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Tシャツを燃料にしてデロリアンを走らせる!? リサイクルで“世界平和”を目指す会社に話を聞いてみた【ソーシャル数珠つなぎ】

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秋山訓子

朝日新聞編集委員

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リサイクル。ええはい、重要なのはわかってますよ。やらなくちゃいけないって。でも、いまひとつ楽しくない…というか、そういうこと自体言うのも許されない感じっていうか……。
それから、なんだか問題があまりに大きすぎて無力感があるっていうか、こんなことをやって意味があるの? って思っちゃうんですよ。言い訳ですけど。

 
で、この会社。リサイクルの仕組みをわかりやすく示してくれて、ああこれなら納得、本当に循環しているよねって実感があります。しかも、楽しくやる。かつ、目指すは大きく「世界平和の実現」! ……ええっ、でも、どうやって?

 
ソーシャルなことをしている人に、何をしているのか、なぜしているのかを聞きにいく本連載。「面白い!」と思う人に取材をして、その人が「面白い!」と思う人を紹介してもらい、順に「面白い!」人に会いに行く数珠つなぎです。
連載2人目の鎌倉投信・鎌田恭幸さんに「リサイクルで世界平和を実現しようとしている」と、紹介してもらったのが日本環境設計の岩元美智彦さんです。

 
お話を聞いた人 
岩元 美智彦(いわもと みちひこ)さん
1964年生まれ。鹿児島県出身。北九州市立大学を出て、繊維関係の商社に勤めてトップ営業マンとなる。2007年、42歳の時に日本環境設計設立。

会社を辞める決意をさせた、仲間との出会い

もともとは、福岡が本社の商社に勤め、ユニフォームや作業服などを売っていました。自分で言うのもナンですが、営業は得意でしたね。
リサイクルというものに本格的に関わったのは、95年に施行された“容器包装リサイクル法”です。この法律は、循環型社会をつくるために、消費者、事業者、市町村の役割を定めたものです。消費者はごみを分別して出す、市町村は分別収集する、事業者は再製品化する……というものですね。ペットボトルとかね。

 
会社では、ペットボトルを再生した作業服も売っていました。確かに資源のリサイクル。でも思ったんです。限られた範囲だけで再生するんじゃなくて、資源の循環を社会全体で、一貫して取り組めないか。でも、それを実現させるには複数の企業で取り組まなくてはいけない。そうは言っても一社員の発想で簡単にできることではないですよね。ならば、いっそ会社をやめて起業しようか、と思い始めました。

 
そんなとき、天の引き合わせですね、異業種交流会の飲み会で、いま社長を務める髙尾と出会ったんです。髙尾は当時、技術経営を専攻する東大の大学院生で、化学にも詳しかった。こういう縁が生まれたりするから、お酒は大好きです(笑)。情報は、にぎやかなところにくるんですよ。

 
髙尾と話をしていたら、当時話題になっていたトウモロコシを原料にしたバイオエタノールの話になったんです。綿からもできるんちゃうん、と髙尾に話すと、髙尾はそのアイディアを面白がってくれました。洋服の綿をエタノールにできる。着なくなった洋服を回収して、綿をバイオ燃料にリサイクルできる。よし、やろう、と決めて、2007年の1月に創業しました。

「一緒にリサイクルしませんか?」と、飛び込みで企業を回った日々

創業者で会長の岩元美智彦さん。再生したTシャツと、回収箱と
▲創業者で会長の岩元美智彦さん。再生したTシャツと、回収箱と

 
まずは、身の回りの衣服のリサイクルに取り組みました。回収し、処理して燃料化する。スーパーや小売店にはたらきかけて、専用の衣服の回収ボックスを置いてもらおうと考えました。

 
飛び込みで、「Tシャツからエタノールができるんですが、一緒にリサイクルしませんか?」といろんな企業を回りましたね。最初はどこも相手にしてくれませんでしたよ。「は? なに言ってんの?」って顔をされるんですが、そこは不屈の営業魂です(笑)。世界初の取り組みですし、断られるのが当たり前だと思っていましたから。

 
とにかく、諦めずに何度も通う。資料を作り直す。別の部署に行ってみる。Tシャツからできたエタノールの現物を見せる。あの手この手です。軌道に乗るまでは、リサイクルのコンサルなどで食いつなぎました。

 
回収ボックスを最初に置いてくれたのは、無印良品を展開している良品計画でした。2010年のことです。これが大きかったですね。
いまでは、プロジェクトに参加してくれる企業は、イオンリテール、大丸・松坂屋など計画中も含め70社になりました。……無印良品で行った実証実験では、回収ボックスのあるなしで、店舗の売り上げが4%違う結果が出たんです。皆さん、不要なものを出してすっきりしたら、新しいものがほしいと思うんですね。

低コストでリサイクルを実現させるため、知恵を絞る

衣服を入れて綿を糖化するプロセス 今治工場
▲衣服を入れて綿を糖化するプロセス(今治工場)

 
世界全体の繊維製品の構成は、ポリエステルが60%、綿が30%なんです。私たちの技術ではポリエステルはポリエステルに、綿はエタノールに再生することができます。ただ、それを私たちだけでやろうと思うとコストが高い。私たちのような、小さい会社がそのコストをどう抑えるか、そこは知恵の絞りどころです。

 
たとえば、衣服が入った箱は再生処理工場に行くわけですが、その工場も、エタノール化の装置を一からつくると1億円以上はかかるでしょう。

 
エタノールの量産プロセスは繊維を染めるプロセスと似ているんですね。なおかつ、日本の繊維産業の中には、使われていない施設がある。それを借りて、使われていないタンクを数十万で買ってきて、パイプでつなげたら、5~600万でできました。社長の髙尾はそういうプラント設計ができますし、私もある程度のことはわかりますから、小さい会社なのにコストを抑えることができたんです。

2015年10月21日。デロリアンに乗るために、6万人が集まった

リサイクルは、楽しくやらなくては続きません。いいことだよね、と頭で理解していても、行動につなげるには遊びの要素がないとね。

 
そこで考えたのが、“デロリアン”! 皆さんご存じ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画のシリーズに出てくるタイムマシンの車です! あれって、ごみで動かしてたんですよ。
映画の中でデロリアンが未来に向けて出発した先が、2015年10月21日。だから同じ日にデロリアンを、綿をリサイクルして作ったエタノールで動かそう、と思いつきました。実現できたら、世界中に広まりますよね。

 
で、またもや直談判です。NBCユニバーサルに「一緒にイベントやりませんか?」と。向こうの反応は「???」でしたけど(笑)、デロリアン、買いました! そして一緒に合同イベント、やりましたよ!
古いTシャツを持ってきてくれたら、デロリアンに乗れますよ!と。3ヶ月間のイベントにおおよそ6万人が押し寄せて、連日、すごい行列でした。なんと、BBCやCNNも取材にきてくれました!

世界平和の実現を目指して、“循環”のモデルをつくり続ける

新設中の北九州工場 トリミング後
▲新設中の北九州工場

 
「循環型社会」という言葉が叫ばれ始めて久しいです。これが、どうしていままでうまくいかなかったかというと、それぞれが個々の取り組みをバラバラで行っていたから。循環している全体像のモデルを作って、面で見せないと。そうすることで初めて「そういうことか」、と納得できて、みんなも取り組みやすくなるんですよね。

 
夢はでっかく、「循環型社会で世界平和の実現」です。戦争って、その多くは石油をはじめとする、地下資源の争奪戦で起きているんです。だったら、資源が循環するようになれば、奪い合いも起きないはずですから。

 
いまの夢は、2020年までに、3000近くある回収拠点、BRINGスポットを1万拠点に増やすことです。そこで、皆さんから集まった衣服を原料に新しい繊維をつくり出す。そしてその繊維でTシャツをつくる。いわば、みんなでつくるTシャツです。回収から技術開発、化学処理、商品開発からイベントまでを一貫してやる。こういう仕組みづくりのリサイクル会社は初めてじゃないかな。

 
同じTシャツで、地下資源からできたものと、地上資源、つまりリサイクルで集められたものを資源に循環してできたもの。あなたなら、そのどちらを買いますか?

意味があると思えたら、リサイクルが楽しくなった

アキヤマの感想…ああ、この人、トップ営業マンだったってよくわかるなー。それが、岩元さんの第一印象です。なんといっても、ニコニコの笑顔! 年下の私が言うのもなんですが、カワイイんですよ(すみません)。
そして、仕組みをひと通り見せてくれるから、無力感にさいなまれずにリサイクルができる。意味があると思えて、さらに楽しい。

 
ちなみに、私が気に入ったのは、生地が取り換えられる壊れない傘。リサイクルしたポリエステルを使って、他社とコラボしたのだそう。まだ販売時期は未定だそうですが、楽しみです!

 
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「電力ショッピングをしながら社会貢献! WIN-WINインフラに挑戦しています」

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