日本から最も遠い国、南米アルゼンチン。生まれも育ちも全く異なる両国の若者たちを交流させ、持続可能な未来に向けた夢や希望、可能性の広がりを感じてもらうプロジェクトが進んでいる。呼びかけているのは、国際交流を通じて音楽の世界で大きく羽ばたいてきたソプラノ歌手の田中彩子さんだ。
「天使の歌声を持つ」と評され、世界で活躍するソプラノ歌手の田中彩子さんが、中南米の様々な環境で育った青少年たちに音楽を通した教育を行っている「アルゼンチン国立青少年オーケストラ」を日本に招き、日本の青少年と国際交流する計画を進めている。両国の若者たちが出会う機会をつくり、今まで知ることがなかった新たな世界で希望と可能性を感じてもらい、自らの手で未来を切り開いてもらおうというのだ。
18歳でウィーンに単身留学、「頑張れ!」が希望に
News week誌「世界が尊敬する日本人100」に選ばれたことがある田中さんは、18歳の時、片道切符を握りしめて音楽の都、ウィーンへ単身で留学した経験を持つ。少ない所持金、未来への不安……。慣れない土地での暮らしは心細かったものの、音楽で生き抜くために無我夢中で過ごしていた。そんな中、助けてくれたのは見知らぬ誰かからの「頑張れ!」というひと言だった。たった1人でも、誰かが応援してくれているということは大きな力と希望になったという。
現地で本格的に声楽を学んだ田中さんは、22歳でスイス・ベルン州立歌劇場でデビュー。当時、日本人として初めてのうえ、同劇場最年少ソリストだった。その後、ロンドン・ロイヤルフィルハーモニーとの定期公演や、ウィーン2大コンサートホールの「ウィーン・コンツェルトハウス」、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスにある南米最高峰のコンサートホール「CCK」で公演を成功。さらに2018年には「アルゼンチン最優秀初演賞」を受賞するなど、輝かしい経歴を積み重ねていった。
高音域の歌声「ハイ・コロラトゥーラ」を正確に操り、世界的に評価されている田中さん。日本のテレビ番組への出演がきっかけで、「音楽家になりたいけれど自信がない」「将来何をしたらいいかわからない」など、不安を感じている10〜20代からのメッセージを多く受けるようになったという。そんな悩みを聞くうちに、思い出したのが音楽を通して生きる希望を見いだそうと取り組むアルゼンチン国立青少年オーケストラだった。
貧困層、危険地域出身者、ひたむきに一流音楽家目指し
政府が支援するオーケストラで、拠点はイタリアからの移民が多い首都・ブエノスアイレスにある。所属するのは一流の音楽家を目指し、オーディションを勝ち抜いた青年たちだ。しかし、裕福な家庭に生まれ育った人たちばかりではなく、貧困層、危険地域の出身者もいた。しかし、演奏しているときは出身地や生い立ちは関係なく平等だ。チームワークや協調性、集中力も学びながらひたむきに音楽に打ち込む青少年たちの姿が、地球の反対側で迷い悩む日本の青少年たちの姿と重なったという。
(アルゼンチン国立青少年オーケストラとともに舞台に立つ田中さん)
アルゼンチンと日本の青少年たちが交わったら……。田中さんはお互いに刺激し合う場所を提供し、持続可能な未来を切り開く新たな気づきや出会い、そして夢と希望をつかむきっかけをつくりたいと願っている。
(アルゼンチン国立青少年オーケストラ)
クラウドファンディングで支援呼びかけ
この計画については、クラウドファンディングA-portで支援も呼びかけている。目標金額は300万円。協力者には支援額に応じて、アルゼンチン青少年オーケストラの演奏で田中彩子さんが特別限定に録画した音声と映像、サイン入りお礼状が届けられる。また、コンサートでは特別席が用意される。締め切りは2019年11月29日。詳しくはプロジェクトを紹介したA-portのサイトへ。