「ため池」事業で暮らし豊かに カンボジアで水不足解消

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

雨季に水をためる「ため池」を掘削し、深刻な乾季の水不足を防ぐ――。カンボジアの農村部で、年間を通じて食料を生産し、安定的に暮らせる環境を整えようという取り組みが広がっている。「誰一人取り残さない」。人と人とが手を取り合って進める活動だ。

 
カンボジアには雨季と乾季があり、乾季はほとんど雨が降らない。農村部の水不足は深刻で、乾季には日々の食事に困ったり、収入がほとんどなくなったりしてしまう農家が相次ぎ、人々の暮らしを大きく左右する要因になっていた。

 
そのため、認定NPO法人「日本国際ボランティアセンター(JVC)」は2015年、雨季に雨水を貯水するため池の掘削を現地でスタート(JVCカンボジアのため池掘削の活動詳細)。大きいもので縦約25メートル、横約15メートル、深さ約5メートルあり、設置には1カ所で約30万円の費用がかかるが、複数の世帯で共有して使うことができるという。

 
乾季には多くの働き盛りの人が現金収入を求め、村を離れて出稼ぎに行く。残された家族にとって、遠くに水をくみにいくのは重労働だったが、ため池に水があれば、大幅な負担軽減になる。各地でため池の整備が進み、現在は約25カ所が利用されている。

 
sdgs_cambodia02
(ため池を活用して生活が豊かになったと喜ぶ女性たち)

作物栽培で収入 「うれしくて楽しい」

ため池が誕生した結果、雑草しか生えていなかったような土地でも年間を通して作物を育てることができるようになった。家族で食べる分を差し引いても余るほど豊作に恵まれ、街に卸して収入を得ている女性もいるという。「自分で収入を生み出せるようになったことが何よりうれしくて楽しい」。ため池で日々の暮らしに楽しみが増え、周辺の農家では笑顔が広がっている。

 
JVCによると、2019年3月に掘削したため池の周囲ではハーブなどの作物が栽培され、加工してハーブティの原料として卸す挑戦も始まっている。 現地では、「無農薬」「国産」という点に共感し、適正価格で買ってくれるパートナーも出現し、女性たちの貴重な現金収入になっている。また、農業に対する関心も高まり、加工の研修には毎回たくさんの人々が参加するなど、村に活気が出てきたという。

 
sdgs_cambodia03
(雨水がたまったため池。雨季が終わる頃には満タンになる)

ため池で生活に変化 無農薬栽培で自信

村人たちの日常は、ため池が整備されたことで驚きと感動に満ちた「宝物」になった。自然に逆らうことなく、受け止めていく農村の人々の柔軟性とも合致し、暮らしは劇的に変わった。

 
ボッパーさんもため池で生活が変わった一人だ。現状では満足せず、さらに菜園を進化させようと取り組み続けている。その原動力のひとつは、菜園を訪れた外部の人から「過酷な環境の中で、たくさんの野菜を全部無農薬で育てているなんてすごい」と称賛されたことだったという。カンボジアの農村地域では、家を空ける出稼ぎに出られず、残って農業をするしかなかった村人たちも多い。生きる道を選べないという現実の中、今の暮らしこそ「価値ある選択肢」として実証された格好になっている。

 
sdgs_cambodia04
(ため池を利用して菜園づくりに取り組むボッパーさん)

 
sdgs_cambodia05
(丹精込めて無農薬で作物を栽培するボッパーさん)

 
sdgs_cambodia06
(訪れた人の称賛の声が農業に打ち込む原動力になっているというボッパーさん)

農業通じて住民同士交流 表情いきいきと

住民らによる新たな取り組みも進んでいる。バランスの取れた栄養素を含むため、ミラクルツリー(奇跡の木)と呼ばれる北インド原産でワサビ科のモリンガのほか、レモングラスや唐辛子、空心菜などの栽培も広がっている。JVCは堆肥(たいひ)や液肥の研修などを開き、順調に育つように後押ししている。苗木づくりや栽培に関する研修を開いたところ、参加者同士が自主的にヒョウタンの種を交換したり、栽培方法について意見交換したりしていたという。水の確保を目的としたため池だったが、今や地域の中に新しいコミュニティーを生み出すきっかけとなった。村の女性たちの表情も、よりいきいきしてきたという。

 
sdgs_cambodia07
(ため池の周囲に共同でレモングラスを植える作業)

 
sdgs_cambodia08
(空心菜の栽培方法について開かれた研修)

 
いかに「宝物」を掘り起こしていくか――。JVCでは、ため池から広がる豊かな暮らしをさらに充実させるため、「ここで暮らし続ける」ことを支援する取り組みをさらに進めている。

 
このプロジェクトを応援しているジャーナリストの堀潤さんは、カンボジアの現地を訪れたときの印象を次のように語る。

 
「文化や生活様式の違い、言葉の壁を乗り越えながら、JVCのメンバーたちがとても丁寧に、そして朗らかに地域の皆さんとコミュニケーションを取っているのがとても印象に残りました。なぜ支援が必要なのか。一人ひとりが向き合う悩みと一緒に向き合う姿勢が、独りよがりな支援とは異なる、命をつなぐ関わりだと実感させられました」

 
「急激な経済発展で農村部でも現金がなくては病院にさえ行けない状況。自給自足とは異なる変化で、土地を担保にお金を借りざるを得ない人たちもいました。夜逃げのような格好で空き家になった家屋の前で、自問自答しながら支援のあり方を模索する姿も印象に残っています。息の長い活動を支えることができればと、伝えなくてはと僕も背中を押された思いです」

 
この計画については、クラウドファンディングA-portで支援も呼びかけている。2月2日に当初の目標金額30万円は達成したが、現地での研修などの活動にも多くの資金が必要になるため、引き続き支援を募っている。協力者にはため池の周囲で育ったハーブを使ったハーブティのプレゼントなどがある。締め切りは2020年2月15日。詳しくはA-portのサイトへ。

この記事が気に入ったら拡散おねがいします