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「顔の見える電力」ってどういうこと? みんな電力の社長が語る、“コンセントの向こう側”【ソーシャル数珠つなぎ】

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秋山訓子

朝日新聞編集委員

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東日本大震災と、その後の原発事故で、私たちはいまさらのように気がつきました。電気にはコストがかかっていて、日本はエネルギー資源の乏しい国だと。電気をどうやって供給し、使うか。答えが簡単に出ない問題と、私たちはずっと向き合っていかなくちゃいけない、と。

 
……で、その電気問題。昨年2016年から、電力の小売りが自由化されたことは、みなさんご存じだと思います。つまり、私たちは、どこの電力会社からの電気を使いたいか、自分で選べるんです。

 
今回、登場してもらう「みんな電力」は、電力の小売りをする会社です。「顔の見える電力」にこだわってます。……でも、有機野菜とかならわかるけど、顔の見える電力って、どういうこと?
まずは、社長の大石さんのプロフィールから。大石英司さんは、スキンヘッドに、にこにこ笑顔。見るからに、なんかこの人、面白そうっていうか、ただ者じゃない感が漂ってます。

 
お話を聞いた人 
大石英司(おおいし・えいじ)さん
みんな電力社長。凸版印刷などを経て、2011年に起業。みんな電力は“顔の見える電力”がコンセプトの「ソーシャル・エネルギー」の会社。電気を購入する際、自分が応援したい発電所を選ぶことができます。たとえば、八王子の牧場の牛舎屋上に設置された太陽光発電所とかね。

「つくる人によって、電気の値段が変わったらおもろいなあ」

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(社長の大石英司さん)

 
こってこてのナニワ、東大阪市出身です。中高と野球に明け暮れました。高校では結構強くて、府のベスト16まで行ったのに、当時立浪や片岡、橋本がいて最盛期だったPL学園にコールド負けして終わりました。

 
その後は遊びほうけて2浪。合わせて22校受けたなかで、たった1校受かった東京の明治学院大学に進学しました。ええ、ミッション系のおしゃれ学園のメイガクです…ってことを全然知らなかったんですよ。入学式にヤンキーっぽいダブルのスーツで登場して浮きまくり、ずらっと並んだサークル勧誘の人たち、誰からも声をかけられませんでした(笑)。ま、でも大学時代はバイトに合コン、ナンパにダンパと楽しく過ごし、広告制作会社に就職しました。

 
それからIT系企業を経て凸版印刷へ。日本発のネットショッピングモールに携わり、電子出版やファッションショーをプロデュースするなど、新規事業を担当しました。仕事は面白かったけど、2007年に転機が訪れたんです。
あるとき、電車で前に座った素敵な女性が、太陽電池つきのキーホルダーをバッグにブラ下げていて。そのときちょうど、自分の携帯の電池が尽きかけていたんですが……ああ、この素敵な女の人のつくった電気だったら200円で買うな、でも隣のおじさんのだったら20円だなーなんて、もちろん冗談ですが、ぼんやり思ったんですよ。

 
で、はっと気がついた。電気って誰でもつくれるんや! もしつくる人によって値段が変わったらおもろいなあ、と。おばあちゃんからもらった1万円だったら大事に大事に使うけど、拾った1万円だったらぱあっと後先考えずに使っちゃう、それと同じだってね。電気って、値段や意味がいかようにでも変わるんじゃないか。震災のずっと前だったんですが、そんな風に思いました。

コンセントの向こうが、もしも小さな町工場の発電所につながっていたら?

起業したいという気持ちは、実は前からありました。社内ベンチャーを立ち上げても、うまくいったらお役御免。同じように1から起業した人は億万長者になっていたりするのに……なんて思って。
父親は、ベルトコンベアの部品工場を経営していました。相談すると、いつも「やめとけ。大きい会社にいたらいい」。ところがあるとき、「独立しようと思って」と言ったら、「ええ歳やからやってみたら」。あれ、違う反応だ……と思っていたら、父はその後脳梗塞で倒れ、それが最後の会話になりました。

 
そして2011年の3.11を迎え、2か月後の5月に退社。起業しました。
当時はまだ、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度もまだ始まっていなかったし、電力自由化も決まっていない段階。電力に関係のある事業をしようと思ったけど、これ! というものがあったわけじゃない。

 
自然エネルギーを普及させるアイドル「エネドル」を売り出して再エネの啓発イベントをしたり、携帯型太陽電池を開発したり、最初はもう手あたり次第いろいろと、太陽光発電の工事請負もしたり。結構、せっぱつまっていました。おかずはいつも野菜炒めでしたよ(笑)。

 
「顔の見える電力」というコンセプトを思いついたのは、2013年、電力の完全自由化が決まった年です。毎日使うコンセントの向こうは、必ずどこかの発電所につながっている。それが、原子力や石炭の発電所だったら、気持ちがざわざわしちゃうかもしれない。でも、東大阪のおじさんがやっている小さな町工場に設置した太陽光発電だったら、使っちゃうかも、と。

牧場に設置された発電所から、アイドルが協賛する発電所まで

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(八王子の牧場の発電所のみなさん)

 
このアイデア、当時は1000人と話して1人わかってくれるかどうか、だったんですが、幸運にもその1人が、SMBCベンチャーキャピタルの人でした。出資してくれることになり、そこから話が動き出しました。

 
問題は、電力の流通システム。1からつくろうと思ったら莫大なコストがかかるんですが、そこはITに詳しい知人が助けてくれました。既存の営業管理システムを応用したら安く構築できたのです。自由化の開始とともに、2016年の4月に電力供給を始めました。

 
発電所は現在、40か所あまり。たとえば、八王子の牧場に、世田谷区所有の施設を利用したもの……これは、エネルギーの地産地消をめざしてます。アーティストの小林武史さんが保有する太陽光発電所だったり、使い終わった食用油を利用する発電所もあります。アイドルが協賛する発電所も準備中です。

 
中には、プレゼントがもらえる場合もあります。たとえば、八王子の牧場の発電所では、牧場でとれたヨーグルト(予定)や、あるいは千葉の発電所では地元でとれたサツマイモ(予定)、また環境がテーマの絵本、などなど。さらにレゲエ好きにはたまらない、レゲエ界のレジェンド、リー・ペリーが日本の若手アーティストとコラボしてつくった電力自由化のテーマソング入りCDなんていう、超レアものが特典の発電所もあります。

 
この中からひとつ、好きな発電所を選ぶんです。選んだ発電所の電気がそのまま届くわけではなく、もしも足りない場合は、東京電力のバックアップ電源を利用します。でも、2017年4月の発電実績は、再生可能エネルギーが91%を占めました! 料金は東京電力の場合とほとんど変わらないことが多いですね。電力会社の切り替えは簡単で、ネットで数分でできます。

 
私の目標は、“コンセントの向こう”をみんなに意識してもらい、日本発の「顔の見える電力」の伝道師になること。
そして、電力という「富」を世界中のみんながつくることで、富を分配し、貧困問題を解消することです。たとえば、アフリカの方々が作った「グリーン電力」を特別な電気として、欧米のブランド企業や日本の我々が、社会支援の意味も含めて買う。そういう社会の実現に、貢献したいです。

 

口だけじゃなく、自分でも参加できる

アキヤマの感想…顔の見える電力、おもしろい!! 再エネがいい、と口で言うだけじゃなくて、これなら地に足がついていて、自分も参加してる実感があります。大石さんの自由な発想は、いろいろなことをやってきた経歴から生まれるのでしょうか。

 
私も、電力会社を切り替えようかなと思ってます。大石さんはいま、プロレス団体が設置する太陽光発電所も準備中とか。実はプロレス好きの私。選ぶなら、これかな!

 
 
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