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薄紙で「クシュクシュ」と布で「お弁当包み」 日本を離れて感じた「包む文化」の魅力と戸惑い

更新日 2021.12.22
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標12:つくる責任 つかう責任

ギフトティッシュという薄紙を紙袋からはみ出すように入れたプレゼント

コラム】 from Canada

エシカルのその先へ

①ママ友の言葉で始まった「良い素材」を知るための「旅」 自分の目で見て考え続けた10年
②「ハッピーホリデーズ」が教えてくれた多様性 勘違いだった「日本人VSカナダ人」のバトル

国産ニット帽子ブランド「ami-tsumuli (アミツムリ)」デザイナーの寺本恭子です。28歳の時に、祖父から老舗の帽子メーカーを引き継ぎました。2004年にはブランドを立ち上げ、ファッション小物の国際展示会であるパリのプルミエールクラスでデビュー。エレガントで高品質なニット帽子と国内外で評価されましたが、その後、アパレル素材の背景に隠れたストーリーを知り、「良いモノづくり」の定義を見直しました。「真のラグジュアリーとは何か?」をカナダに移住した今も追究中です。

カナダ移住まもなくの出来事

モントリオールに移住して間もないころ、道ですれ違ったご近所さんが12個入りの卵のパックを小脇に抱えながら、笑顔で「ハーイ」と私にあいさつしてきました。その時は、さすが海外はワイルド!と驚きましたが、しばらく暮らすうちに、それはごく普通のことと分かり、気がつけば私もその仲間入りをしていました。

日本を離れてみて、日本が良くも悪くも、ラッピング大国であることに気がつきました。例えば、プレゼントの包み方にも大きな違いがあります。こちらのプレゼントの包み方をご紹介しましょう。

もちろん、きれいな包装紙できちんと包みリボンをかける特別なシチュエーションもあります。でも、通常は、その様なラッピングはしません。ではどうするかと言うと、手提げの紙袋の中に品物を直に入れます。そして、その上にギフトティッシュという薄紙を紙袋からはみ出すようにクシュクシュっと入れて、完成です。

お店のプレゼント用の梱包にもギフトティッシュが使われる

お店で無料サービスの範囲で「プレゼント用にしてください」とお願いするときも、基本的にはこうなります。手提げ袋は、保管して置いて、簡単にリユースすることができます。薄紙もリユースしようと思えばできますし、もし捨てたとしても、ゴミは少量で済みます。また、紙袋に「HAPPY BIRTHDAY」「THANK YOU」と既に印刷してある華やかな手提げ袋も売っていて、ギフトティッシュを入れずに使うこともあります。こちらも、頂いたら保管して、リユースしています。

この手法を日本でも取り入れたら、エコで簡単で可愛くて、広まるのではないかと思うのは、私だけでしょうか。日本には和紙などの素晴らしい紙がたくさんあります。そんな、和風のギフトバック&ギフトティッシュがあったら、今すぐにでも使いたいです。きっとカナダの友人たちにも喜ばれることでしょう。

話は変わりますが、私は色々なハーブティーをブレンドするのが好きで、あれこれ買っています。数カ月前、「はと麦茶」と「桑の葉茶」が、こちらのお店で見つからず、Amazonカナダで注文したことがあります。すると、はと麦茶は日本から、桑の葉茶はブルガリアから、ほぼ同時に送られて来たのですが、それぞれの包み方があまりに対照的で、思わず笑ってしまいました。

日本からのはと麦茶は、まず150グラムずつ、しっかりしたジップ付きの袋にパックされています。それが、クッション性のある凹凸の紙に包まれ、隙間には丸めた薄紙が入れられ、それが更にしっかりした紙箱に、メッセージカードと小さな折り鶴を添えて包まれていました。箱を開けた瞬間、「さすが日本人!」と、その細やかさに感動しました。

丁寧に梱包された日本からの「はと麦茶」

ブルガリアからの桑の葉茶の方は、大きめの茶封筒のようなもので送られて来ました。開けると、折り込んだ口をホチキスでバチバチと留めた、薄手の簡素な紙袋の中に、茶葉が直に入っていました。袋を開けた時、「なんて素朴なんだ!」と、これはこれでほほ笑ましくて好感が持てました。

素朴な包みのブルガリアからの「桑の葉茶」

みなさんだったら、どの様に包むでしょうか?どの様に包まれていたら、うれしいでしょうか?

私は、西洋のラフな感じも好きですが、日本人の気遣いをカタチにする奥ゆかしい文化に、とても誇りを持っています。丁寧に包まれたものを受け取るのは、確かに気持ちがいいですよね。ただその後、大量の包装紙を処分する時には罪悪感を感じてしまうのも事実です。そこまで想像できる送り主は、どれだけいることでしょうか。

相手を思いやる日本の文化

環境問題が深刻化している今、日本の梱包文化を見直すタイミングなのかもしれません。

離れてみてわかった日本のスゴイことが、もう一つあります。それは、風呂敷文化です。「風呂敷なんて今時は使わないよ」と思うかもしれませんが、ほとんどの方は、お弁当包みを使いこなせますよね?実はそれ、幼稚園や学生時代に日々特訓した賜物なのです。

こちらのお弁当は、ランチバックと呼ばれるジッパー付きの小さな持ち手のついたバックに放り込むだけなので、中身の形状にフィットする様に巧みに布で包んで綺麗に結ぶなんて、簡単にはできないのです。

一枚の布の結び方を変えるだけで、ワインボトルでもスイカでも包めてしまう風呂敷は、本当にカッコイイと思います。そもそも、日本の包む文化は、使い捨ての包装紙ではなく、何度も使える布が源流だったはずです。先人たちに思いを馳せて、何百年も引き継がれて来た風呂敷文化を今再び日常に取り入れられたら、素敵だなと思います。

ただ単に「環境のために過剰包装をやめましょう!」というと、ちょっと寂しい気もします。

少し視点を変えることで、日本人が持つ、相手やモノを思いやる優しさや、そこから来る「包む文化」を大切に継承していく、新たな環境問題の解決策が見つかるかもしれません。

writer:寺本 恭子

国産ニット帽子ブランド「アミツムリ」デザイナー

東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、新卒で入社した銀行を2年で退職し、大好きだった洋裁を学ぶために、東京田中千代服飾専門学校デザイン専攻科へ。卒業後は、オートクチュール・ウエディングドレスデザイナー・松居エリ氏に師事。28歳のとき父が急逝したため、母方の祖父が経営する老舗ニット帽子メーカー吉川帽子株式会社を受け継ぐ。2004年にニット帽子ブランド「ami-tsumuli(アミツムリ)」を立ち上げ、同年にパリの展示会でデビュー。2014年からカナダ・モントリオールへ移住し、サステナブルな視点を生かしながら創作を続けている。

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