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「貧困のサイクル」抜け出せない、アフリカだから当たり前なのか 制度を整えるだけでは足りないもの

公開日
目標1:貧困をなくそう
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに

水遊びをするCくん

コラム】 from Kenya
みんな同じ空の下

ケニアで障がい児とそのご家族を支援する「シロアムの園」の園長で小児科医の公文和子です。約10年間、この国でエイズの感染率の低下などに心を尽くしました。一方で、数字には表れない「命の質」の問題を考えるようになった時に、障がい児との出会いが与えられました。そのキラキラした笑顔の背後にあるたくさんの困難を知り、2015年、シロアムの園の開設に至りました。ちょうどSDGsが始まった年です。子どもたちの「持続可能な」笑顔を見たい、子どもたちと共に生きる社会をみんなで作っていきたい。そんな思いでケニアの障がいのある子どもたちとご家族と共に生きています。

貧困が障がいの理由になる

ケニアで障がいのある子どもたちと共に生きる時に、どうすれば貧困のサイクルから抜け出すことができるのか、途方に暮れることがよくあります。アフリカはみんなが貧しいから障がい児者が貧しくても当たり前、という漠然とした思いが、もしかしたら皆さんの中にあるかもしれません。

しかし、障がいを引き起こす原因の一つに制度の不備があり、その結果、本人や家族が貧困から抜け出せない、ということを「当たり前」としてしまうのは、少し乱暴な気がします。

ケニアでは、お金がないと人材・設備が整わない医療施設での出産を強いられ、適切な医療が受けられません。そのため、時には一生に関わる大きな障がいを負うことにもなります。

例えば、普通分娩(ぶんべん)の場合、日本では5日前後の入院が一般的ですが、入院費を払えない人が多いケニアでは多くの母子が出産翌日に退院となります。結果的に、生後1日以後に出てくる異常や黄疸(おうだん)などの症状が診察・処置されず、それが原因で障害を負うこともあります。

また、子どもの発達を診察する「健診制度」が不十分であるため、早期に異常を発見して治療・リハビリなどを開始することができないということも、その子の人生に大きな影響を与えます。障がい者に対する行政などからの経済的支援は、現状の国の制度を考えると、ほとんど期待できないのです。

障がい児を育てるおばあちゃんの苦悩

他のお母さんと会話を楽しむCくんのおばあちゃん

Cくんは現在11歳、重い自閉症、知的障がい、てんかんがあり、発達の遅れにより10歳でようやく少し歩けるようになりました。シングルマザーだった母親は、Cくんの重い障がいを受け入れることができず、Cくんが1歳の時におばあちゃんに任せて新しい生活を始め、Cくんとは一切関わりを持たなくなりました。

それ以来、おばあちゃんが1人でCくんを育ててきました。孫をとても愛しつつも、障がいを理解できずに悩み、心理的にも経済的にも頼る人も制度もなく、1人で頑張ってきました。

てんかんの薬代の出費はとても大きなものですが、健康保険制度もありません。一生懸命働いて、薬を買っても、Cくんが薬を嫌がって飲んでくれず、せっかく買った薬が無駄になってしまうことも少なくありません。薬代や生計を立てるために日雇いや古着の行商などを行っていますが、障がいの重いCくんの面倒をみてくれる人もほとんどいないため、Cくんを置いて出かけられる時間も限られており、収入は生きていくのもままならない程度です。

Cくんがシロアムの園に通い始めたのは6歳の時で、それ以来休まずに通っています。おばあちゃんはCくんをシロアムの園に預けて仕事に行ったり、週に一回は親子療育でCくんとの遊び方や支援の仕方を他の親御さんたちと一緒に学んだりしながら、Cくんの小さな成長を大きく喜び、しかし、心の奥深くには生活の苦しさの大きな痛みを抱えて生きています。

「生まれてくれてありがとう」と言えるために

このCくんの小さな家庭を貧困のサイクルから救い出すためには、まずは福祉制度や社会保障制度、保険制度が必要ですし、そんなおばあちゃんがCくんに「生まれてきてくれてありがとう」と言えるために、Cくんの成長を共に喜び、愛をもって共に歩む人たちが必要なのだと思います。

日本は「子どもの貧困」という大きな課題を抱えています。経済が進んだ日本には、子どもを保護する法律や制度がたくさんあるにもかかわらず、様々な原因でその制度にアクセスできないために、子どもたちが十分な教育や医療を受けられず、結果的に貧困のサイクルに入っていくという悲しい現実があります。

世界中の貧困の解決などという大それたことは考えていませんが、目の前の大切な人たちの必要が満たされ、愛し愛されることができる環境が作れるように、努力を続けていこうと思います。

【コラム・みんな同じ空の下】
①なぜ今、ケニアの障がい児と共に生きているのか 私が恋に落ちた子どもたちの笑顔
②「アフリカだから医療が遅れてるんでしょ?」 命を救ってなんぼのケニアで私が向き合っているもの
③「厳しいイバラの道」4カ月で「美しいバラの道」 目標1500万円、つないだ心のバトン
④パイロットを夢見る11歳のジョセフ君が幼稚園で学んでいる理由 人生は素晴らしいと感じてもらうために

【朝日新聞掲載記事】

ケニアで障害児に寄り添う小児科医 彼らに生きる喜びを
脳障害の子がある日突然…日本人がケニアに施設作ったら

writer:公文 和子

小児科医、「シロアムの園」園長

ケニアの障がい児とその家族の支援事業「シロアムの園」の創設者・園長であり、クリスチャン小児科医。1994年から日本で小児科医として働いた後、2000年に日本を離れ、2002年よりケニア在住。「シロアムの園」は、ケニアの首都ナイロビ郊外に2015年開設。子どもたちやそのご家族にとって必要なこと、大切なことを、その人まるごと受け入れて、医療・教育・リハビリ、社会面などの包括的なケアを提供し、子どもたちやご家族と共に共生社会を目指す。

著書紹介「グッド・モーニング・トゥ・ユー!」

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