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「音楽・フェスを手掛かりに人々の繋がりを生む」地方再生を目指すトランぺッター坂口修一郎さんの話【ソーシャル数珠つなぎ】

更新日 2022.02.02
目標11:住み続けられるまちづくりを

うわーーー、本当に長らくのごぶさた、ごめんなさいっ その間に季節は流れ流れ……、心を入れ替え、数珠をつないでいきますよ。

さて、夏だ!フェスだ!音楽だ!この季節、日本のあちこちで音楽フェスが開かれます!フェスめぐりがお好きな人もいるでしょう。今回は、音楽そしてフェスを手掛かりに、ソーシャルな世界へと足を深く踏み入れた坂口修一郎さんのお話です。(上記写真は、しょうぶ学園のパーカッションバンド「otto」と、ボイスグループ「orabu」)

坂口さんの写真

お話を聞いた人…坂口修一郎さん
プロのトランぺッターとして、ライブ活動やアルバムも多数。ジェーン・バーキンと共にワールドツアーをしたこともある。2010年から毎年8月に、鹿児島家南九州市川辺地区の廃校をステージに音楽フェス「グッドネイバーズ・ジャンボリー」を開催。銀座SIXをはじめ、ライブハウスやショップ、ショッピングビルの空間プロデュースも多く手掛ける。

鹿児島から東京へ。代官山で”音楽をつくる場所をつくる”

西郷さんの地元、鹿児島県の鹿児島市内で生まれ、高校まで過ごしました。「薩摩隼人だから」としょっちゅう言われて育ちましたね。あと「疑を言うな」。つべこべ理屈をこねまわすな、という意味です。

トランペットを吹き始めたのは小学校からです。鹿児島は薩摩藩の時代、西洋式の軍隊と共に軍楽隊も入ってきて、これが日本の吹奏楽が発祥だといわれています。大学も、ミュージシャンを多く出している和光大学へ。杏里さんとか、田島貴男さんとかですね。ジャズ研究会に入り、バンド「Double Famous」を結成、ジャズとラテン、レゲエを融合させたような無国籍の音楽でしたが、98年にメジャーデビュー、アルバムを6枚、フジロックにも出て順調でした。

日本の音楽産業が一番良かったころですが、ピークも見えていたし、自分も一生東京で暮らすのかな?という思いもあって。パフォーマーとは別の軸を作りたい、って思ったんです。それで、音楽をつくる場所をつくろうと、代官山のライブハウスの空間プロデュースをしました。2003年で、このへんから二足のわらじをはきはじめました。

5年くらいたって、いつまでも東京にいるのかな?と思い始めて。自分と土地が切り離されている感じがあったんですよ。そのころ東京で知り合った人が同郷で同い年だったんですが、鹿児島でデザインショップを始めると言っていて、話しているうちに「東京と鹿児島、二拠点でやれば?」と言われて。そのころ東京でイベントやライブを手掛け始めていたんですが、鹿児島でも何かアートフェスかイベントができないかなと。

最初は街中で、公園とか美術館とか探したんですけど、実績もないし、騒音の問題もあって見つからなくて。どうしようかと思っていたら、鹿児島中心部から4、50分行ったところにある川辺を教えられました。中山間地域の過疎地区にまわりに一軒も家がない廃校があるから音出してもいいんじゃない?って言われて見に行って。木造の築130年以上の学校が打ち捨てられていたんですよね。校庭には二宮金次郎の銅像があって。

そこを見ていたら、鹿児島でものづくりしている若い連中もいるよなあ、彼らも一緒にできたら面白いだろうな、と。代官山のライブハウスでも映像やメディアアーティスト呼んで、ジャンルを超えてセッションするのが楽しかったので。

知的障害者のバンドに、会場はスタンディングオベーション

2010年の8月に第一回をやりました。2、300人くらいお客さんが来てくれましたが、ミュージシャンは自分たちのバンドで。足代は出したけど満足なギャラも払えませんでした。鹿児島市中の面白い人に来てもらいたいな、と思っていた時、しょうぶ学園のことを知りました。知的障害の人たちのための施設なんですが、いろいろな素晴らしいアートやパフォーマンス活動をしていて、バンドもある。彼らに来てライブをしてもらったんです。

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(「しょうぶ学園のパーカッションバンド「otto」と、ボイスグループ「orabu」」)

正直、観客は最初、障害者のバンドでしょ、って思いながら見ていたと思うんですよ。そしたらね。彼らは何て言うんだろう、純粋で、鏡みたいな存在っていうのかな。その場にいる人たちの気分を吸収してそれをさらに倍加させて自分たちの気持ちにしちゃうみたいなところがある。

お客さんたちは、真夏で、開放的な場所で、楽しもうって思ってきているわけじゃないですか。だからバンドのみんなも楽しく楽しく…って、盛り上がり、するとお客さんの気分もあがって、そうするとさらに……、って感じにどんどん熱くなって、最初はみんな寝っ転がってみていたのが、ノリノリになって、最後はスタンディングオベーションですよ。

僕はプロのミュージシャンなわけですが、あんな経験は初めてです。プロがテクで観客をのせるというのも違う。学園の園長さんもこんな経験は初めて、って驚いてました。そこから地元の人たちとのつながりも生まれました。

役所や議会も巻き込んで「森と水のくらしプロジェクト」を始める

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(「森と水のプロジェクト」が進む「森の学校」の上空からの俯瞰図)

一回目は5、60万の赤字で、自分がかぶりました。覚悟していたし、それでも来年もやろうと決めていました。地元の寄り合いにも出るようになって。米国人の民俗学者で川辺に住んでいるジェフリー・アイリッシュさんとも知り合いました。地域の人たちの集まりにいくと、もう野菜やらお肉やらをいっぱい、もってけもってけ、って。すごくおいしくて、体にもよくて。そういうゆたかさみたいなものが地方にはありますよね。

けれども、学校の閉鎖が決まってしまったんですよ。ただ壊すのにも数千万かかるということで、そのまま放置されて。それはもったいないということで地元の人やアイリッシュさんたちとも話し合いを重ねて、学校の利用や空き家の再生、移住者の呼び込みのプロジェクト「森と水のくらしプロジェクト」を始めようと。役所や議会も巻き込んで、国の地方創生の補助金に応募して、通りました。

今年でジャンボリーは9回目、2000人がくるようになりました。4割は県外からです。運営のボランティアも4、50人、全国から来てくれます。不法投棄とかも多い地域なんですが、みんなで掃除をすればあっという間にきれいになって、開催する前よりもきれいになって最後は終わります。

ジャンボリーを見て、うちでもやって、とローカルなイベントも頼まれるようになりました。ここ鹿児島でも、駅前広場のイベントや駅ビルのコンサルをやっています。地域再生が仕事になってしまったんですね。今は東京生活が3分の2、残りが鹿児島です。売り上げは東京が8割かな。最近では、銀座SIX一階のツーリストサービスセンターも手がけました。過疎地から銀座まで、そのバランスが自分には心地いい。

森と水のくらしプロジェクトも、学校に宿泊施設をつくり、サマースクールや企業研修ができるようにしてビジネスを回し、過疎地域に仕事を作ろうと思っています。ミュージシャンのレッスン、ツリーハウスや林業体験、いろいろと考えていますよ。

ジェーン・バーキンに"誘拐"されてワールドツアーへ

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ジェーン・バーキンとの縁ですか?東日本大震災の後で彼女がチャリティーで日本に来たんですが、サポートしてくれるミュージシャンを探してる、って一週間前に言われたんです。一緒に来てくれる人がいなかったらしくて。結構断られたみたいなんですが、4人集めてボランティアでバックバンドをやりました。そしたら彼女が感激してくれてね。渋谷のクアトロでライブをしたんですが、「彼らを気に入ったので、誘拐してワールドツアーに連れていきます!!」(笑)。二か月くらいしてエージェントから連絡があって、足掛け二年、ツアーに同行しました。え?彼女のバッグ?バーキンでしたよ。すごい使いこんでいてね。

ジャンボリーにしろジェーンにしろ、もうけ云々ではなくて始めたことが、人に喜ばれて仕事につながっていくというのかな。自分が楽しくあるためにはまわりも楽しくなったほうがいいわけで、今、いい循環ができている感じがありますね。

2018年のジャンボリーは8月18日に開催しました!

岡山市議の森山幸治さん
「マニアックな音楽DJそしてカフェのオーナーから岡山市議選にチャレンジし、選挙カーではなく選曲カーを流して当選したという数ある僕の友人の中でも指折りのつわもの。カルチャーから政治を見ることができる唯一無二の男です」

「SDGs」について、詳しくはこちら:SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり

akiyama
writer:秋山訓子

朝日新聞編集委員

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