イラスト・深川直美
SDGsって何だろう? ちまたにあふれはじめたこの問いに答えを与える本や記事をたくさん見るようになりました。そこで今回は、それらの情報に一通り触れて、「SDGs? もう知ってるよ、あれのことでしょ、あれ」という人や「SDGsってなんかうさんくさくない?」という方向けに、新たなSDGsの情報をお伝えすることにしました。なぜSDGsがいま必要なのか、誰が取り組むべきものなのか、SDGsを本質から理解するための4回シリーズです。毎週暮らしやお金にまつわる身近で得する話題を届ける朝日新聞土曜版「be」の人気コーナー「知っ得なっ得」のSDGs版。「得子」と「金太郎」が案内します。深川直美さんのエッジの効いたイラストとともにお楽しみください。
SDGsは地球上に生きる一人ひとり、誰もが取り組むべき課題だということだったよね。
私たちに何ができるか考えるためにも、まずは現状を把握しようか。「SDGs達成度ランキング2020」というのが発表されているんだけど、日本は世界何位だと思う?
10位以内に入っているとうれしいけど……
17年は11位だったけど、だんだん順位が下がって17位なんだ。
どんな国が上位なの?
トップ3はスウェーデン、デンマーク、フィンランド。その後にフランス、ドイツ、ノルウェーと続く。
北欧の国が多いね。日本はどんな分野が良かったのかな。
高い評価だったのは医療・保健や、教育、平和と統治といった分野だね。逆にジェンダー平等は先進国の中で最低レベルだった。気候変動対策も石炭火力発電の推進がマイナス要因になって、「海、陸の豊かさ」といった分野とともに厳しい評価だった。
急激な人口減と高齢化が進んで、日本は「課題先進国」とも呼ばれている。どうしたら持続可能な社会を築けるか、各国も注目なんだろうな。
政府は16年に首相を本部長、全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を立ち上げて、目標達成に向けたアクションプランを発表したんだけどね、すでに実施していたりSDGsの目標に合わせて並べたりしただけの政策も多いんだ。「バックキャスティング」の発想がないのは問題だと思っているんだ。
どういうこと?
数値目標を含めてあるべき未来の姿を明確にイメージし、達成するために逆算する考え方のこと。SDGs自体はその発想でつくられたんだけど、日本では現状から考えて常識的な範囲で改善を繰り返す「フォアキャスティング」が多くの場面で取られてきた。だから2030年の目標達成に向けて、どんな政策をどのくらい積み上げたらいいのか明確になっていない。
SDGsの対外的な窓口は外務省なんだけど、実際に政策を進めるのは地方創生が総務省で、女性活躍が内閣府といった具合で、縦割りだよね。
官邸が全体を束ねることになっているけれど、長期プランがないから、各省庁がそれぞれの予算で政策を進めている状況なの。指揮者が機能していないオーケストラのようなものだね。
企業はどう? ウェブサイトで「この商品はSDGsに当てはまっています」と17の目標をタグ付けして宣伝しているところも増えたよね。
SDGsで大事な視点は、「ある課題の解決のために別の価値を犠牲にする方法は取らない」ということなんだ。「環境に優しい」と商品PRをしていても低賃金や長時間労働によって支えられていれば、SDGsに貢献しているとは言えない。欧米では「グリーンウォッシュ」と言われて行政の指摘を受けたり、消費者の批判の対象になったりして、広告の取り下げや修正を強いられることもある。
緊張感があるね。
そう。デンマークではフェアトレードやオーガニックの認証商品が選ばれるから、安売りスーパーにもそういう商品が普通に置かれるようになったんだって。
消費者の意識や選択が、企業行動や社会を変える力になる一例だね。
そう。一人ひとりが社会への参加意識を持ち、声を上げることもSDGsの達成には欠かせないんだ。
構成・be編集部 斎藤健一郎 ※be on Saturday2021年6月19日号より転載