イラスト・深川直美
SDGsって何だろう? ちまたにあふれはじめたこの問いに答えを与える本や記事をたくさん見るようになりました。そこで今回は、それらの情報に一通り触れて、「SDGs? もう知ってるよ、あれのことでしょ、あれ」という人や「SDGsってなんかうさんくさくない?」という方向けに、新たなSDGsの情報をお伝えすることにしました。なぜSDGsがいま必要なのか、誰が取り組むべきものなのか、SDGsを本質から理解するための4回シリーズです。毎週暮らしやお金にまつわる身近で得する話題を届ける朝日新聞土曜版「be」の人気コーナー「知っ得なっ得」のSDGs版。「得子」と「金太郎」が案内します。深川直美さんのエッジの効いたイラストとともにお楽しみください。
レジ袋の有料化が始まって7月1日で1年がたった。金ちゃんはどうしてる?
マイバッグを持つようにしているよ。でも、レジ袋はプラスチックごみの2%にしかならないとも聞くから、どれだけ地球環境に貢献しているのか、正直、実感がわかないんだ。どう考えればいいのかな?
世界ではレジ袋の無料配布を規制・禁止している国が60カ国以上もあって、日本の有料化は遅かったくらいなんだよ。割合が少ないから規制は意味ないということではなく、最低限やらなくてはいけない世界の常識って考えればいいんじゃないかな。
SDGsにも「企業のPRに使われているだけ」とか「欧州の世界戦略のためのルール」という批判があって、意味がないという人がいるよね。
たしかに、やっていますアピールに使われている面もあるけど「ならば無視すればいいや」と言っていたら国際社会から取り残されてしまう。世界中の利害関係者が議論を積み重ねて合意したのがSDGsだから、目標が幅広くて具体的ではない部分もあるけど、だからこそ、どう実践するかが問われているんじゃないかな。
やらない言い訳をするよりも、どうしたらできるか考えて、世の中を変えていくってことだね。
SDGsの17の目標のうちの一つに「つくる責任、つかう責任」がある。生産者だけでなく私たち消費者にも課題は向けられているよ。
フードロスを減らしたり、リサイクルを進めたりってことが思い浮かぶけど……。
大事な実践の一つだね。リサイクルってことで言うとね、日本のプラスチック回収率は80%以上なんだ。
すごい!
ところがね、実際はその6割近くが「サーマルリサイクル」と称する焼却処分だって知ってた?
どういうこと?
サーマル=熱。焼却の時の熱を電力や熱源として使うからリサイクルと言っているんだけど、国際的にはリサイクルに定義されていない。だから日本のリサイクル率は世界的に見て決して高いとはいえないんだよ。
そんな状況だったなんて……。
処分やリサイクルは、行政が担っていることが多いよね。その費用には私たちの税金が投入されている。処分費まで考えると、実は何度も使えるビンを再利用したほうが安いし、環境負荷も低いんだ。
便利で安くてリサイクルもできるからペットボトルはいいと思ってきたけど、他の所に負荷やお金がかかっているってことなのか。
「外部コスト」とか「隠れたコスト」っていうんだけど、市場取引の価格には反映されないから見えにくい。でも、きっちりコストがかかり、地球環境への負担があるから、巡り巡って私たち一人ひとりに影響がある。
目先の安さに飛びつくんじゃなくて外部コストにまで想像を巡らせて、環境や人によりよい物を選ぶことが必要ってことだね。
そういう行動を「エシカル(倫理的)消費」っていうんだ。消費者が買わない物を企業が作り続けることはできない。いい物を選べば、流通量が増えて価格が下がり、より身近なものになるという好循環が生まれる。消費者の行動は投票と同じように社会を変える力があるんだよ。
2030年の目標達成期限まで、できない理由を探るより、やれることをどんどんやっていこう。
構成・be編集部 斎藤健一郎 ※be on Saturday2021年7月3日号より転載
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