イラスト・深川直美
SDGsって何だろう? ちまたにあふれはじめたこの問いに答えを与える本や記事をたくさん見るようになりました。そこで今回は、それらの情報に一通り触れて、「SDGs? もう知ってるよ、あれのことでしょ、あれ」という人や「SDGsってなんかうさんくさくない?」という方向けに、新たなSDGsの情報をお伝えすることにしました。なぜSDGsがいま必要なのか、誰が取り組むべきものなのか、SDGsを本質から理解するための4回シリーズです。毎週暮らしやお金にまつわる身近で得する話題を届ける朝日新聞土曜版「be」の人気コーナー「知っ得なっ得」のSDGs版。「得子」と「金太郎」が案内します。深川直美さんのエッジの効いたイラストとともにお楽しみください。
最新の「SDGs達成度ランキング」で日本は18位になったけど、中でも厳しい評価を受けたのはどの分野だったんだろう?
男女の性差、ジェンダーに関する部分だったね。「ジェンダーギャップ指数」では120位で先進国の中で最低レベル。SDGsの17の目標の中に「ジェンダー平等の実現」があるけど、上位の国とどこでこんなに差がついてしまったのかな?
健康や教育の分野はまだ健闘しているんだけど、特に差があるのは政治と経済の分野。現内閣が発足した時の閣僚20人のうち女性は2人で衆院議員は10%程度。企業の管理職も女性の割合は12%程度だよ。例えばフィンランドでは閣僚19人のうち、首相をはじめ12人が女性だから、だいぶ違う。
確かに人口の半分は女性なのに代表者が1割の状況では、女性の声が反映されにくい社会だと言われても仕方ない。どうすればずっと続いてきたこの状況を変えられるのかな?
例えばスウェーデンでは選挙のすべてが比例代表制で、どの政党も候補者リストを男女交互に並べる。だから当選者も男女がほぼ同数になる。
法律で決まっているの?
法律ではなく、男女平等にしないと有権者から支持を得られないからなんだって。たとえ保守政党でもね。
国民の意識が、政治を変えているってことか。
そう。日本では「男性は仕事、女性は家庭」とか、「男なら泣くな、女の子はかわいらしく」という性別で固定化された役割や価値観が男女ともにまだ強い。そういうのを「無意識の偏見」っていうんだ。政治や経済分野の人だけのせいにするんじゃなくて、私たちの意識そのものも、問い直さなくてはいけないね。
確かに育児や家事は女性側が主にやるものという感覚は、僕にもあるかもしれないな。本当なら一人ひとりの個性に応じて、適した仕事や役割は違うはずだもんね。
ある日本の大手菓子メーカーではキャリア研修や家庭と仕事の両立のための補助制度を整備した上で、能力が同じなら女性を登用するようにしたんだって。そうしたら女性管理職の割合が10年間で6%から20%に増えた。
それはいいけど、女性にゲタを履かせたってことなんじゃない?
確かにそういう批判の声が上がった。それに対して社長さんはこう言ったんだって。「社員に女性が4割いるのなら、管理職が4割いるのが当たり前。もともとゲタを履いていた男性に脱いでもらっただけ」
なるほど、ゲタを履いてきたのは男性だったって指摘か。まいった。
金ちゃん、でも勘違いしないでよ。ジェンダー平等の実現は、男性にとっても恩恵をもたらすと思わない?
どういうこと?
「男だから弱音を吐くな」とか「稼ぎ頭なんだから働いて当然」という無意識の偏見やプレッシャーに男性もずっとさらされてきた。個人が大事にされたり、ダイバーシティー(多様性)を重視する社会が実現したりすれば、女性だけでなく男性にとっても、誰にとってもしあわせなはずでしょ。
確かにそうだね。僕だって弱音を吐きたいときもあるけど、弱みを見せまいと長時間労働に耐えたこともあった。
長年にわたってすり込まれてきた無意識の偏見が私も含めて誰にでもきっとある。意識を巡らせて、まずは気がつくところからはじめてみよう
構成・be編集部 斎藤健一郎 ※be on Saturday2021年6月26日号より転載