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ウクライナ人とロシア人の友だちがいる私 戦争のない未来「イメージ」する力 

公開日
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標16:平和と公正をすべての人に
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ウクライナ人とロシア人の友だちとは家族ぐるみの付き合い

コラム】 from Canada

エシカルのその先へ

国産ニット帽子ブランド「ami-tsumuli (アミツムリ)」デザイナーの寺本恭子です。28歳の時に、祖父から老舗の帽子メーカーを引き継ぎました。2004年にはブランドを立ち上げ、ファッション小物の国際展示会であるパリのプルミエールクラスでデビュー。エレガントで高品質なニット帽子と国内外で評価されましたが、その後、アパレル素材の背景に隠れたストーリーを知り、「良いモノづくり」の定義を見直しました。「真のラグジュアリーとは何か?」をカナダに移住した今も追究中です。

今までで一番、身近に感じる戦争

2月24日、ロシアのウクライナ侵攻のニュースが流れました。長く生きていれば、海外で起こる戦争の話を耳にすることは、今までにも度々ありましたが、こんなにも身近に感じたのは今回が初めてです。それは、今ここモントリオールでの親友が、オデーサ(オデッサ)出身のウクライナ人だからです。

彼女は、2014年のウクライナ危機のとき、弁護士のキャリアを捨てて、ご主人と子供とカナダに移住することを決意しました。今もオデッサには、親戚や友達がたくさんいて、連絡を取り合い、自宅から離れることができない家族を励まし続けています。

ロシア語も堪能な彼女は、ロシア人の知り合いも多く、その中でも特につながりの深いロシア人の友達と家族を数年前、紹介してくれました。私たちは家族ぐるみで仲良くなり、一緒にピクニックをしたり、クリスマスを3家族で過ごしたりと、親戚同士のようになりました。

この戦争が始まり、ウクライナ人の友達と同じくらい私が心配だったのが、そのロシア人の友達です。寸前まで「ロシアが侵攻することはないと思う」と話してたので、さぞかし驚いているだろうと思いながら、「元気?」と彼女を気遣うメッセージを送ってみました。すると、涙ながらに私の理解への感謝と、今自分たちが受けている誹謗(ひぼう)中傷について伝えてくれました。

「祖国」と「個人」の関係

モントリオールは世界有数のインターナショナルシティーです。人々は、違う民族とうまくやっていく術を身につけているはずです。それなのに、10年以上前に祖国を離れた彼女たちに怒りをぶつけるなんて、きっとこれは世界中のロシア人が直面している状況なのではないかと感じ、胸が苦しくなりました。

「祖国」と「個人」について考えさせられたのは、これが初めてではありません。コロナが始まった頃、中国人に「お前たちがウイルスを持ってきた!」と物を投げたり、襲いかかったりする事件が相次ぎました。私も「中国人と日本人の区別がつかない人がほとんどだから、今はダウンタウンに行かないように気をつけてね」と近所の方に言われ、「なんで私が?」と思わぬ巻きぞえに驚きました。

「祖国と個人は関係ないでしょ」と簡単に片付けてしまえれば楽なのですが、多かれ少なかれ、一人一人が祖国の影響を受けているのは事実だし、だからこそこの世界には美しい文化の多様性が存在するのでしょう。

ロシアだけが悪いの?」 息子のクラスでの議論

※本文と写真は関係ありません

では、一体どうしたら良いでしょうか。話を今回の戦争に戻して考えてみます 。

私自身は、どんなことにもそれぞれの立場があり、これは善だとか、悪だとか、決めつけることはできないと思っています。でも仮に、世の中の多くの人を不幸にするものが「悪」だとしたら、それは私たちを善か悪かの単純な二元論で戦わせる世の中の仕組みそのものではないかと思うのです。

自分にとって分かりやすい「悪」を見つけ、非難し、怒りをぶつければぶつけるほど、この二元論は助長されていくと、私は思っています。 一時的に感情的になったとしても、一人一人が冷静さを取り戻し、物事を善悪だけでジャッジせず、ただ理想の未来を心の中に描くことで、「悪」は力を失っていくのではないでしょうか。

戦争始まってすぐ、息子が通っているクラスで、この戦争についての話し合いがあったそうです。大多数の生徒が「ロシアが悪い」と言う中、「ロシアの言い分をちゃんと聞かないのはアンフェアだと思う」「ロシアばかりが悪いわけじゃないと思う」などの意見もあり、それを先生も生徒も否定することなく、一つの意見として受け入れたそうです。また、あるモロッコ人のクラスメートは、ポーランドに避難したウクライナ人の中でも、白人は優遇されて、有色人種は扱いが悪いなどの人種差別が起きている、という話をしてくれたそうです。子どもの話を聞いていると、とても勉強になります。

改めて思うジョン・レノンの「イマジン」

ウクライナへのサポートを表明している小売店

今、私は亡くなったジョン・レノンの「イマジン」を改めて思い浮かべています。権力の前で個人の力は非力かもしれませんが、一人一人のイメージの力が集まれば、実は大きな権力をも動かせ、戦争を繰り返す世の中の仕組みそのものを変えていくことができるのではないかと、私自身は信じています。

カナダも日本と同じく、今、ウクライナを応援する立場をとっています。音楽家でもあるウクライナ人の友人は、チャリティーコンサートの準備で忙しそうです。街を歩くと、ウクライナの国旗をディスプレーし、サポートの意を表している小売店をよく見かけます。

私は、「ここに住むロシア人たちが、これを目にしたら、何て思うんだろうな」などと、ぼんやり考えながら、いつかきっと来る、世界中の人々が憎しみ合わない未来を強くイメージして、モントリオールでの日々を過ごしています。

【コラム一覧】
①ママ友の言葉で始まった「良い素材」を知るための「旅」 自分の目で見て考え続けた10年
②「ハッピーホリデーズ」が教えてくれた多様性 勘違いだった「日本人VSカナダ人」のバトル
③薄紙で「クシュクシュ」と布で「お弁当包み」 日本を離れて感じた「包む文化」の魅力と戸惑い
④「私、ベジタリアンなんです」と言ったら、どう思いますか?お肉を食べなくなった6年で考えたこと

writer:寺本 恭子

国産ニット帽子ブランド「アミツムリ」デザイナー

東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、新卒で入社した銀行を2年で退職し、大好きだった洋裁を学ぶために、東京田中千代服飾専門学校デザイン専攻科へ。卒業後は、オートクチュール・ウエディングドレスデザイナー・松居エリ氏に師事。28歳のとき父が急逝したため、母方の祖父が経営する老舗ニット帽子メーカー吉川帽子株式会社を受け継ぐ。2004年にニット帽子ブランド「ami-tsumuli(アミツムリ)」を立ち上げ、同年にパリの展示会でデビュー。2014年からカナダ・モントリオールへ移住し、サステナブルな視点を生かしながら創作を続けている。

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