▲受験会場に入る受験生と保護者=2022年2月1日午前、東京都練馬区=朝日新聞社提供
SDGsは「持続可能な開発目標」をあらわす英語Sustainable Development Goalsの頭文字です。地球環境や社会を未来につなぐために達成すべき国際的な目標をあらわしています。ここ数年の中学入試でもっとも取り上げられているテーマの一つで、出題の定番になりました。2022年度入試での切り口をみてみましょう。
取り組みの正誤を問う出題めだつ
SDGsは2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択。2030年までに取り組む世界共通の目標で、17のゴールと、より具体的な行動をあらわす169のターゲットから構成されています。持続可能な未来を築くための「青写真」ともいわれ、貧困や不平等、気候変動(地球温暖化)など、世の中(世界)が直面している課題の解決をめざします。
SDGsについて出題するとき、多くの学校で問うのが日本語での意味です。「空欄にあてはまる漢字を書きなさい」というパターンで「持続可能な開発目標」を答えさせます。達成する時期を出題する例もみられ、今春は学習院女子中等科などが取り上げました(2030年)。
17の目標について出題した学校の一つが城北。「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」「早急な経済発展と地域開発を」と四つを示し、あやまっているものを選ばせました(早急な経済発展と地域開発を)。 春日部共栄では目標と、その目標を達成するための取り組みを提示。あやまっている組み合わせについて、目標…「質の高い教育をみんなに/働きがいも経済成長も」、説明…「強い達成感を得られるような大きな仕事をこなすため、子どものうちから職業に特化した教育のみをおこない、より長時間働いた社員を表彰する」を答えさせました。市川では「陸の豊かさも守ろう」という目標に関連した出題で、生物多様性を維持するための説明についてそれぞれの正誤を判断させました。
ジェンダーが頻出、時事の視点も
2022年度の入試でよく取り上げられた目標が「ジェンダー平等を実現しよう」です。その一例が浅野。「日本は女性の社会進出の面で国際社会からおくれをとっていると指摘されることがある」としたうえで、この点にもっとも関係が深い目標を「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべての人に」のなかから選ばせました。
芝浦工業大学柏ではフィンランドと日本の内閣のメンバーがおさまる写真を示したうえで、SDGsの観点からみたときの日本の課題を出題。「日本の内閣のほうが女性の数が少なく、ジェンダー平等の実現に時間が必要である」などと記述させました。
2019年12月発足時のフィンランド・マリン内閣。閣僚19人中12人が女性だった cFinnish government
開成では「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」について出題。内閣府の男女共同参画局の広報誌を用い、アンコンシャス・バイアスにあたる言動として、単身赴任の母親に対して「母親なのに単身赴任? お子さん、かわいそうね」などと例示。この言動の背景に、どのようなアンコンシャス・バイアスがあると考えられるかを問いました。記述例は「(母親は)男性のように単身赴任はしない。子どもとともに生活し、育てるべきだ(というアンコンシャス・バイアス)」といった感じです。
食品リサイクル工場の破砕機には青々とした野菜や果物が次々と放り込まれる=神奈川県相模原市、朝日新聞社提供
時事問題とSDGsを組み合わせたような出題がみられたのが明治大学付属明治です。2021年の夏にあった東京オリンピック・パラリンピックと、目標の「つくる責任 つかう責任」を結びつけて「この目標の達成から大きく遠ざかる問題が発生したが、それは何か」と問いました。「ボランティアの人数が減ったことによる影響ともいわれる」というヒントを示したうえで「ボランティア向けの弁当の大量廃棄」などと記述させました。
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記事提供:朝日学生新聞社
朝日進学情報2022年3月号、6月号より再構成して転載