社会課題を語り合う

『あなたの買い物が未来を変える~エシカルと消費とSDGs』【未来メディアカフェvol.16】

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みなさんは、毎日の買い物で使ったお金がどこへ行くのか、想像してみたことはありますか?
 
私たちが使ったお金は、商品を売っている人にわたり、さらに生産者へとわたっていきます。私たちのお金は、当たり前ではありますが、生産者の生活を支えています。そうやってあらゆる産業が守られ、この社会を形成しています。つまり、私たちのお金の行き先が変われば、経済も変わる、と言えるのです。
 
では、この毎日の「買い物」は、私たちの社会や未来にいったいどのような影響を与えているのでしょうか?
 
2018年3月24日(土)、ふだんの消費活動と持続可能社会の関係を考えるトークイベント、朝日新聞社 未来メディアカフェ『あなたの買い物が未来を変える~エシカルと消費とSDGs』が、東京スカイツリータウン®にて開催されました。
 
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(「EARTH HOUR 2018」の一環で行われた今回のイベント。中央に設置された特設ステージで開催され、会場には多くの親子連れやカップル、学生さんなどが集まりました。)
 
ゲストは、一般社団法人Think the Earth 理事の上田壮一さん、一般社団法人エシカル協会代表理事 の末吉里花さん、朝日新聞科学医療部記者 神田明美の3名。
 
2001年から、環境問題などの難しい問題を、いかにわかりやすく、いかにその人の心に残るように伝えるかということに取り組んできた上田さん。最近ではSDGsを学校などの教育現場に広める活動「SDGs for School」をスタートさせ、制作した書籍『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』を一部の学校に配布するプロジェクトを進めています。
 
まずは上田さんに、今回のテーマにもなっている『SDGs』についてご説明いただきました。
 
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「SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連で採択された持続可能な社会を実現するためのグローバルゴールのことです。具体的な目標が17項目あり、個人、企業、国、自治体、誰でも取り組むことができます。最近、日本でも、みんなで協力してこれに取り組もうといった機運が高まっています」
 
SDGsについて知っている人はいますか? という上田さんの質問に対し、会場の半数以上の人が手を挙げました。会場のみなさんのSDGsに対する関心の高さが伺えます。

国産のお寿司が食べられなくなるかも? 水産資源の30%は、将来に残せないものに

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続いて、朝日新聞で10年間、環境問題を取材している神田記者が、世界で注目されている課題について2つの事例を紹介しました。
 
1つ目は「水産資源の乱獲問題」。昨今世界では、水産資源の3分の1が乱獲されていると言われています。世界の水産物の漁獲量は、1950年に2,000万トンだったものが、1980年までに3倍に増加してしまいました。さらに1974年から2009年までの水資源の状態を比べると、健全な資源状態の水産資源が占める比率が確実に下がり、枯渇の危機にあるものが増えてしまっています。
 
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(出典: WWF HP  FAO; The State of World Fisheries and Aquaculture 2012)
 
特に太平洋では、ニホンウナギや太平洋クロマグロが絶滅危惧種に指定されたことが、日本では問題視されています。このままいけば、日本人が大好きなお寿司も、いつか食べられない日が来てしまうかもしれません。

私たちの生活のいたるところに使われている「パームオイル」の問題って?

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(出典:パーム油ガイド HP)
 
もう1つは、「パームオイル」にまつわる問題です。アイスクリームやカップラーメン、ポテトチップスなどの加工食品、シャンプーや石鹸、化粧品といった日用品など、パームオイルは私たちが毎日食べていたり、使っているほとんどのものに使われています。商品の原材料表示に「植物油脂」と書いてあるものの多くが、パームオイルを使用しています。
 
パームオイルは、値段が比較的安く、食品や燃料など用途が多様なことから、ここ20〜30年で広く使われるようになりました。今では、日本でもなたね油に次いで2番目に多く消費され、国民1人当たり年間4〜5リットルも消費されていると言われています(WWF資料より)。しかし、このパームオイルを大量に使うことが、私たちの知らないところで自然や人を傷つけているかもしれないのです。
 
神田記者は、東南アジアにあるボルネオ島の熱帯雨林が乱伐されている様子を取材しました。広大な森がアブラヤシ農園に変わっていました。
その熱帯雨林にはさまざまな野生動物や先住民族の人たちが暮らしていたにもかかわらず、私たちが日々使う製品のためのパームオイルを大量に採るために、彼らの暮らしの場所が壊されてしまっている現状を目の当たりにしたそうです。
 
さらには、男女差別や子どもが働かされるといった人権問題、土地をめぐる地域住民との紛争も起きてしまっています。インドネシアでは、パームオイル農園の開発許可をめぐり今までで4,000件以上の紛争が起きてしまっています。
 
また、この地域一帯に広がる泥炭地は、大量の炭素を固定しており、「地球の火薬庫」と呼ばれ、農園にする際の焼畑によって温室効果ガスを大量に排出することから、大きな環境破壊にもつながっています。
 
パームオイル生産1トンあたりの二酸化炭素換算の温室効果ガス排出量は、石炭が2.4トンであるのに対し、約3.9〜30トンと高い排出量です。
 
過去20年間で、約360ヘクタールの森林(九州ほどの面積)がアブラヤシ農園となり、2015年のインドネシアの森林火災だけで、日本の年間排出量を超える約16億トンもの温室効果ガスが排出されてしまいました。(パーム油ガイドより)

SDGsが提唱する、誰ひとりとして取り残さない世界へ。「エシカル消費」ができること

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こういった問題に対し、私たちがすぐにできることは、「エシカル消費」だと末吉里花さんは話します。末吉さんは、SDGsの12番目の目標である「つくる責任 つかう責任」にコミットし、買い物から社会を変えるアクションを広めています。ここで末吉さんに、 “エシカル” についてご説明いただきました。
 
「 “エシカル”とは、イギリスから入ってきた言葉で、直訳すると “倫理的な”という意味になります。法的な縛りがなくても、多くの人が正しいと思っているもの、良心から発生した社会的な規範こそが “エシカル”だと言えます。まさに人、地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動のことを表すときに使います。
 
私たちは “エシカル消費” を広めています。なぜなら、ほとんどの人が消費者だからです。毎日の暮らしのなかで、買い物から人、地球環境、社会、地域に配慮することができるのです」
 
問題を解決するための有効なアクションとなるのが “エシカル消費” だと末吉さん。その間口は広く、例えば「フェアトレード」のものを買うことや「地産地消」、被災した福島や熊本の方が作ったものを買い支えていく「応援消費」、「伝統工芸」を買うことも ”エシカル消費” です。
 
また、LED電球を使ったり、家の屋根に太陽光パネルをつけるといったエシカルな行動も、問題解決につながると末吉さんは話します。
 
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(エシカル消費をしたいと思ったら、「認証マーク」を見て買い物をするのがおすすめです。たとえば「フェアトレード認証」は、商品の製造の各工程に携わるすべての人に、正当な報酬や労働環境が与えられていることを証明するマーク。)

買い物は“投票”と同じ。誰を支えたいか、どんな未来を残したいか? で商品を選ぼう

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「買い物は投票であるという気持ちを持ち、投票者になったつもりで、暮らしのなかでどこにお金を使うか考えることが大切。世界にはたくさんの問題がありますが、みなさんが知ろうとしなければ、問題は問題になりません。問題は、誰かに認識されて初めて問題として捉えられます。問題を知ったそのあとに、買い物という形で実践していただけたら」
 
末吉さんはそう話します。こういった買い物によって、私たちはお金の流れを変えられます。今ある社会問題が大きなものに感じられても、より大勢の人が取り組めば、社会を変える大きなインパクトとなって問題解決へとつながっていくのです。ひとりの行動が、実際に問題解決へとつながった事例はたくさんあります。
 
たとえば、大手スーパーのイオンでは、たったひとりの主婦の声がきっかけになって、認証マークがついたフェアトレードの商品を販売するようになりました。こういった事例があるからこそ、消費者1人ひとりの声や行動から社会を変えていくことができると信じて行動を起こしていくことが大切です。
まずは、よく行くスーパーで「認証のものを置いていますか?」「認証のものを売らないのですか?」と積極的に聞くことから始められる、と末吉さんは後押しします。

「それはどこから来た食べ物ですか?」その質問から、お店のサステナビリティも育まれていく

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神田記者は、アメリカのあるお店に食事に行った際、友人の「それはサステナブルに漁獲された魚ですか?」という質問に対し、店員さんがその魚がどこから来て、サステナブルかどうかを的確に答えられたことに、とても驚いたと話します。
 
そのように、みんなの声でお店を育んでいくことも大切だ、と末吉さん。
 
「日本人は声を出すことが苦手な人も多いですよね。ただ、問題解決は消費者の手にもかかっているので、私たちが声を上げることはとても大切なことです」
 
最近では、一部の教科書に「フェアトレード」や「エシカル」といった言葉が使われるようになり、エシカル消費に高い関心を持つ中学生や高校生が増えていると末吉さんは話します。また、上田さんも教育現場で、神田記者も取材先で、それぞれ若い人たちの関心の高さに驚くと話します。
 
さらに世界でも、自分がこれから買うものや手にするものが、どう世界とつながっているのかを意識し、意志を持って買い物をする人が増えてきています。この流れをもっと大きなものにしていくには、大人こそ実践することが大切だと末吉さんは語ります。

ひとりの百歩よりも、百人の一歩が世界を変えていく

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「GDPの約6割は個人消費だと言われています。個人消費って、決して個人的な営みではありません。お金を払ったその瞬間に、それが社会のあらゆることに影響しています」と末吉さんは会場に呼びかけました。
 
問題解決に対し、生産者側の努力はもちろん大切ですが、それを買う私たち消費者も、その問いを自問しながら行動を起こすことが、持続可能な社会をつくるためには必要です。特に日本の企業の製品づくりは、消費者のニーズや声が大きく反映します。だからこそ、今ある問題を知り、小さくても行動すること。そして、周りの人にそれを伝え、発信していくこと。それは、誰でもすぐにできることです。
 
これを読んでいるみなさんも、まずはその小さな1歩から踏み出して、一緒に私たちの未来について考えてみませんか?

インターナショナルスクールの学生との意見交換も!プラスチック問題について考える

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イベント終了後、参加していた軽井沢のインターナショナルスクールの学生さんたちから声をかけられ、朝日新聞社ブース内で情報交換を行いました。
 

昨今、世界中でプラスチックゴミの問題が話題となっています。スペイン南部に流れ着いたクジラの胃袋の中に、およそ30キロのプラスチックが見つかったニュースや、鼻にプラスチックの破片が刺さってしまった亀の動画など、いたるところでプラスチックゴミのニュースが流れています。
 

世界では、毎年800万トンものゴミが海に流れ込んでいます(国連海洋会議より)。これは、空の500mlペットボトルおよそ1,600万本分にあたります。
 

ここ日本でも、年間およそ1,086万トンのプラスチックが生産され、そのうち家庭や事業所から915万トンのゴミが排出され、そこから発電燃料やリサイクル商品として再利用されているのは83%にあたる763万トン(2015年 一般社団法人プラスチック循環利用協会より)。
 

その残りは、ほとんどが海外に輸出されています。しかし、資源枯渇やゴミ問題から、主な輸出先の中国は昨年、プラスチックゴミを受け入れない方針を打ち出し、ヨーロッパやアメリカの一部でも、プラスチックゴミに関する規制ができてきているます。そんななか、日本としてもプラスチックゴミをどうするかについて、具体的に考えなければなりません。
 

こういった問題を受け、学生さんたちは問題に対し自分たちで何か取り組みたいという相談を持ちかけてくれました。彼らの真剣な思いが今後、素敵なアイディアやアクションにつながってゆくといいですね。
 
 
「SDGs」について、詳しくはこちら:SDGs(持続可能な開発目標)とは何か?17の目標をわかりやすく解説|日本の取り組み事例あり
 
 
<編集>サムライト <WRITER>松尾沙織

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