ついに来た!18歳選挙権―変わるべきは社会か? 若者か?【未来メディアカフェVol.6】(1/2)

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イノベーション分野のスペシャリストをゲストに招き、参加者と朝日新聞記者がともに社会的な課題を解決するためのアイデアを考える「朝日新聞・未来メディア塾 未来メディアカフェ」が2016年2月17日、朝日新聞メディアラボ渋谷分室(東京・渋谷区)で開催された。

 
6回目となる今回のテーマは「ついに来た!18歳選挙権」。18歳、19歳の若者も一票を投じることになった今夏の参院選を前に、若者と政治をつなぐ様々な活動を展開しているNPO法人Youth Create代表・原田謙介さんをゲストに迎え、「選挙権が引き下げられる理由は何?」「若者の投票率を上げるにはどうしたらいいの?」など、若者の政治参加について語り合った。

 
この日参加したのは、18歳から20代の学生約30人。なかには遠く弘前や新潟から駆けつけた人の姿もあった。同世代の若者と政治について語り合う滅多にない機会とあって、目を輝かせながら自分の意見を語り、他人の意見に耳を傾けた若者たち。熱気にあふれたイベントの様子を2回に分けてレポートする。

自分の一票をどう考え、どう活かすかは自分次第


 
昨年6月に公職選挙法が改正され、20歳から18歳に引き下げられることが決まった日本の選挙権年齢。参政権が拡大されるのは1945年以来、70年ぶりのことになる。

 
「皆さんはなぜ、選挙権が18歳に引き下げられることになったと思いますか?」。  イベントは、この日のコーディネーターを務める朝日新聞政治部・土佐茂生記者の問いかけから始まった。政治部与党担当キャップとして、政治の現場で取材活動を続けている土佐記者によると、18歳選挙権のきっかけは「憲法改正」だとか。

 
「第一次安倍政権時に、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が改正された。その中で国民投票の投票権が18歳以上と定められたことに伴って選挙権年齢も18歳以上にしよう、という与野党一致の流れの中で決まった」

 
では、選挙権を引き下げることには、どんな意義があるのだろうか。

 
「少子高齢化が進む中、選挙で当選したい政治家は、どうしても人数が多く、選挙へ足を運ぶ確率の高い高齢者に向けた政策を打つ傾向にある。選挙権が引き下げられたのは、その流れを食い止め、若者の意見を政治に届けやすくするため」と解説した。実は世界を見渡したとき、日本のように選挙権年齢が20歳以上という国・地域は少数派だという。
 

 
「国立国会図書館の調査では、世界の約190カ国・地域のうち、約9割で18歳以上の選挙権年齢が採用されている。ヨーロッパでは、選挙権だけでなく被選挙権の年齢引き下げを訴える政党。参政権の引き下げは世界的な潮流になっている」と、土佐記者。続けて、3年前ロンドンに駐在していた頃、当時20歳だった映画『ハリー・ポッター』の主演俳優、ダニエル・ラドクリフが、大学生の奨学金制度に手厚い政策を掲げていた政党を支持するというニュースが選挙前に流れていたことを紹介。

 
「彼のように、ヨーロッパや北欧の国々では若い人が政治や選挙について自分の意見を持ち、公で発言することは特別なことではなくなっている。今回の18歳選挙権は皆さん自身が望んだことではないかもしれないが、せっかくの機会を活かさない手はない。自分の投じる一票をどう考え、どう活かすか。それは皆さん次第だと思う。今日はみんなで一緒に考えよう」  と呼びかけた。

政治とは、社会や自分の暮らす街をより良くする動き


 
ゲストである原田さんの手にマイクが渡り、この後のイベントは進んだ。Youth Create代表の原田さん自身、政治に興味を持つようになったのは大学生のときだったという。

 
「政治の現場を知りたい、とある政治家のもとでインターン生活を送った時に気づいたことは、政治家は若者と出会う機会がほとんどないということ。学生はもちろん20代、30代、40代の人とでさえほとんど会うことがなかった。滅多に接することのない若者たちが何を政治に求めているかわからない政治家が多くても仕方がないと感じた」と打ち明けた。その時に問題だと感じたのが「若者が政治について語り合う場がないこと」だった。そのため、大学在学中に若者の投票率を上げる「ivote」という団体を立ち上げ、卒業後は若者にとって身近なインターネットによる選挙運動を解禁する運動に取り組んだ。そして現在も若者と政治家が出会う場、若者が政治について考える場を作ることに注力しているという。

 
原田さんが声を大にして語ったのは、「大事なのは選挙だけではない」ということ。 「どうしても18歳選挙権だけに注目が集まりがちだが、政治で大事なのは選挙だけじゃない。もちろん、政治家を選ぶ選挙も大事なタイミングの一つではあるが、それだけでは社会は動かない。政治は『社会をよくしていく動き』であり、『主役はあなた』。僕も含めてみんな一人ひとりが主役だいうことを忘れないでほしい」と、原田さんの言葉に熱心に耳を傾ける学生たちに語りかけた。

若者と政治の距離を縮めることが今後の課題


 
原田さんと土佐記者の話の中で、2人がともに問題点に挙げていたのが「若者の政治に対する関心の薄さ」だ。選挙権が20歳から18歳に引き下げられてから初の選挙となるこの夏の参院選だが、新たに有権者となる18歳、19歳の人数は約240万人と、全有権者数約1億人のわずか2%。さらに若者は投票所へ足を運ぶ割合も低く、たとえば2014年の総選挙の投票率は20代が最も低く約32%、最も高い60代の約68%の半分以下。

 
原田さんが会場に意見を求めた際、学生たちからも「いくら選挙権が18歳に引き下げられても、選挙へ行く人が30%程度のままでは若者の声を政治に届ける効果はあまりないように思う」  という声が挙がった。原田さんが土佐記者に政治家側の考えを質問したところ、「若者代表を集めた会議を開くなど、若者の意見を聞きながら今夏の参院選へ向けて形を整えようとしているが、模索中というのが現状だと思う」 と土佐記者。若者と政治の距離をいかに縮めていくか、がこれからの大きな課題になってくるのは間違いないようだ。

 
会場からは18歳と19歳の人が選挙の公示日前日から3カ月までの期間に進学などで住民票を移した場合投票できなくなるという公職選挙法の問題点を指摘する声も出たが、土佐記者から今年1月に18歳選挙権を踏まえて転居直後でも投票ができるように法律が改正されたことを紹介し、「投票所内への子どもの同伴が可能になるなど、早いうちから政治や選挙に触れる機会を増やそうという機運は高まっている」  と捕捉した。18歳選挙権引き下げが議論されていた昨年6月、国会で参考人として招かれた原田さんが伝えたことは「下から目線で若者を巻き込んでほしい」ということだという。

 
「権利を与えたから選挙へ行こうではなく、若者の力が必要なんだということを是非伝えてほしい、と話した。変わるべきは若者ではなく社会全体だと思う」

 
問われているのは、若者たちだけではなく全ての大人たち、日本社会全体の政治に対する姿勢のようだ。

  (後編)につづく

  • guest原田 謙介

    NPO法人 YouthCreate 代表/内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議委員/平成26年度内閣府青年社会活動コアリーダー育成プログラム青少年団

    2014年開催EU評議会主催 World Forum for democracy 日本代表 グリーンバード中野チーム、チームリーダー
    1986年、岡山県生まれ。2006年東京大学文科1類入学、2012年同大学法学部卒業。大学3年生の時に20代の投票率向上を目指し学生団体「ivote」を設立。卒業後の2012 年4月にインターネット選挙運動解禁を目指し「One Voice Campaing」を立ち上げる。2012年11 月にNPO法人「Youth Create(http://youth-create.jp/)」を設立し、地方議員と若者の交流会「Voters Bar」の全国展開など、“若者と政治をつなぐ”をコンセプトにさまざまな活動を展開している。

  • coordinator土佐 茂生

    朝日新聞東京本社政治部記者

    1972年、香川県生まれ。一橋大学社会学部卒。バイト生活や1年間のアメリカ放浪旅行などを経て、1999年に朝日新聞へ入社。横浜総局、長野総局、東京本社国際報道部、経済部、ヨーロッパ(ロンドン)総局特派員を経て、2010年から政治部。14年4月から与党キャップ。小学校から大学までバスケットボール部に所属

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