛布団は10年を超えると寿命を迎え始めるといい、粗大ゴミとして捨てられるケースが多い。東京二十三区清掃一部事務組合によると、東京23区内で2018年度に粗大ゴミとして処理された布団は92万6593枚。経済産業省の統計によると、布団の販売量は年間約340万枚に上るとされ、廃棄される布団にはかなりの量の羽毛製品が含まれているとみられる。
 
そこで、世界中で取り組みが広がっているのが羽毛のリサイクル。限りある天然の資源の有効活用だ。
 
廃棄された羽毛布団の多くは焼却されており、リサイクルできれば資源保護に役立つだけではなく、二酸化炭素の排出量も抑制できる。また、羽毛製品の回収や解体作業に伴って就労の機会が増え、障がい者などの雇用創出が実現できるという。
 
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(「捨てないで!モッタイナイ!」と訴える回収箱=グリーンダウンプロジェクト提供)

「回収→輸送→解体→洗浄→製品→販売→使用→提供」の循環サイクル

 
リサイクルは個々の企業が独自に取り組むケースなどもあるが、一般社団法人「グリーンダウンプロジェクト」(三重県明和町)は羽毛製品を小売店などで回収して運び、解体や洗浄をした後、製品にして販売し、使った後には再び回収する「羽毛循環サイクル社会」を確立した。企業はもちろん、地域社会や消費者を結びつけ、羽毛を再利用することへの理解と協力で成り立っている仕組みだ。
 
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(「企業や団体、地域社会と生活者の理解と協力があるからこそ羽毛循環システムが成り立ちます」と話す「グリーンダウンプロジェクト」理事の竹村伊央さん)
 
消費者は不要になった羽毛製品を回収場所に持ち込む。対象となるのはダウン率が50%以上の製品で、穴が開いていてもテープなどでふさいであれば問題なく、ぬれていなければ汚れていても構わないという。回収の際には買い物の時に利用できる割引券などが配られたり、ポイントで還元されたりするケースもある。
 
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(1枚ずつ手作業で解体している=グリーンダウンプロジェクト提供)
 
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(不純物を除去し、洗浄と乾燥をした羽毛を選別する=グリーンダウンプロジェクト提供)
 
集まった羽毛製品は社会福祉協議会などを通じて就労作業を任せられた障がい者らが解体し、油脂やほこりなどの不純物を取り除き、洗浄と乾燥を施す。天然の羽毛はもともと動物特有の臭いやほこりなどでかなり汚れている。最初に製品化する段階で洗浄し、さらに再利用のためにもう一度洗浄するため、新毛よりもさらにきれいになるという。
 
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(洗浄前のダウンと洗浄後のダウン<左から>=グリーンダウンプロジェクト提供)
 
こうして生まれかわった羽毛は新たな製品に加工され、「GREEN DOWN」というタグをつけて販売されている。プロジェクトの理念に賛同した協力企業には、複数の大手寝具メーカーやアウトドアブランド、服飾メーカーなどが並ぶ。SDGsへの関心が高まるにつれ、社会貢献に結びつく活動の一環として企業の参加は増えており、社員の意識改革などでも効果が出ているという。
 
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(生まれかわったダウンには「GREEN DOWN」のタグがつけられる=グリーンダウンプロジェクト提供)

「循環サイクル効果様々 さらに回収を」 竹村伊央理事

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グリーンダウンプロジェクト理事で、「ETHICAL FASHION JAPAN(エシカルファッションジャパン)」代表の竹村伊央さんは「羽毛の再生は、ゴミの削減や地域の活性化、雇用創出など持続可能な社会の実現に向けて様々な効果をもたらす循環サイクル。羽毛製品はまだまだ多くが廃棄されており、小売店での回収だけでは認知度が低い。今後は自治体と連携するなどし、さらに多く回収できるように取り組みを進めていきたい」と話している。
 
<WRITER・写真>小幡淳一

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